創作怪談 『走る影』

ついさっき起こった出来事、散歩に出ようと外に出た。
イヤホンをつけて音楽を聴きながら、のんびりと歩く。

仕事終わりなので、結構遅い時間だ。
街灯のほとんどない川沿いの土手の舗装された道を歩いていく。
時々通る車やバイク、自転車のライトから照らされる時に明るくなるぐらいだ。
今日は月も出ていないし、星も見えない曇り空。
雨が降りそうな気配もするので、今日は早めに帰ろう、そう思いながら歩く。

すると少し先、遠目に何かが見えた。
私が向かっている方の道に人影が見える。
その人影は道を走って横切り、土手の傾斜をすごい勢いで下って行く。

え?と思ったが、この時期は陸上の大会があるからか、中学生の子たちが車通りの少ないこの土手で練習をしていることがある。
スタートダッシュの練習なのか、河川敷から駆け上がっているのをよく見る。
河川敷へ戻っている最中なのだろう、その時はそう思った。
下り坂を猛ダッシュしている……危ないぞ……
そう思っていた。

その人影は、河川敷に降りてもスピードを緩めることはなく、そのまま川の方へ走る。

ん?と思った時には、その人影は川の水面を走っっていた。

思わず足を止める。

川を渡り切り、反対側の傾斜を駆け上がる人影は、また土手の道も横切り住宅街のある方へ走っていった。

本当になんだったのだろう。
結局周りには人もいなかったし、車なんかも通っていない。
良く考えれば暗く明かりもない中、遠目にそんなにはっきりと人が見えるだろうか?
そんな疑問が湧くほどの距離感だったし、見間違えとは思えないほど、はっきりと走る人影に首を捻るしか無かった。




多分見間違いなのですが、最近あった話をそれっぽくなるように書きました。
本当になんだったんだろう……









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