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引き寄せない法則

感染症騒動が始まった頃から、一人の友人の消息が途絶えた。

日本でコロナのことが盛り上がる直前、私は、ある出来事から、精神的にひどく不安定な状態だった。私は、彼女にとても泣きついて、みっともないところを見せて、頼って頼って、やっとどうにか一人で立ち直ろうとした矢先に、彼女からの連絡がふっつりとなくなり、コロナのことで世界がいっぱいになった。前の出来事からまだまだ立ち上がりきれない私は、コロナという加算がついて、ダブルもみ洗いのように葛藤に巻き込まれていった。

彼女とは、もう10年くらいのつきあいで、彼女の家もご実家もおじゃましたりする仲だった。知性と美学がありながら情の深いところがあって、最終的に彼女はいつも私に「あなたはそのままでいいんだよう」というのだった。だから、結構きもちわるいことなのだけれど、私はずいぶん年下の彼女に甘えているところがあった。

自分がどれだけみっともなかったか、十分わかっていたから、私は、ああ、呆れられたんだなあ、嫌われたんだなあ、と思った。私のとり乱した様子にとうとう嫌気が差したんだろう。私、彼女に甘えすぎた。しかたない。彼女も感染症のことでいっぱいいっぱいかもしれない。連絡したければしてくるだろうから、放っておこうと、それがせめてもの私の友情だ、とすら思っていた。

でもついさっき、彼女から連絡が来た。病気で入院していたのだそうな……この時期に!運の悪い娘!でも、私は彼女に嫌われたのではなかった。

私はいつもこうだ。人間関係以外ではクールな方だし、人間でもどうでもいい人には一切ならないが、相手が好きであればあるほど、心当たりがあればなおさら、「嫌われたんじゃないかな……」なんて勝手に不安になり、不安に基づいて行動を決めたりする。情の厚さゆえ、人なつっこさゆえかもしれないけれど、自爆的で、そしてけっこうおバカだ。こういうのを「引き寄せない法則」というのだと思う。

「私が信じるあの人のすばらしさは、私自身が見出した魅力だ」「この人がいると、私自身が心地よいと感じる」。こうした「自分があの人から受ける感覚」に、私はもっと自信をもっていいのだと思った。
その上で、不安も期待もなく、ただ時間をすごすことが楽にできれば、彼女とも、他の人とも、きっともっと豊かな関係を築けるのだろう。それだけのことだ。難しいんだけれど。






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