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理系学生集まれ〜!初心者向け 論文輪読のやり方ガイド(1/2)

みなさんこんにちは。現役理系女子大学院生のてりんです。
もういい歳した女だけど現役ってつけるとなんか若そうな気がします。

今回は理系学生なら必ずお付き合いのある「論文輪読」についてです。

意外と論文輪読のやり方って誰も教えてくれなくて自己流でやっていることが多いのではないでしょうか。出来がよくないのに誰も指摘してくれずに改善されないことが多いように思います。
そこで、論文の選び方、読み方からスライド作りまで、一連の流れとして、初心者ならどうやるべきかを解説していきます!

なお初めにお断りしておきますが、てりんは物理〜工学の実験系の修士学生のため、知識ややり方がそちらに偏っております。
情報系や生物、化学系等では当てはまらない場合があると思います。その際はDM等いただけると嬉しいです!

1. 論文輪読とは?

論文輪読、論文輪講、雑誌紹介、Paper Reading、、分野や研究室によって様々な呼び方があるでしょう。本記事では「論文輪読」に統一したいと思います。

論文輪読を、
「学生が論文を選び、その内容を研究室内のミーティングで発表する」

このような形で行なっているところが多いのではないでしょうか。
これは形式ですのでまずは論文輪読の目的について考えてみましょう。

スライド1

論文輪読の目的は、
「学生が持ち回りで論文を精読し、その発表を通じて研究室全体の分野への理解度を向上させること」

であると思います。
各発表時には主に登場人物が3パターン存在するので、それぞれの目的とやりとりについて少し分解能を上げて表してみました。

全体としては、発表者が順を追って発表し気になる点を質問し回答するといういわゆる議論を行います。

特徴的な点は、教授陣は単純な質問だけではなく、発表に至らない点を見つけたときその箇所を本当に理解しているのかを確認するため教育的な意味で質問する点です。
理解していたが発表に入れ込まなかった場合はそれが必要な情報だったことを発表者は気付かされますし、聴講者も研究における重要な視点を知ることになります。発表者が理解しきれていない場合は教授陣がその場で教えてくれます。

また他学生ももちろん聞いているだけではなく、単純に理解できなかった点やもう少し知りたいことについて質問することが求められます。
教授陣は発表の速度について行けますが学生の理解はスムーズには行かないはずなので、ときどきストップさせながら議論を重ねることで研究室全体の理解度をさらに深めることができ、良い輪講になります。

2. 論文の選び方

論文輪講では論文の選び方から重要です。

前章の目的の中で、「分野に対する理解を深める」を達成でき、かつ議論が盛り上がる見込みのある "良い論文" は実は多くはありません。
輪読の題材として必要な要素を分解してみます。

【前提】研究室に関連する分野であること
・研究の結果が出ており、それが分野の進展に寄与する結果であること
・参考になる実験手法や解析を行なっていること

特に研究室に配属されてすぐの学生は、分野についての理解が深まっていませんから何が面白い研究テーマかもわからないと思います。

そこで、初学者がとるべきアクションパターンを紹介します。

1. 分野に関連するワークショップの資料を検索する

どのような分野でも、各研究室が独立して研究をすることはないでしょう。
様々な研究会や勉強会が定期的に開催されているはずです。またその時の資料が公開されていることも多いです。

このような勉強会の資料は大変有用です。
その分野におけるこれまでの発展の歴史に加え、現在ホットなテーマについて議論し、どのような研究をどこが行なっているかをまとめてくれています。特に研究背景、モチベーションについて簡潔にまとめてあることが多いのでぜひたくさん検索して読んでみましょう。

リサーチをもとに自分なりにいくつかのテーマをピックアップしてまとめてみましょう。
研究室に近いテーマのうち、自分の興味のあるテーマや今熱いテーマを決め、それについてより情報を探します。そして面白さ、最近の研究結果、今後の展望を簡単にまとめ、題材にできそうな論文を探します。

2. 先輩、スタッフ、教授に相談する

初学者が"面白い論文"を自力で見つけ出すことは極めて困難です。
わからないことは先人に聞くのが一番です。

 1. のアクションを通して興味のある論文や研究がいくつか見つかった場合

先人にこのテーマのどういうところに興味があるかを説明した上で、
選んだ論文が題材とするのがふさわしいかどうかを聞いてみましょう。

 1. のアクションを通して、興味のあるテーマが見つかったが論文が見つかっていない場合

先人に、どのテーマになぜ興味があるかと、論文までたどり着いていない旨を伝えましょう。
いい研究や論文が出ている場合、一緒に検索したり紹介したりしてもらいましょう。いい論文が見つからない場合は、それに近いテーマとおすすめ論文を提案してもらいましょう。

