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妄想のカケラ【この世界に一つだけの】

#70 この世界に一つだけの

「賭けに勝ったお前には約束通り
この部屋の中から一つだけ、
選んで持ち去るのを許可しよう」

大魔王は威厳のある
でも少し口惜しそうな表情で言った。

「光栄に存じます。」
私はうやうやしく頭を垂れてしたたかに礼をした。

賭けには勝てたものの
ここで大魔王のプライドを傷つけるのは命取りだ。

大魔王の宝部屋

ここには古今東西
人間の世界・魔界も含めた
世界のあらゆるお宝が集められている。

単なる金銀財宝はもちろん
魔法道具のような人の世界にはないものや
また、伝説とされているようなものもあって…

一夜にして海に沈んだとされる街の古の財宝
古代帝国の王が作らせた黄金の仮面
人魚の涙とされる真珠や妖精の羽
あれはもしかして天女の衣では?
などなど.....

目を奪われるものばかりだったが

「では、この箱を賜りたく....」

私はこの中から目的の小さな箱を見つけ出すと大魔王に許しを請うた。

.......

まだ残っているだろうか?

魔界と人間界の境界まで来たところで箱をゆすって確かめるとコトンと小さな音がした。

ヨシ 大丈夫そうだ!

境界を越え人間の世界に入ると私は箱をあけ
中の者を世界に放った。

小さくて弱々しく光りながら中の者は空へ登っていった。
今は弱々しくても時がきっと大きく育ててくれるだろう。

そして、この世界の混とんを討ち祓ってくれるに違いない

そう、私が持ち帰った箱はパンドラの箱
中に残っていた者は
この世界に一つだけの希望なのだ_

書く習慣アプリのお題「 1つだけ」から #ショートショート


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