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私の〜恋愛暗黒時代〜⑪最後のトリデ・前編

23年分の失恋話、いよいよ最終回目前にして、
臨月、出産、育児と、目まぐるしくも幸せな
日々が始まり、失恋話の執筆から遠ざかって
しまいました。実際に、授乳中はオキシトシン
という幸せホルモンが分泌されているらしく、
なかなか不幸な身の上話を書こうという気が、
起こりませんでした。が、いつまでも先延ばし
にしてはなりませんね。ということで、ぜひ、
お読みいただけると嬉しゅうございます。



これから綴る最後の彼との恋愛体験は、私が
これまでの恋愛で味わってきた様々な苦しみが、ぎゅっと凝縮されているかのような、いわば、
集大成的な失恋体験でした。そして、23年もの
長い間、どうして私の恋愛が一度も成就されな
かったのか。その原因を探るための、たくさん
のヒントを、まるで映し鏡のように見せてくれ
た貴重な体験でもありました。そのような意味
で、私の人生の大切な物語のひとつに登場して
くれた彼や、当時、必死にもがきながらも、
未来の幸せな自分の姿を信じ、幸せになること
を諦めなかった自分に対し、愛おしさを覚える
と同時に、深く深く感謝しています。



私がバリ島への単身移住を敢行したのは、39歳を迎えた誕生日の数日後。2018年11月のことでした。生計をたてるため、サーフィンスクールに勤めることが決まっていました。そこで、彼に出会ったのです。同じ職場に勤めているわけではありませんが、同じ職種ということで、毎日顔を合わせる間柄でした。彼には、日本に彼女がいることも知っていたのですが、ある日、友人達も含め、一緒にごはんを食べに行くことになり、この時、急激に彼との距離が縮まったのでした。
その後も、まだまだこの土地に不慣れな私を、色々とサポートしてくれて、すっかり彼の優しさに魅了されてしまいました。
「僕は、日本にいる彼女と入籍する予定だった。
でも、前回、日本で数ヶ月を彼女と過ごした時
に、彼女とは性格が合わないと感じた。だから、
彼女には申し訳ないけど、結婚できないって
伝えて、バリに帰ってきたんだ。」と、ある日
彼から聞いたのです。そのうえ、「彼女と別れる
から、それまで待っててくれる?」とも。
それを言われた私は、てっきり彼と簡単に付き合えるものだと思いました。そして、40歳を目前に
して結婚にも焦っていた私は、こう考えました。
「彼は彼女と結婚する気があったということは、
結婚願望があるということか!だったら、もし、
私が彼と付き合えば、すんなりと結婚出来る可能性が大いにあるということか!」と。
そうして、彼と付き合い始めることに、期待が高まりました。



しかし、この時すでに、彼が再び日本に行くことが決まっていたのです。しかも、2月からの1ヶ月半もしくは、長くて3ヶ月間の滞在予定です。彼には、どうしても行かないでほしかった。しかし、何ヶ月も前から、彼女が彼のために、日本滞在ビザや、その他諸々の手続きを全て済ませていて、今さら断ることは出来ないというのです。
「だったら、きちんとお別れして帰ってきて。」
私は、彼にそう伝えました。「うん、頑張ってみる。」と、彼は答えました。数ヶ月間、離れ離れになる寂しさと、いくら別れを考えている相手とは言え、彼と彼女が一緒に過ごしている場面を想像するだけで沸き起こってくる激しい嫉妬心、そして、離れている間に彼の心が冷めてしまわないだろうかという不安で、いまにも胸が押し潰されそうでした。
そんな時、「今はバリ島にまゆがいる。だから、僕は本当に日本へ行きたくないんだ。せめて、1ヶ月半で帰って来たいと思ってる。」という、彼の言葉に希望を見出した私は、彼が彼女と別れて、私の元に帰って来てくれることを信じよう。この期間を乗り越えて、正式に彼と付き合える日を待とう。そう、決心したのでした。



