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「おはよう」から「おやすみ」まで夢の中

ゆらゆら揺れる、白いレースのカーテンの隙間から、暖かい陽の光がキラキラさして目を覚ました。

「あぁ、昨日は風が気持ちよかったから窓を開けたまま寝たんだっけ。」

寝ぼけながらも、東南アジア特有の南国の鳥の声がしてここが異国の国だということを思い出す。

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窓を開けてバルコニーに出ると、目の前は一面ヤシの木で向こうの方に大きな川が見える。ぽけ〜と目をこすりながら眺めていると、バルコニーの下から部屋のオーナーさんが声をかけてくれた。

「Good morning Maya! Did you sleep well?」
「うん!」と返事して、パジャマ姿のままビーチサンダルを履いてダイニングに朝ごはんを食べに行く。

すでにテーブルの上に用意された朝ごはん。ナンプラーをかけていただくシンプルなお粥と、マンゴーにパパイヤ、メロン、オレンジとフルーツの盛り合わせ。

おかゆは少量の塩と、上にぱらっとかけたオニオンフライ、お好みでたらすナンプラーだけのシンプルな味付けで、まだ目覚めてないお腹にはぴったりの優しい味。

朝食もそこそこに、軽く着替えて朝のマーケットをぷらぷら。

マーケットは人々の生活が見えるから好き。
孫を連れて朝ごはんを食べに来たおじいちゃん、朝から元気に働く市場のおばさん、学校前にお昼ご飯を買って行く学生、赤ちゃんを抱っこして野菜をいっぱい買う女性。

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私も甘さ控えめのコーヒーを買って帰り、部屋でカタカタお仕事。
疲れたらバルコニーに出て太陽を浴びて、またカタカタ。

こんな生活も最初は不思議だったけど、何年もやってると、もう当たり前のものになってきてしまった。


東京で働いてた私は、朝7時に家を出て2時間の通勤電車に乗り終電まで働く日々を送っていたけれど、時々全部投げ出したくなる時があって、そんな時は自分に「周りもやってるから当たり前」「もっと大変な人はいるでしょ?」そんな風に言い聞かせていた。

だけどある日、仕事の途中に涙が止まらなくなった日があって、自分の心の限界に気がつき、しばしお暇をいただこうと仕事を辞めた。

その後はフリーランスになって、細々とだけどいろんな場所を旅しながら仕事を続けている。



お昼過ぎくらいに、部屋をコンコンとノックされる。
「Do you want tea?」
「お茶休憩しましょ」と部屋のオーナーさんが甘い紅茶を持って来てくれた。

暑い時は絶対冷たいコーヒー!って思ってたけど、この生活を始めてから暑くても暖かい飲み物が飲めるようになった。大人って感じ。笑

東南アジアの人々は、働き者で朝も早いけど、こうやってお茶を飲みながらみんなでおしゃべりする時間も大切にしている。言葉のわからない私にも色々聞いてくれて、ジェスチャーでやりとりして大笑いする。多分みんな、何に笑ってるかはよくわかってないけど、とても楽しい。



1時間くらいいい息抜きをした後は、リュックにパソコンを入れて、街へ出てちょっと散歩。おしゃれしてカメラを構えた観光客の中を、手ぶらで通り過ぎて行く。

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ぷらぷら適当に歩いたら、家の近所のお気に入りのカフェに行って、カフェラテを頼む。日によってコーヒーだったり、フルーツジュースだったり色々。場所を変えるといい気分転換になって、煮詰まってたアイデアも湧いてくる。旅先でお気に入りのカフェを2〜3件見つけられたら私的には十分。


そろそろ暗くなって来たかなっていうくらいでカフェを出て、川辺を歩く。
日が沈むのをぽけ〜と眺め、屋台で軽食を買って塀に座って食べながら何を考えるわけでもなく思考を巡らす。仕事のことだったり、人生のことだったりいろいろ。

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そのうちに町は徐々にライトアップして、夜の賑わい。
朝は朝のマーケット、夜は夜のマーケットでメインストリートにはたくさんの人が行き交う。元気な日はマーケットを通り抜けながら帰り、疲れた日は、その横の下町感漂うストリートを通って家路につく。

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どこからか笛と太鼓のような音が聞こえて、「あぁ、あのお家は今日いいことがあったのかな」と私も少し嬉しい気持ちになる。同時に少し涼しくなった風が心地いい。


特に特別なことはないような気がする暮らしだけど、その中に尊いものがたくさんあって。そんな旅暮らし生活は夢の中をふわふわ生きているような暮らしだなと私は思う。


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