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A master of self.

胸から吹き出すような乾いた空気がのどを押さえつける

久しぶりに熱をだすかもしれない
Marradiの穏やかな駅でFirenze行きの電車を待ちながら、
遠い昔旅をしたときに似た疲れを思い出す

イタリアは好きだ
どこか反響するところがある

オリーブオイルの深緑
ささやかな美しさと、程よい諦め


ちょうど2週間前、

この土地に到着したとき
「隣座ってもいい?」

わたしに話しかけたのはアメリカから来たナタリーだった

ヨーロッパを2ヶ月間旅をしているという素朴で気さくな彼女とは

自然と馬が合って会話がはずんだ

若くて世界を見るように歩く彼女の姿が、昔の自分と重なった


2回目のヴィパッサナー瞑想の10日間

トスカーナの美しい自然の中に、静かにそのセンターはあった


丘を登り、静かに吹いては止まる風
太くて大きな木々と、手入れされた古く美しい建物

トイレにある窓が素敵だった


1回の参加と、一度のヘルパーとしての参加をおえて
より瞑想の技術に集中できたことが変化だった

それでも
未知への恐怖と、そこ知れない魔物みたいなものが身体の中にあることが驚きだった


抑圧と嫌悪
流れる涙
震え
怒りや妬み
渦巻く欲望の塊

7日目以降、毎晩とまらない咳に襲われた

ハートから何かが暴れだすかのように飛び跳ねる
止まらない咳は、腹にしのぶ蛇になり

身体が震える

反射的な反応なのか、押さえつけるための抵抗なのか自分では区別がつかない


10日間を無事終了しても、わたしはそのまま外の世界へ出かけるのを恐れて

センターにヘルパーとして2日間残ることにした


瞑想してものごとをそのまま見る訓練をする最大の目的は
純粋な心を磨くためだと思う

何も求めず奉仕する人たちに出会うとき、その経験や心の深さを聴くことができる

深い眼差しで命の火を灯しているひとがいた
わたしが夜中に咳のパニックに襲われることを話したら

知識と経験と良心のある先生に電話を繋いでくれた

遠くの他人のわたしの話を、なにも見返りを求めずに聴いてくれるひとがいる事実は
わたしの今までの現実を小さく、確かに動かした

ふとしたことで、わたしの感情のスイッチがあがる
自分で作りだした、理解してもらえないことへの悲しみと怒り、拒絶

現実を正しく見つめて、どんな状況でも左右されずに生きるには
強くなると自分で決めなければならない

痛みに正しく向き合い、楽で一時的な快楽に依存しない技術

驚くことに、昔のわたしだったらくよくよしていたこと、気分を害していたこと、人に当たってしまっていたことが

今はまったく気にならなくなっていた

MAY ALL YOU BE HAPPY  人の幸福を祈る


トスカーナの丘で、ペンを取り色を塗ることに夢中になった

自分が色やかたちを通して世界を認識していることに気づく

イタリア人(北の出身)は意外に働き者で親しみのあるスポーツマンみたいだと知った

小さなカップに注ぐエスプレッソを、チョコレートと一緒に嬉しそうに味わうのを見てわたしも真似したくなった

旅先で、言葉の通じない場所で意思が伝わったときとてもうれしいように

困難がある方が喜びが大きくなる

それはひとと比べるものでもなく
与えられるものでもなく

自分で作るもの


未完成は美しさ

あなたはあなたらしく、わたしはわたしらしく。