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週末お遍路さん(6):焼山寺の遍路道・後編/感動の最推し登場
歩き遍路最大の難関と言われる、焼山寺への遍路道。前半で出会ったアケビのお父さんとのお話はこちらから(後から考えると、このあたりってまだまだ序章レベルだった)。
引き続き、焼山寺への遍路道を上って下ってを繰り返す我ら。
途中から口数が減りながらも、ひいひいぜえぜえしながらひたすら歩く。やっぱりデスクワークしかしていない都会っ子が、何の練習もなしにこの山を超えるのはかなり大変。
でも本当に上手くできてるもんで、「もうムリ。死ぬ」と思うくらいのタイミングでバランスよくチェックポイントがある。
「水大師」「長戸庵」「柳水庵」などなど。だいたい2時間がんばると次のチェックポイントに到着できます。ザックを下ろして休憩したり、トイレお借りしたり、お堂で「無事に辿り着けますように」とお参りしたり。
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「柳水庵」の近くにはしっかりした小屋もあったので、靴を脱いでお邪魔し、ここでおにぎりをいただくことに。でも時間的にまだ10時ごろだし、とりあえず1個だけ食べようか、なんて話をしていましたが、やっぱり山ってすごい体力使うのね。おにぎり1個じゃ全然足りない。
「お弁当2人前とかお願いしたいレベルでお腹空いた」なんて話ながら、追加でカロリーメイトも食す。
お昼休憩とかこつけて、だいぶゆっくりさせていただきました。
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この小屋、ちょうど中間地点くらいの場所にあって、基本的に泊まるのはNGだけど、足を怪我したり具合が悪くなった場合は泊まっても大丈夫らしい。車も近くまで来れるみたいだし(森林のお手入れ?みたいなお兄さんたちが通り過ぎて行った)、確かに何かトラブルがあった時に迎えに来てもらえる場所としてぴったりなのかも。
休憩しつつ「もしそんなことになったらマジでありがたいよねー」なんて話をしていたら、欧米人カップルお遍路さんが登場。なんとなく巡礼のプロっぽい印象で、お姉ちゃんは「南無大師遍照金剛」って書かれた白いミニスカート履いてた。そんなの売ってるんだ!かわいい!ってゆーか、ミニスカートに素足ってマジで欧米人ハンパない。
小屋の隣には飲み水もあるので、お兄さんに「このお水は飲んでも大丈夫だよ」と伝えつつ、我らは一足先に出発することに。
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いやしかしここからも厳しかったです。
足元もごつごつの石が増えてくるし、さらにポツポツ降り出した雨で滑りそうだし、下りは急だし、上りは相変わらずきついし、「階段もうイヤですー」と泣き言を言いはじめる私。
まったく煩悩取り払えてない。
途中で白装束+足袋の先達さん(私達が働いていた会社のUさんに似ていて、ずっと3人で「Uさん」と呼んでた)に道を譲りつつも、確実に安全にゆっくり進む。
頑張って歩くしかないんだよなぁ。
だって誰も助けに来てくれないんだもん。
行くしかないんだもん。
なんで上りたいなんて言っちゃったんだろうなぁ。
みんなごめん。
でもホントに心の底から一緒にいてくれてありがとう。
なんてことを考えながら、寒くなって時折強まる雨のなか黙々と歩く。
全員無口になりながらしばらく歩き続けて、「あー、もうとりあえず平坦な道来ないかなぁ……」と思って数え切れないくらい心折れそうになった時、先頭を歩く先輩が「あ!」と声を上げた。
今度はなにー……って思って追いつくと、ちょっとした踊り場で直角に右に曲がる階段。
「ちょ……また階段とかマジもう勘弁してよ……」と思いながらその先に目を向けると、なんと階段の先に大きなお大師さまが!
