あざのあと(完)
バンザーイ。バンザーイ。
最初の1歩とーんだ!
私の体が重力に従って落ちていく。
落ちていく。
遺書は書かなかった。宛てる人が居なかったから。
靴は穿いてきた。お気に入りの靴なの。
地面と当たって相まって、肉片となってしまえばあざのあとなんて、どうでもいい存在になってしまうから。
だから、平気。私はもう平気。
欲しいものなんてなかった。(本当は欲しいものだらけだった。)
なりたいものなんてなかった。(教師になりたかった。)
愛してなんてほしくなかった。(抱きしめて欲しかった。)
だから平気。
もうなにも怖くないの。
お父さんも、お母さんも、彼も、あの子も、
どこにもいないんだもの。
結局私の隣には誰も居なかった。
愛してくれる人も、気にかけてくれる人も、誰も、誰も居なかった。
ああ。泣いても頬に当たる強風のせいで涙は頭上に。
この風にあたったら、きっともう。
地面がやけに遠い。
もういいから、走馬灯なんて見なくていいから。見るものなんてないんだから。
あたしを愛してくれたのはこの体中の、
あざのあと。
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