女子高校生のAV体験|ネット時代の性教育と人権
2-2.過激な少女漫画
受験を経て、アユミは難関私立大学の付属中学校に通うようになった。1年生のとき、クラスの女子の間で、ある漫画がブームになった。友人からそれを借りたアユミは、初めて読んだ時のインパクトをいまも覚えている。
「超エロくて。性行為は綺麗に描かれているし、ベッドシーンもロマンチックで、それとなく匂わせるくらいの描写でした。でも内容が過激で、R18でもいい感じ」
少女向けの漫画雑誌に連載されたその作品は海外でも人気になり、アニメ化もされた。ヒロインの女子高生(処女)が、イケメンの青年から様々なHの手ほどきを受けるという設定である。ヒロインは、青年に何度も押し倒されたり、2人の仲をねたむ人々の策略により性的暴行をされそうになったりする。ヒロインと青年が上半身裸になる絵も多く、確かに中学生には刺激的だろう。
作品中の性描写は基本的に、ヒロインの女の子が青年に強引に迫られ、戸惑いながらも体を任せてしまうパターンだ。アユミはこの漫画によって、Hへの憧れが募り始めたという。
「イメージがわきやすかったんです。ああ、こういう感じなんだ、みたいな。私もいつかHをするんだろう、と思うようになりました。小学生のときのような拒否や嫌悪はなくなりましたね。むしろ、嫌いじゃない感じで。抗体が出来てきたんでしょうね」
女子向けの性的メディアとは?
日本性教育協会の調査(2005)によれば、女子が性的関心を初めて持つのは平均12・99歳で、男子の12・27歳と大差はない。女子向けの性的メディアとしては、男性のヌードグラビアが載っているような、露骨な「女子用エロ本」というのは残念ながらほとんどないが、実は女子の方が、ポルノ情報には簡単にアクセスできる。中学生の女子向けファッション誌、いわゆるティーン誌には、巻末の方に「エッチ特集」が頻繁に組まれているためだ。「私の初エッチ体験談」「セックスのHow To」など、なかなかに赤裸々な内容である。
また、10代女子向けの過激な恋愛漫画は「ティーンズラブ」と呼ばれ、人気を得ている。「憧れの先輩」や「イケメンの医師」とのうれし恥ずかしセックス体験ストーリーが満載だ。アニメ好きな女子に人気の同人誌には、「やおい」と呼ばれる男性同性愛者の性行為がロマンチックに描かれている。さらに、携帯電話の普及と共に女子高生の間でブームになった「ケータイ小説」には、性的暴行などの過激な性描写が含まれていた。これらのメディアは、18歳未満であっても堂々と入手できるのが特徴だ。
彼氏とAV鑑賞
アユミは高校もそのまま付属へと進み、2年生のとき、初めての彼氏が出来た。Hへの興味が深まっていたアユミは、彼氏とラブホテルへ。同い年の相手は童貞ではなく、アユミが2人目だった。ちなみに日本性教育協会の調べ(2005年)によれば、高校生になると、女子も男子も約3割がセックスを経験する。
ホテルでは、心の準備も兼ねて彼氏と一緒にAVを見た。
「初めてAVを見たときは、漫画よりも気持ち悪いと思いましたね。何より生身の人間の性器の方が、気持ち悪いとは思ったけど。お互いにそうだと思うけど。彼氏とAV見るのに恥ずかしさはありませんでした。1人で見ることはないので、逆に新鮮で。彼氏の方が恥ずかしかったかもしれませんけどね。私は『この女優超ブサイク』とか、けなす話ばかりしていました。『気持ち悪いから消そうよ』みたいな。でも、いまからこれを経験するんだと思うと、ちょっと嬉しかったですね」
1回Hをしてみると楽しく、アユミはハマッた。それ以来、彼氏をとっかえひっかえするようになった。だが、自分から進んでAVを見ることはないという。
「AVはいつも彼氏と一緒に見ています。特に自分で見たいとは思いませんね。1人で見るくらいなら彼氏と見ればいいじゃん、と思います」
彼氏が途切れないアユミだからこそ言えるセリフだろう。
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