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2022年4月後半読書の記録

4/16㈯ 引き続きケン・リュウ編・現代中国SFアンソロジー『折りたたみ北京』を読む。収録されている作家はどの方もみんな作家の他にもたくさんの顔を持っているらしい。プログラマー、弁護士、俳優、公的機関、大学講師、などなど。どれもぐいぐい読ませるけど、夏笳(シアジア)という作家の『童童の夏』がジュブナイルのような世界観もあり面白い。自分の老後にも期待が持てるような、ディストピアではないSF。同じく夏笳『百鬼夜行街』の幻想世界にもどっぷり。。シアジアさんは同い年くらいみたい。

4/17㈰ 今日も現代中国SF。表題作にもなっている郝景芳(ハオ・ジンファン)『折りたたみ北京』まで読了。こちらも女性の作家さん。面白かった〜〜。分断、特権、格差が行き着くところまで行くとこうなるのかっていう。ていうかシステムがSFなだけで、今すでにもうこのくらい分断してる。中国くらいの大国ならなおさらだ。原題『北京折畳』が書かれたのが2012年と10年前らしいから、この十年で現実が加速したのか……。格差ある3つの階層が時間で入れ替わるというのがリアルで冷酷。
このアンソロジーに収録されている作家も女性が多いんだけど、中国の女性作家ばかりのSF集『走る赤』というのも日本語訳で出ているらしい。ハオ・ジンファンの短編集も白水社から。読もう。

4/18㈪ 週末のお預かり分査定を一気に。査定しすぎて、最後は文字を書くのも無理なほど疲れてしまった。極限まで頭と気力を使う。そして二階が良本で埋まっている。感謝です。お客さんもたくさん来てくれた月曜日、観光の方も多かったみたい。
GWに急遽出ることになった中之島の古本バザーは週末スタッフさんたちが準備してくれたので無事完了。でもGW、どうやら雨みたい。どうなるかな?

4/19㈫ はなさんのiPadが割れてしまったので本体交換のためApple Storeへ。何かを買うために中国の方がたくさん並んでいて、その後何らかの揉め事があったみたいで警察もたくさん来ていた。いまわたしの頭の中は中国でいっぱいなのでどきどきする。
大丸に行ったら、文博でやってるギイ・ブルダン写真展のプロモーションがエントランスで大々的にされていて、帰りに寄る。展示めちゃくちゃかっこよかった。重厚な文博の建物ともすごくマッチしていた。カラーもモノクロもどちらもいい。50年代のVOGUEは誌面でこんな贅沢が楽しめたんだなあ。恒例KYOTOGRAPHIEのひとつ。パンフレットを見ると他にも気になる展示があったのでまた行こう。

『折りたたみ北京』読了。面白かった〜〜〜。中国SFすっかりハマり、次に読む候補をいろいろ探す。そういえばもともと、わたしは三国志も大好きなわけでハマる素養はあるわけです。把握しきれないほど(たぶん)何でもありの土地、人、歴史と無限のSFがとても合う。たぶん日本とは比べ物にならないくらいの速度で発展してる中国の文化は、そんな膨大な歴史と地続き。ものすごい大都会と昔ながらの地方の農村と、どちらも矛盾なく中国なんだろうなと収録作品を読んでいて思った。劉慈欣(リウ・ツーシン、本業はエンジニア)の『円』は、秦の時代に三百万の兵を使って人間コンピュータを作り十万桁の円周率を計算するという話。仕組みのところがわたしには難しく、これだけ(短いので)数学の得意なはなさんに読んでもらって解説してもらう。はなさんは本を一切読まないのでわたしはついついいろいろ言いたくなるけど、こういうのはグッと読んで「この部分はこうだけどここの部分は省略されてて読者には説明されてない」とかパッと理解できるんだからわたしとは違う人間、と思っていたほうがよさそう。。今日は学校で家に本が何冊あるか、というアンケートがあったらしく、うちはもう何冊とかの話じゃないので、はなさんは名探偵コナン全巻があの幅でだいたい100冊だから……と体積?から推定したらしい。本屋はみんな経験で見た目からだいたいの冊数が分かるものだけど、はなさんやはり考え方が合理的。。
『1984年』へのオマージュでもあるような『沈黙都市』もよかったなあ。文字の検閲のために本は廃止され全てデジタルデータに。なるほど、Kindleやウェブで読める文章は便利かもしれないけど行き着く先は諸刃の剣。国または組織から個人への弾圧というのは、もう本当に人間性をズタズタに壊すくらいに重いものでとても辛い。存在の抹消は死と同等。弾圧だけじゃない。現在権利が認められていない、ないものとされている様々なことがそれと同じだと思う。