彼が日本に旅立ってからは、彼女がいない時間を
見計らって、お互いに連絡を取り合いました。彼と連絡がとれない時間は、不安を煽る余計なことを考えなくて済むように、新しい友人達と遊びに出かけたり、インドネシア語の勉強に励んだりして、気を紛らわせました。しかし、頭と心の片隅から、不安と寂しさが完全に拭い去られることは、ひとときもありませんでした。
そして、その後、私の不安がさらに増大するようなこと起き始めました。彼からの折り返しの連絡が来るまでに、以前よりも時間が掛かるようになってきたのです。初めのうちは、まず翌日に連絡が返ってくるようになり、そして段々と2日おき、3日おき、、、と、その間隔が長くなってきました。そして、ついに、ある日を境に、全く連絡が途絶えてしまったのです。いくらメッセージを送っても、既読にならない。電話をしても応答がない。
ここからは、寝ても覚めても、心が痛くて苦しくて、たまりませんでした。何でだろう?何でだろう?悪い妄想と推測で、私の脳内は埋め尽くされました。そして、少しでも、この心の痛みと、考え過ぎから生じる疲労から逃れたくて、毎晩ひとり、大量のお酒を飲みました。酔っ払って眠りにつき、ほんの一瞬だけ辛い思いを忘れられるのですが、酷い二日酔いと共に目覚めた瞬間から、再び、地獄のような一日が始まる。そんな毎日を繰り返しました。



そして、さらに追い討ちをかけられるような、とてもショッキングな出来事が起きました。それは、同じ職場の女の子に見せてもらった、彼の某SNSの投稿でした。そこには、雪山でスノーボードを楽しんでいる、彼と彼女の仲睦まじい姿がありました。それを目にした瞬間、心臓をえぐり取られたのではないかと思うほど、胸がズキりと痛みました。そして、2人がキスをしている写真が、目に飛び込んできた時には、思わず涙が溢れ出しました。
「彼のことを、信じようと思っていたのに。彼は平気で私に嘘をついて、私を簡単に裏切る人だったなんて。」私は、深く傷つきました。そして、
この気持ちを、誰かに聞いてもらいたかったけど、いい歳して騙されてばかり、その上、今回は海外に移住してまで、また同じようなダメ恋愛を繰り返している自分が、情けないやら恥ずかしいやらで、誰にも打ち明けることができませんでした。そして、異国の地で、一人塞ぎこんでしまいました。
「私が好きになる男性はみんな、はじめは相手から言い寄ってくるくせに、結局、最後は私を傷つけて、去っていってしまう。私は、そうやって、ずっとずっと苦しめられてきた。私が何か悪いことをしたというの?ただ、純粋に相手を好きなだけなのに、どうしていつも、酷い目に遭わされるの?もう、いい加減、こんな恋愛から卒業したい。」心の底から、そう思いました。そして、あることを思い出したのです。



それは、数年前、おじさん彼氏との失恋で、意気消沈していた時に購読した、秋山まりあさんの本で知ることになった『100%自分原因説』でした。
私は、この書籍で初めて、『現実は全て、自分の
思考で成り立っている』という事を知りました。では、いったい何故、不幸な恋愛をしたいだなんて微塵も望んでいないし、むしろ、誰かと結ばれて、早く幸せになりたいと願っているはずなのに、私の現実は、紛れもなく、“いつも恋愛で苦しんでいる現実”なのだろうか。
本文中には、もし望んでいない現実を送っている場合、その現実を創り出している原因となっている思考を、自分で探し出す方法も記されていましたが、もはや、こんなにも長い年月、恋愛ごとで悩まされ続けている私一人の力では、容易にその原因を突き止められる自信がありませんでした。そこで、一緒に思考を探る手伝いをしてくださるセラピストさんを頼ることにしたのでした。


そして、そうこうしているうちに、彼は、1ヶ月半を日本で過ごし、バリ島へ帰ってきました。最後まで音信不通を貫いた彼は、明らかに、私を避けているのが分かりました。
でも、私は彼から話を聞かなければ、気が済みません。そう彼に伝え、二人で話をする機会を持ちました。聞きたいことは、ただ一つ。彼女と別れて、私と付き合う気はまだあるのか?それだけでした。「彼女には、ちゃんと別れたいって伝えたよ。でも、そしたら、彼女が死ぬって言い出したの。実は、僕たちには、どうしても別れられない理由があるの。だから、まゆとは、友達に戻りたいんだ。」
どうしても別れられない理由というのは、彼の
プライバシーがあるのでここでは書けませんが、それを聞いた私は、彼女に対して憎悪の念を抱きました。「被害者ぶって彼を引き留めるなんて、なんて卑怯な奴め。」と。でも、彼が出した結論が、私とは友達に戻りたいのであれば、悲しいけれど、受け入れるしか仕方がない。それ以降、彼に近づくまいと必死にこらえました。
しかし、毎日、彼の姿を見ざるを得ない環境で、
何もかも忘れて心穏やかに過ごすことは、困難
でした。やはり、彼のことが気になって仕方が
ありませんでした。そして、それは彼の方も同じでした。一定の期間が過ぎた頃、どちらからともなく近づいて、お互いにまだ気持ちがあることを認め合い、再び、中途半端な関係が始まったのでした。それは、“彼には本物の彼女がいて、私は彼の本物の彼女ではない”。そんな、何とも言えない切なさと、やるせなさに苛まれる日々のスタートでもありました。そして、会ったこともない彼女に対して、激しい闘争心と嫉妬心を燃やし続け、自分自身を疲弊させ続ける日々の始まりでもありました。



