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はばたけ、出版企画書!!      ~アイルランド絵本パック・一冊目~

『The Prince of Ireland and the Three Magic Stallions』

アイルランドの昔話型式で描かれた絵本です。
アイルランドの昔話というのは、語り聞かせがベースとしてあるので、語り手によっては同じ話でも細部が異なったりして、とにかくいろんなバージョンがあるのです。
この本は話型がしっかりしていて様々な要素を盛り込みつつも複雑になりすぎず、うまくまとめられています。
アイルランド特有のゲッシュという呪いや巨人が登場し、ケーリーとよばれるダンスパーティのシーンもあったりして、アイルランドならではの一冊となっています。

以下、『The Prince of Ireland and the Three Magic Stallions』の出版企画書です!


「The Prince of Ireland and Three Magic Stallions」 企画書
【原書情報】 
原書名:The Prince of Ireland and Three Magic Stallions
(アイルランドの王子と三頭の魔法の馬)
出版社:Holiday House
刊行日:2003年2月1日
ページ数:32ぺージ
ISBN-10: 0823415732 ISBN-13: 978-0823415731
 
【タイトル案】
王子と魔法の馬 ~アイルランドの昔話~
 
【書籍概要】
(あらすじ)継母に呪いをかけられたアイルランドの王子。呪いをとくには、巨人の所有する魔法の馬を三頭持ち帰らなければならない。二人の義弟とともに目的を果たすために旅に出る。魔法の馬を見つけ出すが、馬は巨人が贈り物として与えない限り、厩舎から出られないという。三人は巨人につかまり、難を逃れるために王子が物語を聞かせる。巨人が赤ん坊だったころ王子が命を助けたということがわかり、巨人から魔法の馬を贈られる。無事に王子と弟たちは魔法の馬を連れて帰り、継母も心を入れ替える。
 
 日本ではまだまだ馴染みの薄いアイルランドですが、独自の文化をもち、伝説や昔話の宝庫でもあります。コーク県ブラーニー城にある、キスをすると口が達者になるといわれる”雄弁の石”に象徴されるように、口頭伝承はアイルランド人を語るうえで欠かせない要素となっています。そのようなアイルランドの昔話も説話集として出版された本がほとんどで、一話のみ、加えて絵本形式の本を探すとなると数多くありません。本書は著者のブライス・ミリガン氏によってアイルランドの昔話の代表的ともいえる物語として再現され、アイルランド語も用いつつ語り部によって語られているかのようにいきいきと描かれています。継母に意地悪をされる王子という設定はめずらしくありませんが、ゲッシュというアイルランド特有の呪いの性質上、かけられたほうも反対にゲッシュをかけて反撃できるという点は稀有で興味深いところです。また、悪役である巨人が物語を聞くのが何よりも好きで、最終的に王子たちの命を救ったのも語り聞かせという点もアイルランドならではでしょう。一見ありふれたヨーロッパの昔話のようでありながら、地元の特色がふんだんに盛り込まれており、アイルランドの魅力を存分に味わえる一冊であると考えます。また、作中にCeili(ケーリー・ダンスパーティーの意)という単語が登場しますが、アイルランドでは現在でも社交の場として日常的に設けられ、人々の生活に深く根付いています。奇しくも私の音楽活動の過程でCeili用のためのダンス音楽CDを作成した経緯があり、QRコードを用いてその音楽を共有するという付加価値もつけられると考えています。ケーリー/ダンスパーティーと聞いてもピンとくる読者は少ないと思われますので、現地の音楽を鑑賞する機会を設けることで本書へのより深い理解につながるのではないでしょうか。ここではサンプルQRコードを作成し、アルバムを試聴できるページへ移動するように設定しました。ぜひ、お試し頂ければと存じます。
 


【対象読者】
対象年齢は小学校中学年以降を想定。

【仕様】
横215mm x 縦263mm。予価1600円、ハードカバー。

【著者プロフィール】
Bryce Milligan(ブライス・ミリガン) 作 
テキサス州ダラス出身。アイルランド系アメリカ人。作家、詩人、フォークシンガー、作詞家、楽器職人、彫刻家とさまざまな顔を持つ。執筆活動も多岐にわたり、詩集、歴史小説、ヤングアダルト向けの短編集、絵本、戯曲、記事、論評などを数多く手がけてきた。特にヤングアダルト分野では1991年にテキサス図書館連盟主催「ローンスター賞」を受賞。刊行された二冊の絵本はどちらもアイルランド昔話の再話形式をとっている。
 
