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こちら側からあちら側へ、また船をこぎだすまで。『竹迫 司登、再起』2

竹迫、再起を果たしました。あの初めての敗北から6カ月がたちました。またリングに上がってくれた夫、ユーネクストをご視聴くださった方、現地観戦くださった方、応援くださった方、皆様ありがとうございました。

こちらはプロボクサー竹迫司登の敗北〜本日の試合を妻目線からお話させていただくドキュメントな内容となります。まず初めにこちらの記事を読んでいただけるとわかりやすいです。長いです。とりあえず長いです。読んだらスキ♥をくださる嬉しいです。


◆絆の中身。


やると決めてくれたので晴れやかな気持ちで帰国した。初めてこちら側にきて失ったものも多くあったがそれと同時に得たものの方が大きく、幸福感が来た。まだボクシングは伸びしろがたくさんあるのだ、逆にあそこまで国内の練習だけで応戦したオフェンス技術は揺るがない自信にもなった。

A-SIGN.BOXING.の横浜光ジムの石井会長も倒れる直前の最後の最後までカウンターを合わせに行っていた事を話してくれていた。

そのほかにも業界のすごい方から、ポジティブな声掛けや、ボクシングのアドバイスをもらったりもした。

ここからはディフェンスを強化して、真のボクシングを学ばなければならない。敗北を経験したからこそ得るものが多くあったのだ。この経験こそが竹迫を化かすことになるといい。

現地では勿論、帰国後も沢山の人が涙を流してくれた。

そして私達も、沢山の涙を流したけど、夫の本気がみんなの心に響いていた事が何より嬉しい事実だった。

同じように悔しがってくれたり、もう一度頑張ると言ってほしいといってくれる。色んな感情の涙をもらった。みんな泣いていたし、私達も泣いた。

もういい大人が、道でばったり会って、全員がうるうると泣き出すのだ。

心が繋がるってこう言う事なんだなって、やっぱり夫の仕事は不思議だ。(人を殴って失神させたりさせられるような競技なのに、ヒューマンドラマはつねにここにあるという謎。)

『負けたら応援者は離れていくよ』ボクシングをしていれば誰もが聞くこの言葉。この試合で逆に絆が深まった。続けると伝えればみんな"良かった"と言ってくれた。こんな幸せな事はない。

私たち夫婦もよくこの話題を口にしていた。もしそんな潮時になれば、応援者の事を失望させたりは絶対にしない。自ら去ろう。夫はそこがわかる選手だと私は思っているし、私もサポーターとしてそうでありたいと思っている。

「辞めさせへんで」もあるが、「辞めてもらうで」と言う事もあると言う事だ。

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◆海外合宿と学びと変化

合宿準備について二人で話し合っても何も出てこない。コネクトの当てもなければ、何をどう準備すればいいかも想像もつかない。

漠然と決めた海外合宿を実現する為に「経験を重ねてきた人」の話を聞くことにした。

そこで夫が大阪時代お世話になり、プロボクサーになるきっかけを下さった石田会長と、早くから夫に海外を、進めてくれていた伊藤プロモーターに相談する事にした。

お二人とも相談してからというもの、すぐに先方とコンタクトを取ってくれたり、電話をくれたりとすぐに動いてくださり、お二人のそのスピードの速さこそが、ボクシングをわかっておられて、竹迫のピンチをチャンスに変えさせる速度だった。そういった細やかなリズムが、きちんと現役時代の結果へと繋がっていったのであろう、お二人の偉大さを再確認する。

合宿に行く費用のことも簡単ではなかった、LCCの飛行機代でも往復に40万近くかかる。滞在費についてもアメリカの物価は日本よりも数倍高い。そんなことからスポンサーやファンクラブの募集を始めたりもした。

齊田会長もお金の心配や今後の事に頭を悩ませていると、質のいい練習はできないから、「竹迫は世界を取るためだけに練習に集中して」とジムとして、全力でよりそってくれることになった。

そんなこんなで海外合宿があれよあれよと決まり、相談してからたったの3週間で渡米した。(なんと伊藤プロモーターが往復の飛行機チケットをプレゼントしてくれました。ありがとうございます。興行で負けたにも関わらず、夫の熱い気持ちが届いたんかな?可能性感じてくれてんのかな?と勝手にこそこそ泣きました)

人に恵まれ、一ヶ月、宣言通りアメリカで修行を積んだ。

合宿中連絡は常に

毎日が楽しい。
俺、ボクシングがこんなに楽しいの、何年ぶりや。
楽しいし、やられてもくそう!って楽しい。
トライアンドエラー!この感覚!昔伸びてるときにかんじてたやつや!