市場での入札、掃除、洗濯、庭のチューリップのお手入れ、夜ごはん作り、それからお昼寝などして夜は阪急メンズ大阪の搬出。慣れたメンバーなのであっという間。普段ほとんど接することのない超ハイブランドのアパレルの世界を垣間見れて楽しかった。世の中の人は上場企業サラリーマンの夏のボーナス一回分くらいの額を一回のお洋服の買い物に使う。

4/20㈬ 朝、本の引き取りや昨日の市場の落札を取りに行って店へ。たぶん古本屋始めた頃から欲しかったんだけど有名な本だからなかなか落札できなくて、今まで一度も入ってきたことがなかった本がお手頃な値で落ちていた。入るときはあっさり入ってくるものだなあ。うれしい。
今日も忙しかった。なかなかの数の本の値付けも終える。至るところに整理前の本が積み上がり、さらに今日も良い買い取りあり感謝。ひたすら作業。夜ごはんはチヂミ。

4/21㈭ 雨、だけど今日も忙しかった。よくよく計算してみたら、来週の古本市準備がまあまあやばいことに気づいた。。がんばろう。
古本屋はたぶん外からは何も見えない仕事なんだろうとは思うんだけど、あまりに小さな商売と決めつけられることが多くて辟易。まあ、この仕事で楽しく不自由なく生きてるからどうでもいいんだけど。。

4/22㈮ 晴れたので自転車通勤。途中、同業の方のところに寄っておしゃべり。バーッと情報交換して楽しかった。今日も店は忙しくよい一日。夕方お習字行けるかな、と思ったけどぜんぜん無理だった。もう一ヶ月くらい行けてない。今年の春は鬼の忙しさ。でも、積み上がっていた山がだいぶなくなり、ようやく古本市準備に取り掛かれそう。
夜ごはんはすぐにできるロコモコ丼。はなさんが小さい頃はよく作ってたけど、ティーンエイジャーにはお腹いっぱいになりすぎるみたいで成長を感じてしまった。

4/23㈯ 朝から出張買取二件、オープン直後にびっくりなうれしいご来店。東京でもマヤルカの名前よく聞きますよ、と言ってもらった。うれしい。その後また、よいお持ち込み。感謝。学生さんがピピロッティ・リストの作品集買ってくれたり、一日よい本がたくさん旅立った。値付けもたくさんした。マヤルカにいると、本の未来も明るいなあと思えるところがとてもいい。
お客さんに、建物取り壊しで休業していたカフェの移転オープンを聞く。よかった、行ってみよう。
夜はいつもの美容室。夏に向けてだいぶ短く&髪色明るくした。カット、カラー、トリートメントに蒸気のケアにフルコース!で、すっきり。

4/24㈰ 朝から釣りに行くはずだったんだけど、大雨のため延期に。初心者に雨の釣りは難易度高すぎるので……。はなさんは予定通り遊びに行き、わたしは店で一日作業。大雨のなか、お持ち込みたくさんのよい一日だった。ご近所に住む70代のすてきな女性、「ここが近くてほんとによかった!」と言っていつもよい本をどっさり持ってきてくださる。この時代の本はほんとに面白いししっかりしてるし、今も人気ですね〜と言うと、「人数も多いからね、わたしたちは。面白い時代でしたよ」と笑っていた。武道館のビートルズも見に行ったそう。見える世界がぜんぜん違うんだろうなあと羨ましくなる。でもその一端でも、垣間見れて話が聞ける時代に生きていてよかった。東郷青児装丁のロリータなどうれしい本も旅立つ。
夜は北山のロイヤルホストへ。よすぎるお肉のステーキは胃の消化能力を超えてしまうので、ロイヤルホストはちょうどよくとても美味しい。ロイホのオニオングラタンスープはマリリン・モンローも食べたらしい……。

