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【お題:錦鯉釣る雲】錦鯉の嘆き

 昔、雲がいつものように地上を眺めていた時のこと。
 大きな屋敷の中庭に池がありました。
 そこには一匹の錦鯉が泣いていました。
「どうしてそんなに悲しそうなの? 君はこんな優雅で自由気ままな暮らしをしているのに」
 雲がそう言うと、錦鯉は頭を振って「あなたほどではないわ。自由といっても所詮、岩に囲まれた範囲での生涯。
 あなたが羨ましいわ。どこまでも続く空をずっと泳いでいけるんですもの」
 錦鯉はそう言ってハラリと泣きました。
 雲は錦鯉を憐れみ、自分の身体から細長い糸を彼女の前に垂らしました。
「これを口に咥えて! 一緒に空を泳ごう!」
 雲の誘いに錦鯉は喜んで従いました。
 が、突然力強い風が吹きました。
 雲は攫われたかのように飛んで行き、錦鯉もその風の餌食になり、綺麗な鱗が剥がれてしまいました。
 鯉と同じ色になった錦鯉はご主人に棄てられ、大きな公園の庭で暮らす事になりました。
 それが後の人面魚。

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