やさしい人の秘密
小さい頃に見たテレビ、読んだ漫画、先生から言われた言葉の中などで、小さいながらに衝撃というか感銘というか感動というか、とてつもないエネルギーみたいなものを感じて、十数年経った今でも覚えている、そんな言葉が一つや二つ、みんなあるのではないだろうか。
私にとって、それはこの言葉だった。
「あの人はやさしい人だからと
安心してしまわないで
やさしさを
あたりまえにしないで
悲しみがみえないほど
やさしい人は
どれだけたくさんの痛みを
受け止めて素早く
心の奥深く
埋めこんでいるか
時にはそっと思ってみて」
「小さな恋のものがたり」という、今から40年以上も前の漫画である。
偶然にも全巻揃っている場所に出会い、
この言葉にまた会いたくて、
ただ、なんとなくの文章と、この岸本さんという男性のキャラクターが、苦しそうな顔をして自分の心に穴を掘っている絵、それだけしか手がかりがなくて、
1巻からひたすらペラペラして、
28巻で再会した。
我ながらもの凄い執着である。
"ママがまゆちゃんくらいの歳の時、一生懸命に読んでたんだよ。"
人形遊びもかくれんぼも折り紙もあやとりも、公園遊びも一通りやり終えて、暇を持て余したわたしにおばあちゃんがそう言って渡してくれた。
この1ページに出会ったときは、衝撃…
衝撃というか、腑に落ちた感じだった。
そういうことか、と。
やさしい人は、悲しみや痛みを、
自分の心のスペースを削って、埋めこんでいたんだね。
だから悲しそうにも苦しそうにも見えなくて、ただただ"優しい人"っていう印象がつく。
この言葉に出会ってから、ちょっとだけ、ちょっとだけだけど、やさしい人が怖くなった。
あの子も、岸本さんみたいに苦しそうな顔をして、自分の心をショベルで傷つけて、見えないように悲しみを埋め込んでいるのかな。
見えないところで泣いているのかな。
どんな顔をしているんだろう。
そう思うと、人にやさしくすることができるようになった。
しかも、わたしは"やさしい人の秘密"を知っているから、
やさしい人がもう自分の心を削らないように、
痛みを埋め込まないように、
悲しみに蓋をしないように、
やさしい人の心のスペースが無くならないように、
やさしい人に、やさしくすることができるようになった。
そんな気がしている。
宮城県の「松島レトロ館」というところで出会いました。
ここ、めちゃめちゃ楽しかった!
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