その後アマゾンプライムで「グレイ・ガーデンズ」を見る。好きすぎる。ドリュー・バリモア最高。
昨日、Twitterでバズっていた新聞記者の夫が精神の病を抱える妻との20年を綴ったnoteを読んで、Twitter見てると感動の声がほとんどだったけれどわたしはいろんな意味でしんどくなってしまったなあということを思い出した。本当にかけがえのない、すばらしい支えだったとは思うんだけど、それとは別で、妻について書くこと、書けるくらいまで経験させてしまうことで何かを得るのはフィッツジェラルド、島尾敏雄、高村光太郎などなどから始まりすべてフェミニズムの敗北では、、とどうしても思ってしまう。そんなこと思ってはいけないのかもしれないけど、でもやはり、文学の影にあるものにも目を向けたい。
「グレイ・ガーデンズ」はラストほっとして、よい気持ちで眠りについた。

4/25㈪ 昨日とはうってかわって真夏日。昼間はとても静かで作業が進み、夕方涼しくなってからお客さんたくさん来てくれた。ネットの買取でショックなことがあったというお客さんがマヤルカの買取で元気になってくれたそうでよかった。買取は本当に店それぞれだけど、信頼する同業の先輩は「一番は人やねん」と言っていたのでわたしはわたしのやり方で誠意を持ってがんばる。
山崎まどかさん新刊『真似のできない女たち 21人の最低で最高の人生』読み始める。一人目は、「グレイ・ガーデンズ」のイディ。

4/26㈫ 朝から桂の雑貨店おやつさんに絵本の納品。5月末まで絵本を委託販売してもらう。イベント以外で絵本を売るのはなかなか難しいと思うので毎年とてもありがたい。
古本市の搬入後にホテル泊することにしたので楽しみができた。GWは、茨城から家族が来るし、急遽大学の友だちも四国から会いに来てくれることになった。延期になってる釣りとBBQの予定もあるし楽しみすぎる。

夕方はなさんの二者面談へ。新任の現役ラグビーコーチで美術教師だそうで、プロレスラーの武藤に似た良さそうな先生だった。

4/27㈬ 小沼丹、野呂邦暢、天野忠などよい文芸書をまとめてお持ち込みいただく。先日まとめて入ってきた文庫も並べる。午後、一階はお店番頼んで丸善の古本市準備の仕上げ。無事に終わってよかった。今回は台数が少ないので正解が分からず苦戦。。

4/28㈭ 丸善の古本市搬入。ちょうど運送屋さん来てくれたタイミングがお店にお客さんたくさんでびっくりされる。でもたぶん、毎年の感じではGWは暇なので今日がピークかもしれない……泣。今日明日は、スタッフさんたちに5月末から参加する藤井大丸の古本市準備をしてもらう。
2トントラックで荷物を運び、設営は夜なので荷物だけ入れてみんなで少しだけ飲みながら待つ。設営は滞りなく終了。

