育児のおやすみ③ 育児休業は取れる人とれない人がいる
前回の産後休業に続き、産後休業のあとに取れるおやすみ、育児休業について見てみましょう。
1.育児休業の目的とは?
産前産後休業は、労働基準法という法律で決まっているおやすみでした。
目的は、母体の保護。
したがって、そのおやすみの間にもらえるお金は出産手当金という、健康保険から出るものでした。
健康保険から出るものなので、健康保険に加入している人のみが対象です。
一方、育児休業は、別の法律で決められています。
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」というのが正式名称ですが、長いので、「育児・介護休業法」と略されたりします。
法律はたいがい、冒頭の第1条にその法律がなんのためにできたのか、「目的」が記されています。
「育児・介護休業法」の目的は、このようになっています。
ポイントは、以下のとおりです。
1.対象者
子の養育及び家族の介護を行なう労働者
2.目的
職業生活と家庭生活との両立に寄与する
3.行うこと
①養育や介護を容易にするため所定労働時間について会社側がすべきことを定める
② 対象の労働者を支援する
③ 対象の労働者が引き続き働けるよう、また、再就職できるようにする
目的は、仕事と、子育てまたは介護の両立なので、産前産後とはかなり方向性が違います。
つまり、産前産後のおやすみは、母体保護のため、つまりはすべての女性労働者を対象として、会社側に働かせてはならない期間を設けるものでしたが、育児・介護休業法は、働くこと前提で、いかに両立するかがポイントになっているのです。
つまり、育児休業も、おやすみではあるけれど、「働き続ける」ことが前提になります。
そのため、労働者のなかには、条件にあてはまらず育児休業がとれないひともいます。
2.育児休業がとれないケース①
育児・介護休業法では、「育児休業の申し出」を以下のように定めていますが、
「期間を定めて雇用される者にあっては、その養育する子が一歳六ヶ月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り」
と、ただし書きがついています。
これはどういう意味かというと、育児休業をとった場合、育児休業中にいまの雇用契約で終わりだということがはっきりしている場合は、働き続ける見込みがないので、そもそも育児休業の対象外だということです。
たとえば、今年の1/1にうまれた子がいた場合、その子が1歳6ヶ月になるのは、来年の5/31です。
ですが、そのひとの雇用契約書を見ると、契約期間が今年の3/31で、「契約更新しない」と明記されていたとする。
このケースは、育児休業がとれないことになります。
ですが、雇用契約書の期間が今年の3/31でも、そこに、「契約を更新する見込みがある」となっていれば、OKですのでご安心を。
労働契約が満了する=終わることが明らかでない者、なので、そういうことになります。
3.育児休業がとれないケース②
また、育児休業がとれないケースには、以下のような場合もあります。
会社が、育児休業をとれるひとを限定する場合です。
法律にはこうあります。
1.事業主は、労働者から育児休業の申出があったときには、拒むことができない。
2.ただし、雇用された期間が1年に満たない労働者からの申出は拒むことができる
3.ただし、育児休業をすることができないとする合理的な理由があると認められる労働者については、拒むことができる
2の理由は、さきほどの「働き続けるためのサポート」という目的からわかると思います。
すでにある程度働き続けている実績がないと、「続ける」ということの重みが違うからです。
では、3はどのような状況でしょう?
「厚生労働省令」には、こうあります。
つまり、1週間に働く日が2日より少ない労働者は、「休業」にしなくても仕事と両立して働くことができますよね、ということです。
まとめると、こういうことです。
1.育児休業中に確実に雇用契約が終わる場合
(対象:全員)
2.入社して1年以内に育児休業開始する場合
(対象:会社と労働者の代表が合意している場合)
3.1週間に働く日数が2日以下の契約で働いている場合
(対象:会社と労働者の代表が合意している場合)
この2と3は、会社が、労働者の代表(労働組合がある場合は労働組合)と合意している場合においてですので、全員ではありません。
育児休業のニュースはたくさん見ますが、とれないひともいる、ということはあまり触れられていません。
転職したばかりのひと、短い日数で働いているひとは、一度会社の就業規則を確認してみましょう。
4.育児休業がとれないケース③
みっつめの育児休業がとれないケースは、最近だんだん増えているかもしれません。
育児をする本人が、社長だったり、個人事業主だったりするケースです。
育児休業は、仕事と育児を両立して働きつづけることができるようにするためのもので、対象を労働者としています。
つまり、社長や個人事業主は、だれかに雇われているわけではないので、解雇されることもないし、自分で両立の調整できるでしょう?ということ。
とはいえ、社長はともかくフリーランスの個人事業主は、フリーランス保護法が検討されているとおり、そんな自分で自由に仕事を決められるひとばかりではありません。
このあたりは、ぜひ、対象を考えなおしてほしいものです。
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