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蟹とケ・セラ・セラ

明けまして、おめでとうございます。

お正月、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

私のお家は、甲殻類大好きパートナー父のおかげ様でロブスター&蟹の食べ放題…いや、別に食べ放題ではないんですが、元々何でも沢山オーダーする太っ腹感が台湾の方々の良さ!年末年始はご馳走が溢れています。

実父も蟹が大好きで、行く先々で蟹を見つけては母に「蟹、買う?」と聞いていた思い出。

そんな毎日、蟹、食べたくない&「家計」って知ってるか?というのが母の思い…

そんな蟹に囲まれて育った私は、「蟹美味しいけど、剥くのが面倒…お父さん?(代わりにやって)」という娘だった。末っ子長女な私に、父は昔から大甘だったなぁ。

そして、パートナーも同じような事を言っている。「美味しいが面倒」=共通の価値観である。

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そういえば、殻剥きについて、ちょっと面白いエピソードがある。

昔、パートナーとデートでエビ料理を食べた時のこと。「これ、食べてて」と違うお皿を勧められ、気付いたら彼がエビの殻を全部剥いて、私のお取り皿に置いてくれたのだ。そこで二度目の恋に落ちる私。めっちゃ優しいやん!とトキメキながら、いやぁ、エビの殻を剥いてくれる方がこの世にはいるんだなぁ~、と思っていたら

台湾の男性はそうするらしい。台湾男性とお付き合いまたは、結婚された方々が同じようなエピソードを披露していた。

う、うん、別にいいのよ、私だけじゃなかった、だなんて思わない、剥いてくれたら嬉しいじゃない、特別感、まだある、…なんて乙女心を揺さぶられたりもした。我ながら面倒くさい女である。

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さて、カナダではサンクスギビング&クリスマスが家族や親戚と集まる祝日。年末年始は結構さっぱりしてて、大晦日にパーティー&花火ドーン!!って感じなだけで、わりかしすぐに日常に戻っていく。

大晦日の朝に歯医者さんの定期健診の予約を入れていたパートナー、というと「カナダ市民にとっての大晦日の大した事なさ」が分かって頂けるだろう。そもそも大晦日も開いているなんて…日本って閉まってますよね?あれ、開いてる?段々、開いているような気もして来た…

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クリスマスの時は、何とも思わなかったが、年末にやたら「家族に会いたい…」という思いが強くなっていた私。やっぱり「年末年始は家族の時間」というのが日本人の心…私は日本人なのだな~、と面白かった。

両親に最後に会ったのは二年前の夏。

去年、両親は夏にカナダを訪れようと計画していたらしい。

国内外をしょっちゅう出張していた父に対し、母はついこないだまでパスポートも持っていなかった。そんな母も行きたい国はあって「映画サウンドオブミュージックのアルプスをハイキングしたい」「ピラミッドをこの目で見てみたい」と私に話していた。娘がカナダに住んでいるけれど、パスポートを取る気配すら無かった、そんな母がパスポートを取得したきっかけは

「友達とハワイ」

だった。友達に負ける娘。ハワイに負けるカナダ。(それは分かる、ハワイいいよね、行った事ないけど)

ジムで仲良くなった友達と計画したのだ。「ジムで!仲良くなった!友達!」そもそもそれが、母が、めっちゃ外交的でビビる。彼女らジムを学校のような感じで利用している。お昼に食べる用におにぎり持って行ったり(え?)、ランチによく行く行きつけのお店があったり。ほぼ学校。毎日登校してるし。

友人の女性にもお会いした事があるが、とても素敵な方だった。二年前の一時帰国の際に、一度その行きつけのお店で3人でランチをした。母親の友人とランチってあんま無い機会だし、母の知らない一面を知れたり、とても楽しかった。

そのハワイ旅行は、もう一人の友人がホノルルマラソンに出場するから、それの応援がてら遊びに行こう、というものだった。

完全プライベート旅だったのでちょっと心配もあったようだが、ランナーの友人はハワイ常連らしく、ガーリックシュリンプを食べたり、ジムのフラダンスクラスで着るスカートを買ったりと、かなり満喫した様子。そして何より「英語なんて一回も喋らなかった!」と嘘か本当か分からない事まで教えてくれた。へぇ。

そんな母と同じく割と友好的なタイプの父。彼も定年後テニススクールに通い出したり割と忙しくしている。両親、いつカナダを訪れることが出来るのか…父は特にナイアガラの滝に行きたいらしく、かくいう私はビザの都合もあって(アメリカとの国境がある)もう6回くらい行ったことあるから、観光は任せて!といった感じ。

