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「感謝の食事」フランスのSolidarité精神がコロナ禍のヒューマニズムを問う

新型コロナウイルスが猛威をふるった2020年、春。フランスの医療機関は崩壊寸前。軍隊の野外病院もフル稼働していた。フランス全土で外出禁止令が発動され、飲食店は3月から閉鎖されたままだった。(「料理王国」 2020年6-7月号 P.80 参与)

パリから広がった「感謝の食事」のムーヴメントは、誰かのために「何かしたい」一人ひとりの意思の連鎖によって生まれました。

混沌としたコロナ禍だからこそ、私たちはSolidarité(連帯)の大切さを再確認できるのかもしれません。

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感謝の食事とは

レストランが閉鎖中に最前線に立つ医療従事者へ食事を届けるプロジェクト。料理ジャーナリストのステファン・メジャネス氏が最初に提案し、大統領宮廷エリゼ宮のシェフ、ギヨーム・ゴメズ氏と共に始めました。

デリバリーサービス「ティップトック」や業務スーパー「メトロ」と提携し、およそ2000食の料理をパリの総合病院で働く医療従事者へ届けたのです。

この活動は、200名以上のシェフが参加を募り、地方の病院へも広まりました。


行動を起こすことの意味

華の都が誇るガストロノミーは観光業と密接な関係にあります。飲食店の閉鎖は雇用にも影響し、悲嘆にくれる人も少なくなかったはず。

そんな中、なぜシェフたちは勇んでこのプロジェクトに参加したのでしょうか。

私は、料理を作る仕事それ自体の意味だからだと思います。

この記事を書かれた料理作家の増井千尋氏はこう表現しています。

「彼らの目的は「食料を与える」ことではなく、生死の境目に毎日立たされている人たちに「束の間の安らぎ」を与えることだ。」「料理王国」 2020年6-7月号 P.80 参与)

美味しい料理を通じて一番苦労している人たちを励まし、癒す。お金だけがモチベーションでは決して成り立たない活動です。

フランス語に、連帯を表す 「Solidarité」という言葉があります。人種も宗教も価値観も個人主義の国ですが、(ストライキの時の勢いも凄いのですが…)大変な時に力を合わせる精神が光ります。

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このSolidaritéの精神、コロナ禍でなければ再認識することはなかったかもしれません。

「(何ができるか分からないけど)何かせずにはいられない」

そんな気持ちを教えてくれたこの試練によって、少し先の未来には、私たちはもっと強くなれるかもしれません。