Preston McDaniels (プレストン・マクダニエルズ) 絵
アメリカ、ネブラスカ州在住。長年、印刷会社に勤める経験をもつ。本業としてイラストレーターに転向してからは、シンシア・ライラントの「ライトハウスファミリー」シリーズのイラストや、エドガー賞受賞作家フランシス・オラーク・ドーウェルによるフィニアス・L・マグワイアシリーズの挿絵を担当する。

【訳者プロフィール】
梁池真世(やなちまよ)
東京都出身。アイルランド在住。大学在学中に舞台女優をめざし、演劇養成所に入所。養成所卒業後、1999年に演劇の本場イギリスへ。ロンドンの演劇大学サーカス学科へ進学し、学士号取得。在学中の怪我によりサーカスの道を断念し、帰国。アイリッシュ音楽に興味を抱き、都内でアイリッシュフィドル(バイオリン)のレッスンを受け始める。2007年に渡愛。2009年、リムリック大学大学院伝統音楽演奏科に進学し、首席で卒業。以後、市内のパブでセッションリーダーを務めるかたわら、伝統音楽バンドGIRO-Galway International Retro Orchestraを主宰。韓国在住の知人よりYouTubeチャンネル内の日本語字幕の翻訳を依頼されたのきっかけに翻訳に興味をもつ。以来クラウドソーシング等を介してフリーランス翻訳家として働く。2人の子供をバイリンガルにするべく、絵本の読み聞かせを日々の生きがいにしていたこともあり、2021年より朝日カルチャーセンターの絵本翻訳入門講座を受講し、現在に至る。第28回いたばし国際絵本翻訳大賞にて最終選考まで残る。現在は海外で出版された絵本の中からアイルランドに関連する絵本を選出し翻訳した「アイルランド絵本パック」を作成中。

【類書】
「ジェイミー・オルークとおばけイモ」 
 (トミー・デ・パオラ 作・絵 / 福本友美子 訳 / 光村教育図書/ 定価1500円)
「ジェイミー・オルークとなぞのプーカ」(同上)
「ノックメニーの丘の巨人とおかみさん」
(トミー・デ・パオラ 再話・絵 / 晴海耕平 訳 / 童話館出版 / 定価1500円)
「子どもに語る アイルランドの昔話」
 (渡辺洋子・茨木啓子 編訳 / こぐま社 / 定価1600円)
「世界のむかしばなし絵本シリーズ」(BL出版 / 定価1600円 )
 
「ジェイミー・オルーク」シリーズは本書と同じくアイルランドの昔話の絵本ですが、レプラコーンやプーカといったアイルランドの妖精が登場し、文字数が比較的少なめで絵の割合が多く、未就学児から小学校低学年向けの絵本であるといった点で本書と一線を画しています。「ノックメニーの丘の巨人とおかみさん」も同様にアイルランドの昔話を絵本にした形で、巨人が登場するという点では本書と類似しています。そして巨人を打ち負かす方法も暴力ではなく知恵によるところも似ていますが、巨人対巨人の対決であるところや、対象年齢が本書よりも低いことから差別化を図ることができます。「子どもに語るアイルランドの昔話」は昔話を集めた説話集です。作者あとがきで筋書きの似ている話としてあげられていた「世界のはての井戸」という話が収録されています。王子が継母にゲッシュをかけられ、義弟とともに達成困難な使命を遂行するという筋書きは本書と酷似していますが、より細部が加えられ話も複雑化しています。対象年齢も小学校高学年もしくは中学生以上と本書より高めです。BL出版から刊行されている「世界のむかしばなし絵本シリーズ」は世界各国からの昔話がシリーズ化されたものです。シリーズの大多数が主人公がなんらかの目的を持って旅にでる冒険譚であることは本書と共通している点だと言えます。このシリーズではアイルランドの昔話がふくまれていないので、本書を出版する余地が市場にあるのではないかと考えます。


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