新刊の仕入れ、小さな書店に届く前にAmazon売上何位!とわんわん拡散されるのどうにかならないものなのか……初動が大事というのは分かるんだけど。普通の人はそこで買うよね、分かる、となってしまう。あと通販ありの先行販売。ではそこで売ってください、とわたしなんかはつい思ってしまう。ただわたしは、新刊本で生計は立てていないので疑問を持ちながらもまあそういうものか、となるけれど、他の個人の新刊書店はどうしてるんだろう。本屋の存続やあり方については散々語られるけど、人ってみんなそれぞれ忙しいから、余裕のある人以外は情や思想よりも当たり前に利便性や合理性で動くと思う。嘆いたり情に訴えたり付加価値でどうにかしようとする前に、システムのところをどうにかできないものなのか。日本はなんでも、個人の努力に頼りすぎる。例えば本当に新刊書店がなくなりAmazonからしか本が買えなくなったら、寂しいとかどうとかよりも普通に不便では?丸善の古本市で毎回思うけれど、専門書も扱う大きな書店のバックヤードの書店員さんたちの働き、本当にプロの仕事で素人考えではなかなか維持、運営できることではないと思う。

4/29㈮ 丸善の古本市初日、大雨。今日は大阪の四天王寺も初日。屋外に雨はつきものだけど、それにしても大雨すぎる。。今日は朝から当番だったけど、古本市初日とは思えないくらい静かだったな。でも5/11までの長丁場なのでこれからでしょう。帰りに矢野書房さんの棚から安西水丸『ストローハウスからの手紙』を買う。
昨日の夜もダラダラして、今日も夕方ダラダラ。山川直人さんの漫画『澄江堂主人』(或る「芥川龍之介」伝)を読み始める。登場するすべての作家を小説家→漫画家に置き換えた芥川伝。もうずっと、死に向かって生きていたんだなあ。「文藝的な 余りに文藝的な」というのはまったく違う文脈だけど、芥川自身もきっと“余りに文藝的”だったんだろう。

4/30㈯ 朝のうちに丸善へ。昨日の感じを見て、少しだけ棚の方向性を変える。変えた方向性がなかなか当たっていたようで、今日はよく売れていた。売れる売れないってみんな気になると思うけど、わたしは古本て基本一度誰かの手元に渡っている本なので多くは必ずまた誰かの手元に渡るはず、という気持ちが根本にある。なので何を売るか、はもちろん大事だと思うけれどそれよりもどう橋渡しできるか、というところを大事にしたい。個人的に店主の思いが前面に出すぎているのは苦手で、売る側としても得意じゃないので。難しいけど、お客さんの反応はいつもダイレクトなので試行錯誤しがいのある仕事だと思う。そこにプラスして、また別の角度でもう一働きしないとなあというのが最近の課題。まさに日々、試行錯誤。

山川直人さんの漫画『澄江堂主人』全3巻読了。面白かった……。芥川と交流のあった文豪がたくさん出てきて(犀星、谷崎、百閒など有名どころからサバト館から出ていた龍膽寺雄のようなところまで)当時の流れがよくわかるのもたまらないけど、作品通してとにかく繊細で、後期芥川作品の陰鬱さが漫画も、芥川と周りの人たちの静謐さも押しつぶさずにでもちゃんと伝わるよう表現されていた。とくに3巻目のラスト(芥川の死)に向かう心理描写が圧巻。読んでいるこちらも思わずその死に納得してしまっていていて、亡くなった芥川にかける有名な妻の文さんの言葉が本当に、沁みるようだった。素晴らしかった。名作。読了後にTwitterを検索してみたら著者ご本人のツイートがあり「ぜんぜん売れなかった」と書いてあった。ぞっとするほど素晴らしいので多くの人に読んでほしい。10年前の作品、紙の本は絶版。

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GW、みなさまいかがお過ごしですか?マヤルカはGWも火曜定休の通常営業です。GWの店は毎年のんびりしています。
現在参加中の京都、河原町丸善の古本市は5/11㈬まで。今回は初参加の方や、いつも阪神百貨店の古本市でお世話になっている矢野書房さんはじめ大阪、神戸の方たちも出ているので必見です。5/1㈰からは3年ぶり?のみやこめっせ古本市もあるのではしごしていただけたら。わたしはたぶん現場には行けませんが、5/3〜5は中之島まつりで古本バザーにも参加します。こちらはびっくりするくらいのお買い得本送っていますので大阪のみなさまぜひ。

ではまた半月後、よかったら!





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