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旅はいつも自分の中に | 短編旅エッセイ

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居心地のいいカフェで、賑やかな列車で、歌声と太鼓の音が響き渡る宿の中庭で。旅先でそっとノートを開き、今の気持ちを書き留めるようにペンを走らせる。旅は自由だ。そしていつも自分の中に… もっと読む
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バラナシで見た、目の前で人間が焼かれて骨が軋む音。

コルカタから夜行の寝台列車に揺られて20時間。 エアコンが効きすぎて、完全に冷え切った車内で目を覚ました。 今はどの辺だろうとカーテンを開けて窓の外を眺めていると、電車が少し止まり、私よりも若い少年が熱々のチャイを売りにやってくる。そしてまた電車はゆっくりと動き出す。 前日に泊まったコルカタの宿で予約してもらったバラナシまでの列車。 「安く済ませたいから3等でいいよ」と言ったけど、宿のおじさんは「2等にしときなさい。」としきりいう。値段は結構違ったけど、そこまで言うなら

以外とカジュアルなタイのお坊さん。

タイでお坊さんはすごく身分が高い。 女性はお坊さんに触れてはいけないし、お坊さんがきたら道や席を譲る。 空港にはお坊さん専用レーンなんてものもある。 町ではお坊さんの絵が売られ、自分が尊敬しているお坊さんの写真や人形を飾っている家庭も多く、お坊さんネックレスをつけてる人も多い。 それくらいタイではお坊さんは大切な存在である。 でも実際は、短期出家のお坊さんが非常に多いらしい。 短期出家とは、生涯の中で徳を積むために"一時的"に出家をすることで、タイの若い男性はよく親

「おはよう」から「おやすみ」まで夢の中

ゆらゆら揺れる、白いレースのカーテンの隙間から、暖かい陽の光がキラキラさして目を覚ました。 「あぁ、昨日は風が気持ちよかったから窓を開けたまま寝たんだっけ。」 寝ぼけながらも、東南アジア特有の南国の鳥の声がしてここが異国の国だということを思い出す。 窓を開けてバルコニーに出ると、目の前は一面ヤシの木で向こうの方に大きな川が見える。ぽけ〜と目をこすりながら眺めていると、バルコニーの下から部屋のオーナーさんが声をかけてくれた。 「Good morning Maya! Di

きっとこんな時間は永遠じゃないから【モロッコ・マラケシュ】

現在地はモロッコのマラケシュ。 すっかり車社会になった現代でも、入り組んだ細い道が続く旧市街の中では 馬やロバが人や荷物を乗せて走っている。 スパイスの香りが漂う迷路のような路地には、まるでアラビアンナイトのようなランプ、絨毯、革靴、食器やアンティークな雑貨を売る商店が所狭しに並び、朝から晩まで活気に満ちている。 夕暮れごろになると広場はさらに賑わい、露店に屋台、あちこちで蛇使いや猿使い、民族ダンスなど様々なパフォーマンスを始める人で溢れ、それを囲むように大きな人だかりが

火薬の匂いと太鼓の音が響き渡る、深夜のバスターミナル【トルコ・ブルサ】

トルコの古都ブルサで3日間の滞在を終えて、パムッカレのあるデニズリに向かうため、夜のバスターミナルで時間を潰していた。 深夜0:00発のバスだったため、暇つぶしに仕事でもしようかなとカフェでカタカタしていたら、外がなにやら騒がしい。 スポーツでも歓声しているかのような大勢の男の人の叫び声と、どんどんっと響く大きな太鼓の音。 音がする方へ目を向けてみると、ターミナルの外に大きな人だかりができていた。 喧嘩してるのか盛り上がっているのかよくわからなかったけど、色がついた煙や