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映画のはなし:初めて感銘を受けた映画『ラストエンペラー』

連続で映画の話なのですが、最近また私の中で映画強化月間になりまして、好きな映画を観直しまくっています。
たぶん、いろんな映画賞のノミネートや予測情報が出てきて、『マグノリア』以来、ようやくトムちんがアカデミー賞出席するのか!?するかも!?ちょっとそれは見たい!!と思っているからだと思います。
がんばれ『トップガン マーヴェリック』!私は応援しているぞ!!!

そんなトムちんへの熱いエールとは180度変わってですね。

自分でも変わってるなと思うのですが、私が生まれて初めて感銘を受けた映画は、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』なんです。
第60回アカデミー賞で作品賞、監督賞ほか9部門ノミネートされ、そのすべての部門でオスカーを手にした作品です。

作曲賞で坂本龍一さんも受賞しています。

『ラストエンペラー』は、中国王朝の最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の生涯を描いた物語。なんで中国の話なのに英語で作るんだよ、とかいろいろあったようですが、まぁ、そこはね。いろいろあったんじゃないかと。
オリジナル版は219分と長いのですが(劇場公開版でも163分)、そりゃそうですよ、と。2歳で皇帝に即位し、クーデターや満州事変、文化大革命など、本当に激動の人生を送った人なんだから。
その人生を描くならそのくらい必要ですよ。

初めて『ラストエンペラー』を観たのは、小学生の頃。テレビでノーカット版として3夜に分けて放送されていたはず。淀川長治さんの解説で、父親が録画をしていて、途中のCMも覚えるくらい観直した。

小学生なら内容なんて理解できないでしょ?と思われるでしょうが、もちろんその通り。最初は「即位式で自由奔放に遊ぶ溥儀かわい~。即位式の布がキレイ~。コオロギ~」くらいの感想しかなかっです。
でもそんな私がなんでこの映画にここまで引きつけられたのかというと、史学科卒(ただし専攻は日本史)の両親のおかげ。サラウンドで歴史解説付きで観ることができたのです。
他にも、「紫禁城なんて広いところでやりたい放題なんて超いいじゃーん」と短絡的に考える私に対して、どれだけ溥儀が孤独であったか、そして紫禁城という鳥籠の中しか知らないことでどれだけ苦労をしたのか、というのを教えてくれたことが大きい。

実母が亡くなったことを知り、紫禁城を出ようとする溥儀の目の前で扉が閉ざされてしまう、有名なシーン(直後のネズミさんのシーンは心が痛い)で、「お母さんが死んじゃったのに、溥儀はここから出してもらえない」というのも、子どもの私には映像だけではその悲しさややるせなさは理解できなかったと思う。

戦犯として収容所に連れていかれ、所長に靴ひもをほどかれ自分で結べ、と言われるが自分で靴ひもを結べないシーンも。「なんで靴ひもをほどかれたかわかる?」と聞かれて、わからないと答ると、「溥儀は紫禁城の中でだけ王様だったし着替えも全部家来やっていたから、自分では何もできない。一生王様であれば問題なかったのに、状況が変わったとたん、それがどんなにみじめで辛いことか」というのを教えてもくれた。

そしてこの作品は、紫禁城を全面貸切にして撮影されていて、溥儀の即位式のシーンはエキストラを含めた膨大な人数が小さな溥儀にかしずいています。映画史に残る名シーンだと思うけど、この撮影を実施したことがどれだけすごいことなのか、ということも教えてくれました。
ちなみに、先日他界したエリザベス女王、『ラストエンペラー』の撮影時に国賓として北京に来ていたけど、撮影ファーストで紫禁城を訪問することができなかったそうです。ベルトルッチ監督すごいな!(監督の判断じゃないと思うけど)

もちろん歴史的な難しいことは説明されても理解できなかったけど、そんな溥儀が暮らした紫禁城に行ってみたい!私もあの玉座を見てみたい!!

ということで、私の生まれて初めての海外旅行が、中国の上海+北京。
娘の知的好奇心を全力でサポートしてくれたのね!と感謝していましたが、大人になって母親から「私、万里の長城行ってみたかったからちょうどいいわと思って」というカミングアウトをぶちまけられました。
いや、まぁ、でも連れて行ってくれてありがとう。

ただ、現在の紫禁城は宝物も何もない、広い宮殿と玉座をはじめ、いくつかの家具が残るだけ。ここにあった宝物は、ほとんど台湾の故宮博物館にあります。

子どもの頃なので覚えていることは少ないのですが、広大な紫禁城を歩いている時に、母親がぼそっと言った「からっぽね」という言葉が、溥儀と少しリンクしているようで悲しい気持ちになったことが忘れられない。
でも、戴冠式で子どもの溥儀が歩いた龍のスロープや、自転車で溥儀が走った高い塀に囲われた長い道を見れたのは本当にうれしかった!

歴史を理解していないと理解できない部分もあるし(まぁでもドラマティックに脚色されてる部分もけっこうあるから大丈夫かもですが)、長いけど、ぜひ機会があれば観てみてください。
今改めて映画を観ると、溥儀が紫禁城で暮らした20年弱は、溥儀にかしずく宦官は大勢いたけど、誰一人溥儀の味方ではなかっただろうし、人格形成の一番大事な時期なのに本当に可哀そうな人だな、と痛感します。

そしてベルトルッチ監督といえば、の映像美だけでも全然楽しめると思うので!
CGじゃないというのは、いつまで経っても古さを感じさせない壮大さがありますよ。紫禁城貸切だからできる贅沢なカメラワークは本当に圧巻!

もちろん、坂本龍一による、優雅で壮大ななかにも感傷的にぐいぐいえぐってくる音楽も素晴らしいです。

『戦メリ』に続き、演技する教授も観られるよ。
アラビアのロレンスことピーター・オトゥールもやっぱり素敵。


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