あぁ、話が大分逸れてしまった…

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そう、そんな両親に会いたいな~、と大晦日に近づくうちに、その思いは強くなっていった。

大晦日、時差があるのでトロントの朝10時に、日本は一足早く2021年になる。

一昨年、母は深夜まで起きていなかったというので、大晦日の午前中に連絡しようと、こちら時間の30日夜にラインで問いかけた。

私「おはよう、今、空いてる?電話しない?」

父「今、母は新聞読んでる」

…邪魔するな、という事だな…オケ。でも少し時間遅くなると「おせち作ってて忙しい」ともっと邪険に扱われるやつだ。

私「ひと段落したら電話して」

と言ってから約30分。OKサインをもらい、電話開始。

電話で話すのは、母の日以来。うちの家族はそこんとこ、ちょっと淡白め。海外組のTwitter等で見る「実家からサプライズ段ボールが届きました♡」みたいなのは皆無。トロント、割とお金を出せば日本の物なんでも買えるからいいんですけどね。

でも、実は母の日に電話をした時、ロックダウンで参っていた心もあり、電話の途中で泣いてしまった。泣いた自分に驚いて、一旦切って「電波が悪かったみたい」と言って誤魔化した。

そんな事もあり+今回もホームシック気味で「絶対泣いちゃうなぁ」と思っていた。連絡を待つ約30分間、意識を集中して事前に泣いておいた。

電話は母から。「最近のジムは人数制限が掛かっているから、2週間前の深夜12時にオンライン予約が必要。予約の為に2日続けて深夜まで起きていたら、具合悪くなりかけた。元気になる為にジムに行くのに、これはなんか違うな、って父と笑った」という話を聞いた。そのうちに「あ、ゴボウが茹ったからちょっと待ってて」とか言われたり

そんな話を聞いているうちに、涙が溢れて来てしまった。

「あなた、泣いてる?」

私がコメント出来ないでいると、母は言った。

「自分で選んでそっちに行ったんでしょ。何泣いてんのよ」

ごもっとも。そして彼女は続けて言った。

「ケ・セラセラって言葉知ってる?なるようにしかならないのよ」

け…せらせら…方言?知らない…なんとなく聞いた事もあるような気がするけれど…

そうしているうちに、私は落ち着き、また少し母と話し、その後父と交代した。父は「ビデオ通話にしたい?」といつも私が”顔を見たい”、と言うので気を利かせてくれたが、もう泣きっ面が酷かったので「今日は大丈夫」と言った。父は「カウントダウン、自分は起きているから、もし君が朝早起きしたらまた電話かメールしよう」と言った。

たった10分程の電話を終え、私は早速「ケセラセラ」をGoogleに打ち込んだ。どこか日本の方言だと思っていたのは「Que Sera, Sera」だった。スペイン語?かとも思ったが、文法的にスペイン語ではないらしく、オンライン上に「スペイン語、フランス語、イタリア語だと思う人も多いが、違う。デタラメ語」とあった。

元は映画の主題歌だったよう。日本語だと、このサイトが分かりやすかった。

そして、歌を聞く。

めっちゃ良い曲。英語が分かって良かったな、と思う、嬉しい時はこういう時。

歌詞が歌詞のまま心に響く。

Whatever will be will be

この曲を聞き終わる時にはまた、大号泣していた。

パートナーにも聞かせ、すぐに覚えた彼に鼻歌を歌われただけでポロリ。

母親に言われたことを彼に話すと「お前の母ちゃん、最高じゃん」と大爆笑。そうやねん、私の母ちゃん最高なんよ。ビッグハグで迎える彼とその瞬間をしんみり過ごしていると、住んでいる建物の火災報知器が鳴った。

いや、なんでやねん。空気読め。今、いいとこやねん!

と、カナダの火災報知器はすーぐ鳴る事で有名…?なので、またそれはほぼ誤報だったりするのだけれど、私たちはそのタイミングに大爆笑で、火災報知器にその場を救われた感があった。

後日、母に「彼が”お前の母ちゃん最高”ってウケてたよ」とメールすると

「成るように成る!ありがとう♬幸せな時間を大切に生きてくださいね」

と返って来た。いやぁ、私の母ちゃんやっぱり最高…

これからどんな人生になっても、なるようになる、年越しにその言葉を聞けて良かったな、と思いました。

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