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思わず3人「お大師さまーーー!」と声をあげながら、「なにこの感動の対面!」「上手くできすぎじゃない!?」「うれしいーーー」と、この時ばかりは全員の疲れも吹っ飛び、即座に始まる大撮影会。
階段の下から途中から、「あ、ごめん入った?」「大丈夫大丈夫。そのままで!」とかなんとか。
もうね、気分は最推しに出会えたオタクですよ。
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わいわいきゃいきゃいしながらお大師さまのすぐ近くまで登ってくると、先ほど道を譲った先達のUさんが休憩中。
あ、めっちゃ騒がしくしたの聞かれてましたね……お恥ずかしい。
そしてお大師さまの脇にお地蔵さまがたくさん。
「お父さんの言ってたお地蔵さんがたくさんあるところってここじゃない?」
「そうかも!」
なんて話していると、先達のUさんが「たぶんここで合ってますよ」と教えてくれました。そして声をかけてくださったのをいいことに「ちなみにこの先ってあとどのくらいですか……?」と聞いてみることに。
「このあと一気に下って、小さな集落を抜けたら最後にまた一気に上ってお寺です」
それだけ言い残してまた出発された先達のUさん。
あー……最後に上りがあるって言ってたけど、まだこの先なのね。そしてその前に下るのね……。もう上るなら下らなくていいじゃん、と心の底から思いましたが、とりあえず我らはお父さんのおつかいミッションをクリアすべく、どのお地蔵さまに前掛けをつけるか会議と前掛け装着の儀式を開催。
「こんなにいっぱいだと迷うー!」
「どの子がいいかな??」
「この子がちょっと気になるかも」
「わかるーーーーー!!!」的な。
いい大人が3人でわいきゃいしつつ、ここまで前掛けを運んでくれたOちゃんがお地蔵さまに前掛けを結ぶ瞬間、「すいません、次目線こっちお願いしまーす」「逆からもお願いしまーす」とか言いながら、記者会見ごっこ。
いや、マジ平地ならバリバリ元気なのよ。
お大師さまに出会えた感動で疲れも吹っ飛んでるし。
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そして私達を迎えてくれた大きなお大師さまと、そのすぐ後ろにそびえたつ、立派なんて言葉じゃ足りない一本杉。どうやらここ、焼山寺よりも高い位置にあり、今回の遍路ころがしで一番高い場所らしい。
立派すぎる一本杉は「左右内の一本杉」と呼ばれていて、樹齢は1000年超。徳島県の天然記念物にも指定されているそうです。
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そして何よりも、この巨木の前に立つお大師さまの素晴らしさ!
この像は大正時代に作られたものだそうですが、もう自分の足元以外見る余裕がない登りの中、右に曲がるところで顔を向けると急に目に飛び込んでくる構図とか、なんなんですかね。
めちゃくちゃ優秀なイベンターとかプロモーターがいたとしか思えない完璧さなんですよ!
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ホントにすごい辛かったけど、頑張ってよかった!
お大師さま、我らがんばったよー!
3人でわいのわいの、色んな確度から我らの最推し・弘法大師撮影会がひと段落したら、すっかり本格的な雨。
気温も下がってきたから白衣の下にウィンドブレーカーを着て、最後の下りに再度出発。
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でもホントに急な下り&石も多いし足場が不安定な道。雨も本降りになってきたから足元も滑るし、更に慎重に進んでいると、「柳水庵」で会った巡礼のプロカップルに抜かれました。
やっぱり足が長いからあんな風にサクサク降りれるのかしら。うらやま!
ようやく集落らしきところに到着した頃には、もう全身ずぶ濡れ。気温も体温も下がっていて、ちょっとした軒下で雨宿りをしつつ、「残りの道行けるかな……」と気弱になる私達。
ちょっとぐらい寒くても晴れて足元が渇いてたり、普通のアスファルト道なら全然頑張れる自信はある。でもこの雨で体も冷え切っているなか、ムリして何かあったらいろんな人にご迷惑をおかけしちゃうし……。
焼山寺までのお迎えのタクシーはここで呼ぶように、と旅館吉野のお父さんに言われていたので、雨に濡れながら、とりあえずはすぐ目の前に看板のあった寄居観光さんにお電話することに。
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「あのー、いま12番さんに向かう途中の看板の前なんですけどぉ」
「はいはい」
「…………迎えに来ていただくことってできます?」
いや、あとちょっとなのは分かってるんです!!
ちゃんと全部歩けるならそれが一番いいことも分かってる!
山に入っちゃったら、何があっても自分たちで歩ききるしかないんだけど、この本降りの雨の中、何かあってからの撤退じゃ遅い。
てゆーか、たぶん撤退すらできない。
という訳で、ここで勇気ある決断。
今回の敗因は雨具を着るタイミングを逃したことだな。やっぱりちょっと降り始めたな、と思った瞬間に、山道の途中でも着るべきでした。反省。
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ちなみにお迎えに来ていただく間、私達を横目に通り過ぎて行ったのは、全員が欧米系の男性でした。私達より前にはいたのかもしれないけど、よくよく考えたら、女性って、あの巡礼プロの彼女しかいなかった気がする……。
天気予報をちゃんと確認しなかったのと、お昼休憩とか一本杉の最推し撮影会とか、ゆっくりしすぎて時間配分をミスったのも良くなかったなぁ。
最後までは行けなかったけど、もし次があればちゃんと最後の登りもコンプリートしなくちゃ!
とりあえず、焼山寺の山越えした人、全員すごいです。尊敬。
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