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私の英語多読遍歴110:Into the Wild

アメリカ在住の方が「面白い!」とツイッターで言っていた本がセールになっていたので挑戦。

アラスカの廃棄されたバスの中で見つかった青年の死体。人は彼を無謀な冒険者だと非難したが、著者はなぜ裕福な家で高等教育も受けて育った若者が大自然に魅せられていったかに興味をもち、丁寧な取材や調査を通して青年の生い立ちや冒険へと魅せられていった過程などを浮き彫りにしていく。

これは実際にあった事件のルポタージュで、1992年にアラスカの大地に廃棄されていたバスから青年の遺体が見つかるところから話は始まります。旅行に行くと家を出てから数年間、ヒッチハイクや短期労働を繰り返しながら最終目的であるアラスカに向かっていく青年の足取りを追い、その時々で関わった人々のインタビューなどを通して彼の人となりを説明し、よくいる無謀な若者とどう違うのかなど、淡々と考察が行われます。

また、なぜ彼が大自然に惹かれていったのかについては家族との関係、学校生活などこれもまた家族や友人たちへのインタビューを通し様々な検証を行なっています。同時に過去の似たケース、無謀な冒険に出た末に姿を消した青年や危険な目に遭いながらも冒険をやめない人たちについても書かれていて、決してこれが特異な話ではなく、一部の人はどういうわけか危険を冒して大自然に向かっていくのだと結論づけていました。ここに共通点として親からのプレッシャーがあったのは興味深いところです。

著者自身、若い頃にアラスカの大自然に憧れ、無謀と言われた氷壁の頂上に登るという冒険をしたことがあり、その時の様子が詳細に語られている章もあります。けして冒険を推奨する内容ではなく、彼曰く、自分とアラスカで死んだ青年の違いは運だけだと言っています。

ノンフィクションは普段ほとんど読まないのですが、ショッキングな冒頭から始まりまるでミステリーを解くように足取りを追っていく過程はまさに”興味深い”という感じで面白かったです。巻末に記載されていた追記が、この本の初版発行後にさらに追加調査でわかった青年の本当の死因についてなのですが、これもまた生物学的ミステリーの解読のようで専門用語はさておき面白いなと思えました。これは著者の書き方がうまいということでしょうね。

問題は、青年がアメリカの各地を転々とするところなど土地勘がぜんぜんないので地名を聞いてもピンとこない、なんなら地名なのか人名なのかしばらくわからなかったこと、また登山や冒険にはとんと縁がなくまた関連の本も読んだことがなかったので、用語がさっぱりだったことです。それ以外の単語も見たことないものがかなりの数あって、やっぱりふわふわしたロマンスやファンタジーばかり読んでいるとこういうタフな話は厳しいなと改めて思いました。ほとんど調べず飛ばして読んだので解像度は低めです。もしかしたらここに書いた内容すら間違っているかも。。

こういう無謀の果ての死、日本だと「迷惑」論で燃えそうです。家族がインタビューでご迷惑をかけましたと謝罪させられそう。当時の批判は青年がちゃんと準備していなかったことに対する批判が多く、アラスカ馬鹿にすんなとかそういう内容が多かったようです。国民性の違いでしょうか。

この本は青年に対する非難ではなく、あくまで彼が冒険に出たいと思った事実を認め、その気持ちはわかるとした上でなぜアラスカ、なぜそこで死んだという謎を解き明かすという目的での調査だったのでそれも面白く読めた一因かもしれません。

英語的になかなかチャレンジングではありますが、大雑把に飛ばしても大体内容はわかるので、興味があればぜひ。ボリュームは小説より全然少ないのでよかったら読んでみてください。

以上「Into the Wild」でした。

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