すきま回⑫家族のこと
わたしは、ドイツに来てまだ日が浅いころ、
わたしのことをわかってくれない家族に対して、怒りや不満を抱えていた
わたしがドイツでどれだけ努力しながら頑張っているかも
わたしの意思や経験の価値も
なにもわかってくれないし、応援もしてくれない
わたしがたまに連絡しても、帰ってこいって言うばかりだし、向こうから積極的に連絡をくれることもない
そんなある日、わたしはイライラが積み重なって
家族との連絡を断つことで、反抗を示すことを決意した
メールの返信をしなくなって1ヶ月、2ヶ月…
本当は、向こうから心配して優しい言葉をかけてほしいだけなんだけど、
そんなこと素直に言えないわたしは、さらに不満を募らせる
いま思えば、両親は海外にいる娘へ電話をかける方法さえわかっていなかっただろう
連絡手段など、きちんと伝えていなかったのだから、テクノロジーや海外事情に詳しくない両親にできるはずがない
それでも、すがるような短文で母から心配のメールが届いたとき、わたしの心は申し訳なくなって崩れ落ちた
わたしの幼稚さで、どれだけ不安にさせてしまっただろう
申し訳ないのと同時に、
言葉にしなくても、想っていてくれたんだということがわかって、わたしは嬉しかった
母は、わたしと似ていてあまり言葉にするのが得意ではない
だけど、想いはひとしれず大きい、優しいひと
そんな母親と、まめで人徳があって毎年クリスマスにギターで曲をプレゼントしてくれるような父親を
わたしはこの歳になって、誇りに思えるようになった
相手の優しさに気づくのは、受け取る側のもんだい
距離と時間がわたしに教えてくれたことも多いが
有り難みは、なくなってみないとわからないことが多い
だからわたしは、なるべく感謝や好きの気持ちを
生きて伝えることのできる間に伝えようと思う
あなたはあなたらしく、わたしはわたしらしく。