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群青

わたしが少女と呼ばれてたとき
目を上げると青が広がり
しぱしぱと沁みるようだった
部屋はあたたかくて
空気は静かで
私は天国にいると思っていた

わたしが少女と呼ばれてたとき
手の中で妹が泣き叫んで
泣くほど身体は汗ばんだ
涙と汗とでTシャツが濡れて
わたしのどこかもぐちょぐちょだった

わたしが少女と呼ばれてたとき
台所にはビールの空き缶
血だらけのシンク
零れる薬包
アスファルトを必死に走った

わたしが少女と呼ばれてたとき
両手には小さな妹
背後には血だらけの母
外は沁みるほど青くて
胸が苦しくて捩れた

わたしが少女と呼ばれてたとき
幸せになれますように
幸せになりますように
2人を守ろうと、そう願った

青い空
あたたかい部屋
静かな空気
幸せな未来
小さな天国は、いつもすぐそばにあった

わたしは少女だったから
そんなものに縋って、わたしは生きた

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「わたしが一番きれいだったとき」の朗読を聴いて。
茨木のりこ先生に経緯を。

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