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あと余命1年と言われたら

久しぶりに見た常連のお客さん。

行きつけの美容室から乗ってきた。

歩き方がそろーりそろーり。

どうやら手術したばかりで、体を気遣ってのよう。

車に乗って、いきなり話し始めた。

胆管癌の手術を受けて、退院したばかりだった。

若い頃に肝臓を悪くしたことがあり、そこから健康にはけっこう気を遣ってきたようだった。

毎年受けている健康診断で、肝臓の数値が悪かったらしい。

いつも行っている病院の先生にそのことを話したら、エコーで見てあげるよって言われて調べたら、胆管がつまっていて、すぐに大きい病院を紹介してくれた。
(ちなみに、その先生は肝臓専門の先生だったらしい。お客さんもラッキーだったと言っていた。)


でも、大きい病院で検査したら、手術すると、残せる肝臓が30%切っちゃうと再生できなくなるから、今の状態では手術できません。
と言われたそうだ。

そして、
「あとどれくらい生きられますか?」と聞いたら、
「余命1年」と。

一瞬、頭が真っ暗になった…

後期高齢者とは言え、やっぱりまだ死ねない、生きたいと思って、セカンドオピニオンの病院を探していたら、ちょうど病院での診察のときに、先生の方からセカンドオピニオンの話が出た。

「ガン専門の病院があるからそこはどう?」と言われ、ちょうど探していたときに見つけていた病院と同じだったので、そこに行ったようだ。

そこの病院の先生は、「全然切れますよ!」とさらっと答えたらしい。

肝臓を治療して、残せる部分を増やしてから手術になった。

遠方だったが、何回通ったかわからないくらいだと言っていた。

手術は11時間にも及んだが、まだ早かった方だったようだ。

小腸を少し切って、胆管がながれるようにつなげたと言っていた。

某医療ドラマのような話。

私はそのドラマは好きで見ていたので、ああいう感じなのかなと思いながら聞いていた。

手術も術後も順調で、8週間入院のところを4週間ですんで戻ってきたようだ。

無事に生還できたし、しばらく髪のお手入れをしてなかったから、報告がてら美容室に行ったようだ。


「やっぱり信心は大事よねー
若い人にはまだわかんないかもだけど」と。

某大手の宗教団体に入っている人だった。

毎日念入りにお祈りしていたから、生還できたんだとうれしそうに語っていた。

最後に、
やはり肝臓は、沈黙の臓器と言われるが、
全然自覚症状がなかったらしい。

だから、健康診断の結果が出てかかりつけのドクターに話すまでわからなかったようだ。


自覚症状もなく、余命宣告されたら…
私ならどうするんだろう…とそのお客さんをおろしてからふと思った。

祖母がなくなり、四十九日が終わったあとでまた生と死のはざまの話。

生きるとは?
最期をどう迎えるか?

改めて、後悔のない生き方をしなきゃと思わせられた、少し汗ばむ午後だった。

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