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映画のはなし:『エブエブ』はカオスでカンフーでマルチバースでホロリ涙まで!

数年ぶりに公開日に観に行った、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。

空いている映画館が好きなのでほとんど公開日に行くことはないのですが(たぶん直近で公開日に映画館行ったのは『シン・ゴジラ』)、今回ばかりはどうしても待ちきれず。空いてる映画館を選んだとはいえ、マジで空いててちょっと驚きました(レイトショーだったのもあるかも)。

というわけで、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、日本での通称は『エブエブ』。
監督はダニエルズこと、ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート。映画は『スイス・アーミー・マン』以降2作目ですが、アカデミー賞の作品賞や監督賞をはじめ、最多の11部門でノミネート。いやいや、すごいわ。そして製作総指揮にはマーベル作品の立役者、ルッソ兄弟の名前も。
ストーリーとか説明したいけど、「面白そう!」と思ってもらえるような文章にするのはムリなのではないかと思っています。そのくらいカオス!

コインランドリーを経営するエヴリン。優しいが頼りない夫と反りの合わない娘、介護が必要な父親と一緒に暮らしている。ある日夫&父と税金の申告に行くと、急に夫の態度が豹変。マルチバースの別の世界に存在する夫から「宇宙が破滅の危機だ。キミだけが全宇宙を救える」と告げられた。エヴリンは混乱しながらもマルチバースを飛び回り、カンフーをはじめ、さまざまな世界で生きる“エヴリン”を経験することに。そして宇宙を破滅に導こうとしているのは、娘のジョイであることが判明する……。

大枠を説明するとこんな感じなのですが、このストーリーだと『アベンジャーズ』と何が違うの?って感じがしちゃうじゃないですか。
でも、全然違うの!エヴリンはヒーローじゃないの!カッコよくないの!!

まず、別の世界にジャンプする方法が、「できるだけ馬鹿げたことをすること」。ジャンプした先の世界も、すんごい世界。カンフーマスターの世界はあるのですが、その他にどんな世界があるかは、ぜひ本編で楽しんでいただきたい。とりあえず、猿人とアライグマ最高。

「このカオスな作品をどうやって納めるんだろう……」といらぬ心配がよぎるくらいのスピード感でストーリーが進みますが、涙してしまう美しいラストに繋がりました。
こんなラストに持っていけるなんて、マジでダニエルズって天才だな!!と、また大感動。

そして、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされている、キー・ホイ・クァン(頼りない現実の旦那さん+マルチバースから来た旦那さん)に、助演女優賞にノミネートされた、ステファニー・スー(娘+世界の破滅を目論む敵)とジェイミー・リー・カーティス(エブリンが税金申告のために行く政府機関の監察官)が、マジで!!よかったです。
最&高。最高 of 最高。

衣装デザイン賞にもノミネートされてるけど、ステファニー・スーの悪役衣装がぜんぶかわいい。すべてがかわいい。かわいいは正義。
石岡瑛子さん風の衣装もあって、「なんで衣装デザインにノミネートされたんだろう?」の謎も解けました。
だってめちゃくちゃステキだもの!!
そらノミネートされるわ!!!

そして何より、「私はたぶん文字だけでこの映画の魅力を理解できない」と120%の自信がありますが、プロットや脚本の段階で配給を決めたり、出演を決められる人がすごいな!と尊敬せずにいられないです。『スイス・アーミー・マン』もA24配給だからダニエルズに絶対の信頼があるんだろうけど、でも私、たぶん「なんかよくわかんないっすね」とか言っちゃいそうだもの!
ジェイミー・リー・カーティスもプレミアで初めて本編を観たらしく、上映後に涙を流したまま「ようやくこの映画が理解できた」って監督に言ったらしいし。マジでその気持ち分かるわー。

ちなみに本作、正確な製作費は発表されてないみたいですが、円高の今の日本円で20億弱くらい(もっと少ないという記載もあった)らしく、ハリウッド規格ではじゅうぶん低予算映画(ちなみに『シン・ゴジラ』は15億とか20億とからしい)。
そして本作のVFXチームは、誰もVFXの学校には行っていないらしい。全員ネットにあるフリーチュートリアルを使って独学で学んだらしい。

ウソでしょ!!!??

でも全然稚拙な感じはなかったし(IMAXでも上映されているくらいですから)、なんかデジタルソフトの進化を感じるわー。

そして私がもうひとつすごいなと感じたこと。

日本での配給権を獲得したGAGA、アカデミー賞の審査員と感性が近しいんだろうけど、なんかここ数年のアカデミー賞主要部門を獲った作品、絶対毎年あるな!
『コーダ あいのうた』『ミナリ』『グリーンブック』『ラ・ラ・ランド』などなど。
ちょっと前なら『アーティスト』や『英国王のスピーチ』『スラムドッグ$ミリオネア』も。

今年は『エブエブ』を含め、作品賞ノミネートのうちの3作品(残りは『TAR/ター』と『逆転のトライアングル』)がGAGA配給作品。純粋にすごいな!


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