 1. のアクションがそもそもうまくできなかった場合

最初はこういうこともあると思います。
先人は参考になる資料やサイト等をたくさん知っています。
どのように勉強して論文を探せばいいか、その方法を尋ねてみましょう。

3. 精読のやり方

論文を選ぶことができたらいよいよ精読です。
プロセスを簡単に記載します。

1. 選んだ論文を最初から最後まで通読する
2. 図表の意味を全て理解しミソを抑える
3. 必要な引用文献を参照し論文の内容について理解を深める
4. 研究背景を理解する
5. 結果の解釈と今後の展望について調べる

実際には、1と2を終えてからは発表資料作りと並行して進めることにはなると思います。次章で紹介する発表資料をどのように作成するかを少し意識しながら精読を進めるとやりやすいと思います。

精読について1つずつ解説していきます。

1. 選んだ論文を最初から最後まで通読する

そのままです。しかし英語が得意でない場合は大変誤読しやすいと思うので、しっかりと単語を調べたり構文を取ったりしながら正確に読みましょう。
不安な場合はDeep Lのような翻訳サイトを使いましょう。

2. 図表の意味を全て理解しミソを抑える

論文の中心であり発表の中心にもなるのが図表になります。
重要な結果は図や写真等になっていることが多いかと思います。
まずは根幹となる結果について、どの図が何を主張しているのかを理解します。

例えばプロットの場合、初めに確認するべきことは以下の3つです。

・縦軸と横軸
・凡例
・描画に使用しているデータ
・特徴的な分布になっている箇所

重要なのは3つ目と4つ目です。
3つ目に関しては、例えば
・取れたデータのうちどのような条件を満たすものを抽出しているのか
・いつからいつまでに取得したデータなのか
・どのような条件のシミュレーションなのか
等々です。

4つ目が最も重要な点です。
本文中に言及があると思うのでそれを正確に読み取り、結果と考察を十分に理解しましょう。

3. 必要な引用文献を参照し論文の内容について理解を深める

論文は最初から最後まで読めば筋が通るようにはできていますが、全て理解できるようにはできていません。

過去に行われた似た研究を参考にしている場合や、同じようなセットアップの実験を何度も改良を繰り返して行っている場合は多く、また新規の研究でも部分的に過去の技術を引用・応用しています。

そのような過去にどこかでしっかりと記載済みの内容についてはもう一度わざわざ書くことに得はないので、引用(Reference)の形で記載してあります。
よって、論文を精読する場合には必要な参考文献を参照し、題材論文中で省略された内容を充足する必要があります。

特に前述したような先行研究がある場合や実験セットアップ等について別途論文が出ている場合は、そちらの論文も精読するようにします。
その他の場合は、単語検索等を用いて、必要な情報を効率よくピックアップします。

4. 研究背景を理解する

論文輪読において論文に書かれている内容をまとめて発表するだけでは全くもって不十分です。
内容と同じくらい重要なのが、研究背景を理解して伝えることになります。

研究室の学生は日頃自分の研究に集中し、必要な知識に関してはかなり長けていることでしょう。しかし、学生の仕事は目先の短期的目標を追っていることが多くなりがちで、その中長期的な目標が実は見えていないことがあります。また、一口に同じ分野といえどもそんなに広い視野は持てていないことがほとんどで同期の研究テーマを何にも知らない場合も多いです。

よって輪読では、紹介する論文(つまり研究結果)の分野における面白さを理解してもらうために、必要な前提知識から懇切丁寧にストーリーを組み立てる必要があります。

基本的には自分も詳しくないテーマであれば自分が十分理解できるストーリーを組めれば大丈夫です。
または、研究室配属後のゼミ内容以上の内容は全て説明するようにするという心がけも良いと思います。

このステップでは、勉強会の資料等を精読することは役に立つでしょう。

5. 結果の解釈と今後の展望について調べる

紹介した論文は、長年疑問だったテーマについて解を与えたのでしょうか?
与えたとしたら、次の論点はどこでしょうか。
不十分なのだとしたら、どのような改善をすることで目的を達成できそうでしょうか。
次のアクションプランについて調べましょう。



今回は論文輪読の目的、論文の選び方、精読までを紹介しました!
次回は発表スライドについてと発表時について書きたいと思います。


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