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【317/1096】映画鑑賞記録「ベイビー・ブローカー」

317日目。朝、大雨でけぶる中を歩く。こんなに大雨の中を歩くのはひさしぶり。道路全体にゆるく水が流れていて、川の流れの中を歩くような。ちょっと楽しかった。でも、靴がびしょ濡れでそのあと1日足が乾かなかったのはイマイチ。


少し前に是枝監督の韓国映画「ベイビー・ブローカー」を鑑賞したのでその記録。

DIRECTORʼS STATEMENT

この『ベイビー・ブローカー』の準備をしている日々で話を聞くことが出来た子どもたち。

彼らは何らかの理由で親が養育を放棄し施設で育ったのだが、その中の何人もが、
果たして自分は生まれて来て良かったのか?という
生に対する根源的な問いに明確な答えを持つことが出来なかった。

そのことを知って僕は言葉を失った。

この世に生まれなければ良かった命など存在しないと自分は彼らに言い切れるのか?

お前なんか自分なんか生まれなければ良かったという内外の声に立ち向かって強く生きようとしている
あの子どもたちに向けて、自分はどんな映画を提示することが出来るだろう。

作品作りの中心にあったのは常にこの問いだった。

『ベイビー・ブローカー』はまっすぐに命と向き合い、登場人物の姿を借りて、
自分の声をまっすぐに届けようと思った作品である。

祈りのような、願いのような、そんな作品である。

是枝裕和

公式ホームページ https://gaga.ne.jp/babybroker/about/より

果たして生まれてきてよかったのか?
生まれてこないほうがいい命というのが存在するのか?という問い。

ぺ・ドゥナ演じる刑事のスジンが、
「捨てるくらいなら産まなきゃいいのに」
というセリフに対する是枝監督の答えがこの映画なのかなと思った。

一見、母性、母を描いているようで、やはり父性、父という存在感が強い。
演じているソン・ガンホとカン・ドンウォンが良すぎるからかもしれない。
傘を持って迎えにいくのも、取れたボタンをくくりつけるのも、サンヒョン(ソン・ガンホ)とドンス(カン・ドンウォン)で、観覧車で赤ん坊のウソンを捨てた母ソヨン(イ・ジウン(IU))の殺人の告白に、そっと目隠しして泣かせてあげるのもドンスだ。

是枝監督の作品を観ると、男性は優しいのかもしれないと思う。
そういう優しさが根底に流れている。

刑事のスジンが、パトカーの中から、夫に電話するシーンが秀逸だった。
あれはすごい。
あのシーンだけで、スジンという人の抱えているものがわかる。

ソヨンが、ウソンを売る前の夜に、一緒に居る全員に
「生まれてきてくれてありがとう」という。
最後に児童養護施設から抜け出してきたへジンが、ソヨンに同じことを言う。
誰もが誰かに言ってもらいたかった言葉。
誰から言ってもらいたかったのだろうか。

サンヒョンがラスト、姿を消すところが、ちょっと混乱した。
テホのことを、あんなに気に掛けていたのに、殺したのだろうか?と思って。
サンヒョンにそこまでの暴力性があるのだろうかと思いながらも、それが人間なのかもしれないとも思う。

15年くらい前、カン・ドンウォンが好きで韓国まで会いに何度も渡韓したのだが、本当にいい役者になったなあ。

もう一度観たい、といつも観終わった後に思うのも是枝監督の作戦なのだろうか。

あらすじ
古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。

公式ホームページ https://gaga.ne.jp/babybroker/about/より

では、またね。


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