私は、早く彼女と別れてほしいと、何度も彼を急かしました。しかし、その度に返ってくる返事は、「うん。今、別れられるタイミングを探しているから、もう少し待っていて。」というものでした。彼のことが好きで好きで、早く自分だけのものにしたかった私は、その彼の言葉を信じて待つしかありませんでした。
しかし、彼を信じたいけど、100パーセントの信頼を置いて良いのかは、分からない。その気持ちから、“彼が、どこで、誰と、何をしていているのか。私が知らないところで、私を裏切るようなことはしていないか”。いつも、これらのことが気がかりで、仕方ありませんでした。だから、彼と一緒にいない時の私は、いつも彼に対する不安と心配でいっぱいで、自分の時間というものを過ごすことが、出来なくなっていました。ましてや、彼と一緒に過ごしている時でさえも。常に画面側を伏せた状態で置かれる携帯を目にしては、「彼女からの連絡通知を見られたくないんだな」とか、着信が鳴るたびに「彼女からかな」とか、バイバイの時間が近づいてくると「帰ったら彼女と電話するんだろうな」とか、四六時中、彼に対して猜疑心を抱いてしまい、一緒に過ごす時間ですら、心底楽しむことは出来ませんでした。
このように、彼と一緒に居ても、そうでない時も、“彼の気持ちが、ライバルである本物の彼女に傾いてしまわないか。そして、一度私を裏切った彼が、再び私を裏切って傷つけることはないか”。いつも、この恐怖に怯えていました。



そして、このような焦りと恐怖が増幅していったのには、ある大きな理由がありました。
数ヶ月後の夏、今度は彼女が彼に会いに、バリ島へ来るかもしれないということを、知っていたからです。その予定日まで、2ヶ月ほどの猶予がありました。その間に、何としても彼女との交際を終わらせて、彼女がバリ島に来ることを、阻止してほしかった。彼が日本にいる間に経験した、とてつもない寂しさと不安を、もう二度と味わいたくなかったからです。もし、それまでに、彼女と別れることが出来ないとしても、彼女がバリ島に来ることだけは、なんとか回避してほしい。そう、彼に懇願しました。「うん。僕も彼女には来てほしくないんだよ。みんなに見られてしまわないように、いったいどうやって過ごせばいいんだよ。」ここでの、みんなとは、私達の共通の友人達や職場の同僚達のことでした。私達の関係は、周囲に知れ渡っていたので、もしも彼女がここへ来ることになれば、私達はみんなの興味の対象になってしまう。彼にとっては、そのことが恥ずかしくて不安だったのようです。だからこそ、きっと、彼は彼女が来ないように、何とかしてくれるはずだ。私は、彼女が来るかもしれないそのデッドラインの日まで、毎日毎日、祈るような気持ちで過ごしました。



しかし、その期待は、見事に裏切られてしまいました。彼女を乗せた飛行機が到着する、ほんのわずか数時間前のことです。急に、彼からメッセージが届きました。「ごめん。彼女との連絡の行き違いで、もう間もなくバリに到着するみたい。」と。とうとう彼女が来ることになっていたことを知らなかった私は、その当日のあまりに予期せぬ告白に、思わず気が動転してしまいました。詳しく事情を聞かせてほしいと、彼に申し入れましたが、時間が無いからと、取り合ってもらえませんでした。そして、この日以降、彼女が日本に帰国するまでの間、私のメッセージは未読のまま完全に放置され、彼は一切姿を消してしまいました。
この彼の言動は、すぐさま私に、彼が日本に行っている間に感じていた寂しさの感覚を、呼び起こしました。あれほど避けたかった感覚を、たった数日間とはいえ、再び味わうことになるなんて。
しかも、今回、二人は私と同じバリ島にいる。もし、楽しそうに過ごす二人の姿を、この目で目撃することになったら、私はどうなってしまうだろうか。とても怖かった。そして、周りの友人達も、彼が姿をくらませていることに、一切触れないよう、私に気を遣ってくれていることが分かり、申し訳ないような、情けないような気持ちで過ごしました。私は、出来るだけ、混乱した心を周囲に見せないように、努めているつもりでしたが、ある日の朝、出勤の準備をしていた時、突然に大量の涙が溢れ出し、泣き止むことが出来なくなってしまいました。自分の意に反して、まるで子供のように大声で泣いている自分の姿が、ふと脳裏に浮かんだ時、「ああ。私は、自分が思っている以上に、ヤバい状態なのかもしれないな。」そう思いました。そして、パンパンに腫れた目で仕事に向かいました。