と、イキイキしていた。

夫はボクシングのことになると、子供のようになるのだ。


だからこそ、いきいきとスポンジのように吸収し、強くなれるのだろうな。今後は海外合宿を重ねて技術を磨いていくと意気込んでいた。そんな合宿中に今回の復帰試合が決まった。

ボクシングを続ける。
いよいよ再出航の日が決まった。

世界をとるまでのストーリーや、試合の意味、竹迫の位置付け、気持ちなども、応援のしがいがあるように、応援者が一緒に楽しんでもらえるようにYouTubeを更新したりもした。(進行形)

ここから「世界ベルト奪取」を見届けてもらえるコンテンツにしていきたいと考えているし、夫が常々いっていた、日本人の重量級は少人数なのだから国内で芽のうちからお互いで潰しあうのではなく、日本人の重量級が世界へ出ていけるようになればいい。と、今後ほかの選手の参考になればという意図もある。

私のこのnoteもその一環で書きはじめた。ボクシングを知ってほしい、竹迫を知ってほしいと思っている。ボクシングについてはわからないが、人は人に魅了される。夫の良さが一人にでも多く届けばいいな。(まあ・・・ただただ文章を書くのが昔から好きでこの文字数にも苦痛なく楽しませてもらえていて、感謝しているし、いつか自分の本を出版したいなぁって若いころは思ってたりもしたので…今思えばなんの本だよって感じなのだけれど(笑))

◆そんなこんなで、再出航

負けるまで知らなかったこちら側の世界で私たちはたくさんの学びと変化を得て進化している。世界を掴む確率をぐん!!とあげてゆく。

応援者を一人も取り残さない「みんなで世界ベルトを取る」ことを目標に、ボクシング以外にも変化を付けて。

負けたら失うと怯えていたのに、失ったものはたった一つの「無敗」という称号だけで、どれだけの事を得たのか、数えきれないほどだ。もはやここでの1敗は神様からの贈り物だったとでも未来の夫は言うかもしれないな。

あちら側は勝者の世界ではなく、夢への通過点だった。こちら側でそれにやっと気が付いたのだ。こちら側は途中であちら側に変化していた。

🥊

さて、

そんなこんなで今日の再出航は無事に

勝利を納めることができました。

応援ありがとうございました。

私にはないこの力を尊敬しているからこそ
世界に通用する選手ではないとたとえ言われようとも
またこちら側にたどりつこうとも
どこまでも寄り添ってどんな事にも挑戦して奮闘したいと思っています。

本日のこの勝利を持って"竹迫 司登 完全再起"です。

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◆秘話:こちら側とあちら側の隙間で

試合会場、試合直前の後楽園ホール付近のカフェで、ユ・ギュンモ選手の到着を待ちながら、この仕上げをかいています。実はギュンモ選手から連絡をもらい、夫にサプライズで日本まで応援に行きたいと言ってくれました。

そうです、つまり。勝敗の結果をまだ知りません。その状態で上の文章を書きあげ、「竹迫司登の完全再起宣言」をしています。

奇妙ですよね。

でも、きちんとした理由があります。

スポーツでは、双方どちらの選手も、家族も、応援者も、どんな時だって信じているのです。

必ず勝つ、と。

その二人の選手どちらかが勝者になり、敗者にもなる。それがスポーツで、勝負の世界での当たり前の法則です。でも信じていますよね、信じたいですよね。誰しも、そうだと思います。

よく井上尚弥さんほど有名な選手になると、試合前にSNSでは勝敗予想が始まります。しかもTwitterのトレンドになるほど大きな。

その際、誰かが対戦相手の選手が勝利をする予想を立てて、外れて井上選手が勝ったとき、「やっぱり井上、強かったね!最高!」などと言おうもんなら、手ひらを返した!と責められるような論争になることがあったりすると思うのですが、手のひらを返すほど圧倒されることも、結果を認めて賞賛したりすることも、それがスポーツのだいご味だなあと思っています。手のひらをかえした!って賛否両論、どんな言葉でも、もりあがってなんぼだなっと。

他にも、絶対勝ちますと豪語していた選手が完敗したときに、口だけと表現されてしまったり。でも微塵もまけるなんて疑わないし、本気の本気でそう思ってます。

実際、私も夫がメイリム選手に絶対勝てる、ってSNSに更新していました。信じていたし、あの結果を微塵も予想していませんでした。

口だけって言葉は明日野郎は馬鹿野郎の永遠の明日野郎につかう言葉だと思っています。

そんな風に

楽しもうよ、スポーツを。認め合おうよ、両者を。

という気持ちになったのは、ギュンモ選手との出会いや、今回の敗北を得て私も学んだ気持ちの一つです。「ボクシングを教える」から私も学びを得ました。だからこそ、その気持ちも込めて、このnoteをあえて試合前に書きあげてから、公開すると決めました。

勝負の世界と取り巻く環境は、とても面白いなと内部でも外部でもないグレーゾーンに隠れ潜む私は思うのでした。

もし叶っても、叶わなくても、いつだって信じています。
その為だけにどれだけの努力がそこにあるか、わかっているから。

夫の入場局は、B'z REDなのですが竹迫そのものの歌のような気がします。

ここで全て出し切る
あらためて誓おう
沈黙を破るのは言葉じゃない

楽はしない
偉ぶらない
誰のせいにもしない
涙も忘れ I'm going my way
礼を尽くし
栄華を捨て
泥まみれにもなろう
千切れないこの絆の色
RED

みんなに夢を信じてもらって、誰かに勇気を与えられるような、そんなボクサーであり続けてくれるだろうな。

さあ、ユ・ギュンモ選手が到着したので、今回のお話はここまで。

試合が定刻であれば終わっているであろう22時に、この記事の公開時間に設定しました。ここ前読まれた方は1.2.併せて9,000文字、初投稿も含めば140,00文字。長い時間を私に下さりありがとうございました。

夫よ、おつかれさま。おめでとう!
また一緒にここから再出発。
この船の終点は、世界王者でよろしくな。

おわり。



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