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置かれた場所で咲かなくていい

千葉にあるBamboo forest というグランピング施設に一泊してきた。

サユリワールドという動物が放し飼いされる動物園の敷地内(隣?)にある、竹藪の中の巨大なテントが6つほどあり、テント内はリゾートホテルさながらの快適空間。

車で5分ほどのところには、市原ぞうの国というゾウが8〜10頭も見られる動物園もある。

サユリワールドではキリンや、その辺を歩いてるカンガルー、カピバラ、クジャク、鹿などにエサを与えられる。


人間より愛想のいいゾウ
額にコブがあるので、オスのキリン

ぞうの国も同様に、小さいバケツ1つ500円のエサを購入すれば動物たちに食べさせられる。

動物園も良かったのだが、とにかくグランピング施設が気持ちよかった。

今の季節だと、竹の中なので日が当たらず肌寒くはあるが、マイナスイオンが大量放出される空間であったかいコーヒーを飲んで読書するというセレブ体験!


生えてる筍をBBQにしたら怒られるのかな? という疑問がわく

毎日こんな場所で本を読んだり、創作したり出来たら最高だなぁ〜! とそういう未来を先取りしていい気分に浸る。ひたすらいい気分になるように修行僧のように精神統一していた。

ここでふと気づいた。
子どもの頃は、自分で選んでないのに惨めな思いをすることや、ぜんぜん体験したくないマイナスの感情を引き起こすイベントがよく起きていた。

でも大人になってからは、自分からそういうイヤなことからぜんぶ離れられているな、と。

つまり、子ども時代は、親の影響をモロにかぶるので親が意図的にそういうものから離れようとしてくれない限り、子どもも一蓮托生で同じ目に遭う。

歳をとるのは嫌な面もあるけれど、子ども時代の不自由な環境に比べたらダンゼン今の方がいい。

囲いの中に居て、選択肢がほとんどない環境なら、耐える他ないけれど、その囲いから逃げて別の楽園を探しに開拓者となれれば、自分が抱く感情は自分で選べるのだ。

その場に合わなくても他に行ったら上手くいく、なんてことよくある。

私も新卒で入った出版社はぜんぜん合わなくて、毎日死ぬほど怒られていた。というか、普通に

「その窓から飛び降りて死んだら?」とか目の前で言われたり、

「あいつ、本当に使えない。やる気あんのか」
などとついたて越しに私がいるのを知らずに大声で先輩たちが談笑したりする環境だった。

あれは今思えばパワハラだが、自分が悪いと思っていたので泣きながら仕事していた。

誰よりも朝早く会社へ行き、誰よりも遅くまで会社にいて、休みは年末だけ。眠すぎて会社のトイレの個室の床に横たわって仮眠を取っていた。

徹夜明けは、撮影に使う道具をしまってるスペースで、緩衝材を床に敷いて寝た。そこは、ゴミダメのようだった。

モノを扱う雑誌の編集部だったこともあり、こんまりもびっくりの物量で、「いつか撮影で使うかも」的な感じで、なんでもかんでも取っておくから、2畳ほどのスペースに絶妙なバランスでモノがジェンガのように積み上がっていた。

モノに囲まれながら横たわり「地震が来たらここで死ぬのか……やだ……なぁ……スヤァ」

みたいなことをよく思ってた。

ARMANIの靴を買うために消費者金融からお金を借りて、その後もひたすら買い物しまくって、ついには闇金にまだ手を出そうとしてた先輩がいた。

センスは抜群だが、金銭感覚が狂っていたし、人間としての何かも、溢れるものと一緒にどこかに置き去りにされた感じの人であった。

この先輩が、実家から送られてくるものをこの保管スペースに持ち込むのだ。
よく送られてきたのはマムシドリンク。本人含めて誰も飲まないのでダンボールごと残っていた。

まだこれは瓶だからいい。
ある時、超絶立派な深谷ネギ5kg相当が、保管スペースでなんとも清々しい爽やかな空気をかもしていた。

青々とし、ピンっと背伸びするように真っ直ぐ伸びたネギ。
極太にミチミチとした胴体は、水分と養分をたっぷり含んでいる。

どう考えても、彼らの居場所は、ここではない。
誰にも求められていない、けれども1本300円はしそうな立派なネギ。

この新鮮なネギは、自信に満ち溢れ、鮮度の高い香りをバンバン放出する。
日が経つごとに、自分の存在感を示すかのようにネギ臭が充満する。※荷物が多すぎて、開かずの窓となっており、ネギが空気を支配する。

もちろん、誰も持って行かない。
持ち込んだ本人も我関せず。
これは、立派な不法投棄である。道端や山中なら犯罪だが、ここでは無罪放免!
捨てたもの勝ち。先進国とは思えない、ずさんな管理!

ある日、やっぱりその保管スペースで寝なくてはならず、疲れすぎて倒れ込むように横になった。

眠い、眠い……けど…………ネギ!!!

私の鼻先をくすぐるネギ。
風に乗って、絡みつく、ネギ臭。

しかし、ネギをどかす力は残念ながら持ち合わせていない。
仕方なく、私はネギと添い寝した。

人生で初めて、ネギと寝た。

刺激的な一夜であった。

ネギだって、いるべき場所を間違えると迷惑モノのゴミ扱いをされるのだ。

もし、これがザ・ガーデン自由が丘に置かれていたら、めちゃくちゃ喜ばれているし、調理されて人の体に取り込まれて栄養になるという本領発揮し、役に立つわけだ。

ネギがそうなら、人間ならなおさらだ。
間違った場所にいてはいけない。

私はこの日を境に、転職活動を始め、別の職場へ移った。


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