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東京お散歩日記#20(東京都庭園美術館)

お散歩日記(東京都庭園美術館)
・・・5月◎日 晴れ ・・・ 

五月らしい爽やかな日。白金台にある東京都庭園美術館で開催中の『邸宅の記憶』展に行ってきました。

『邸宅の記憶』展は、年に一度行われる旧朝香宮邸きゅうあさかのみやていを公開する内容の展覧会となります。

まず入口となる門を抜けて、緑に囲まれた道を進んでいきます。鳥がたくさんいるようで、可愛らしいさえずりがたくさん聞こえてきました。

木漏れ日のうえをそのまま進んでいくと、

東京都庭園美術館があらわれます。この建物は1933年に朝香宮家の本邸として建てられたもので、1983年に美術館として一般公開されました(重要文化財でもあります)。なので、砕けた言い方をすれば、今日は宮家(皇族一家)のおうち見学にやってきた、という感じかもしれません。では、早速なかへ。

エントランス入ってまず目に入るのは、フランスのガラス工芸家であるルネ・ラリックの美しいガラスレリーフ。内側から優しく光るように羽根を広げた女性像が浮かび上がっています。きれい。思わずうっとりと立ちどまってしまいます。

足元に視線を落とせば、緻密で美しいモザイクタイル。ちなみにこの旧朝香宮邸はアール・デコ建築として有名で、主要な部屋の内装はフランスの室内装飾家アンリ・ラパンが担当しているそうです。(📷今回の展覧会は本館内の写真撮影OK)

それにしてもすべてが見所ともいえそうな美しい内装の本館。入ってすぐ、大広間のとなりにある次室には有名な『噴水器(香水塔)』がありました。照明の熱で香りを漂わせる仕組みになっているそうで、今でいうアロマランプの巨大版なのかもしれません。

こちらは優美な雰囲気のある大客室です。

その壁紙には動物や自然の様子が描かれていました。

ラジエーター(暖房機)カバーはお花のデザイン。本当に細部まで凝っていて、思わず感嘆のため息が漏れてしまいます。

こちらは大食堂。円形に張り出している窓から庭園が見渡せて開放的な雰囲気があります。季節ごとに移り変わる景色を当時の人たちはまるで絵画のように眺めていたのかなあ、なんて想像してしまいます。

それにしても本当にどこをみても息を呑むような美しいデザイン。こちらは彫刻家のレオン・ブランショによる植物を施した壁面レリーフです。

お魚が泳いでいるデザインのラジエーターカバー。かわいい。こちらは宮内省内匠寮たくみりょうによるものだそう。

見上げると、天井にはラリックの照明『パイナップルとざくろ』がありました。食堂だから果物なのでしょうか。遊び心あるデザインでこちらもかわいいです。

こちらは同じく大食堂にある暖炉上に描かれたアンリ・ラパンの壁画『赤いパーゴラと楽園の泉』の一部をズーム。白鳥が泳いでいるさまが愛らしいです(奥にいるのはブラックスワン?)。

本当にすべてが素敵で眼福になります。では、二階へと上がります。

一階は来客をもてなすパブリックスペースであるのに対して、二階は生活を感じられるプライベートスペースとのことで、実際に上がってみると、空気感が若干異なるのが感じられます。こちらは書斎。窓が大きく、自然光がたっぷり入るつくりになっていました。

照明もひとつひとつデザインが異なっていてお洒落です(こちらは若宮居間の照明)。

ベランダの廊下をみると、大理石のモダンな黒白の市松模様になっていました。

こちらは『三羽揃いのペリカン(ペンギン)』。ロイヤル・コペンハーゲンのフィギュリンですね。

ペンギンなのにペリカンという表記になっているのは、当時の誤りをあえて訂正せずに残しているからなのかもしれません。三羽揃って、じっとつぶらな瞳で同じ方向を見ている姿がとてもチャーミングです。

ちなみに妃殿下居間のキャビネットのなかにもまた別のペンギン三羽組がいましたよ。ひそひそと夜中にお喋りをしていそうな雰囲気のこの子たちもかわいいなあ。

こちらの照明は通称「こんぺいとう」とも呼ばれているランプですね。ステンドグラスの色彩が天井に反射していて綺麗です。

こちらは姫宮居間です。この部屋だけ不思議と他の部屋とは少し空気が違うように感じました。光の入り具合のせいかもしれませんが、とてもプライベートな空気が感じられ、「そうだ、自分は今、かつてとある家族が暮らしていた大切なお宅にお邪魔させてもらっているんだ」ということにはたと気がつかされてドキドキしてしまいました。

考えてみれば、現在は美術館という名がついているのもあり、内装の美しさや装飾ばかりに目を奪われていましたが、ここではかつて朝香宮家の人々の暮らしや日常が普通にあったんですよね。この場所は彼らにとって思い入れのある大切な家であり、プライベートな空間でもあることを今更ながらに思いました。

と同時に、建物はここで暮らしていた人たちの移りゆくさまをずっと見つめていたわけで、今回のテーマである『邸宅の記憶』というのはまさにそのとおりで、邸宅自体が生きているように記憶を宿し、そしてその記憶を守っているのだろうという気もしました。

こちらは北の間の窓から見えた貯水池。あの鳥はなんだろう?ドードーみたい。

こちらは今回特別公開しているウィンターガーデンです。日当たりが良さそうなので、冬はポカポカなのかもしれません。

隣接した新館では西洋諸国で用いられた小型菓子器、ボンボニエールの展示もありました。200点以上あり、どれも凝ったデザインで見応えありました。

それでは十分に展覧会を満喫できたので、庭園美術館をあとにしたいと思います。

今日は「素敵」「綺麗」「かわいい」といった言葉を胸のうちで何度言ったか分かりません。こだわりの詰まった芸術的な邸宅。妃殿下(允子のぶこ内親王)に関してはこの家の完成後わずか半年ほどで病のためご逝去されたそうで、それを考えると切ないような気持ちにもなりますが、その後も朝香宮家の人々が過ごし、彼らが離れたあともこうして建物は今に至るまで当時の記憶を宿したまま生き続けているのだと思うと、すこし不思議な気持ちにもなりました。

五月晴れの空

今日は貴重な経験をできたなあと思いますし、もちろん美しい内装のおかげで目の保養にもなりました。観にこられてよかったです。

作品リスト表紙のペンギン三羽。
味わいのある書体で歓迎してくれました。

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東京都庭園美術館の建物公開『邸宅の記憶』は6月4日までの開催だそうです(オンラインによる日時指定制)。気になる方いましたらHPでご確認ください。

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                   お散歩日記、最後までお読みいただきありがとうございました。

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