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(冥)短編小説

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2017年6月の記事一覧

【小説】人間ばなな

 お姉ちゃんは人間の形をしていたし人間として問題なく生活していたけれど、その中身はバナナ…

(冥)
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【小説】空気読め

 今年の春に入学した女子中学校のクラスで、私がいつも仲良くしていた友達四人が立て続けに自…

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【小説】アリバイ崩しの長谷川

 刑事暦三十年になる長谷川は〈アリバイ崩しの長谷川〉の異名で知られ、その名のとおり、彼に…

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【小説】蝸牛

 この頃、朝起きると右耳の奥でゴソゴソと音がする。気になるっちゃあ気になるけど、そのほか…

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【小説】舌マフラー

 私は生まれつき舌が長くて、成長するにつれさらに長くなっていって、小学生になるころには口…

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【小説】妹あろえ

 俺には学年でいうと三つ下、小学四年生の妹がいて、ある夜、夕食の席でいきなり両目からアロ…

(冥)
7年前
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【小説】レモンは車に轢かれた

 父は私が生まれた年に会社を辞めて、家の庭をレモン畑にした。それからは母がパートアルバイトで金を稼ぎ、自分は畑に掛かり切りとなった。  父は狂人なのだ。レモンという果物に対して特殊な性癖を持っているのだ。  その奇行を、私は幼少期から度々目にしている。なかでもとりわけ不思議なのは、レモンを車に轢かせるという行為だ。大事に育てたはずのレモンを私の目の前で車道に放り投げ、グシャッと潰れたのを見るや否や満足そうな、あるいは安堵したような表情を浮かべる。私も成長してひととおりの常