やっと彼女が帰国した日の翌日。彼は、いつもの生活に戻ってきました。早く彼に会いたかった私は、彼もまた同じ気持ちだったろうと思っていたのですが、この時、彼から発せられているオーラは、まるで彼が日本から帰国してきた時のそれと、一寸違わず同じものでした。私に対して、自分から近づくことを避けているような、そんな雰囲気が漂っているのです。もしかして、この数日間のうちに、彼女への気持ちが優勢になってしまって、私はまた友達として振り出しに戻されてしまうのかな。そんな不安の気持ちを抱えたまま、彼にこの数日間のことを尋ねました。
「彼女がいる間、何度もケンカしたよ。だから、本当に性格が合わないんだなって思ったよ。でもね、ごめんだけど、今回も彼女と別れられなかった。だって、彼女は今でも、僕と結婚することを、諦めてないみたいなんだ。」
それを聞いた私は、胸をなでおろしました。やはり、彼には彼女と別れる意思があるし、二人の間でケンカが絶えないということは、決して良い関係ではないんだな。そして、彼の気持ちは、ちゃんと私に向いているんだな。そのように感じて、安心したのです。
私は、重ねて彼に聞きました。「彼女が、もうバリ島に来ることはないよね?それに、あなたも、これ以上、日本に行きたくないって言っていたけれど、本当に、二度と日本に行くことはないんだよね?」と。彼は答えました。「うん、ない。」
私は思いました。これで、苦しみの山は越えたんだ。今後は、もう、彼と彼女が会うことはないのだから、安心だと。そして、再び、恋人の真似ごとを繰り返す日々を続けていくのでした。



このようなダメ恋愛を展開していた一方で、私は、セラピストさんに協力してもらいながら、
“自分が望んでいない現実を創り出している原因となっている潜在意識下の思い込み”を探す作業を、進めていました。それは、幼少期、学生時代、大人に至るまでの、あらゆる段階で起きた過去の出来事やその時々の感情を、記憶の中でさかのぼり、それを記していくという作業でした。完全に忘れ去っていた出来事や、その時々に抱いていた色々な想いや感情がみるみるとよみがえってきました。そして、自分の内側と真っ向から対面する作業に、とても疲れたり、感傷的になったり、苦しくなったり、時に怒りが湧いてきたりもしました。そうして、約半年をかけて、自分が気づかないうちに抱えてしまっていた、さまざまな思い込みを発見するに至りました。
その思い込みたるや。私って、とんでもなくワガママ女で、超傲慢で、こんなにも性格が悪かったのかと、驚くべきものばかりでしたが、セラピストさんからは、どんなに悪いと思える思い込みであっても、自分を責める必要はないし、これから新たに望ましい現実を創ってゆくためには、まずこれらの潜在的思い込みを、認めて・手放して、そして、新しい思考を送り出しましょうという風に、助言を受けました。やるとなったら、ストイックに取り組んでしまう性格ゆえ、認めて手放すことも、新しい思考を送り出すことも、懸命になってやりました。そうしているうちに、何となく、彼との仲が上向きになっているかもしれないと感じる場面も増えてきましたが、やはり、彼と彼女が別れる気配は一向になく、私達の関係は、ただ平行線をたどっているに過ぎませんでした。私は、全く変わる様子のない現実に、行き場のない憤りを覚えるようになりました。そして、これだけ一生懸命やっているのになんで?と、自分のことも責めるようになっていきました。そんな、どうしようも無い気持ちで過ごしていたある日、無造作に放置された彼の携帯電話を、とうとうこの手に取ってしまいました。“見ちゃダメだよ”という心の声に耳を貸せずに開いてしまった彼の携帯電話の中には、思わず目を覆いたくなるような、たくさんのことが詰め込まれていました。

後半へ続く。。。















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