【議事録】2023年度第3回真山ゼミ 「AI技術が進展していく中で人間は何を最優先に取り組むべきか」
今回のゼミのテーマ
今回のゼミでは、「AI技術が進展していく中で人間は何を最優先に取り組むべきか」というテーマを設定しました。当日の議論では、真山先生のファシリテーションの下、AIに関する議論をより広く行いました。以下の事前課題をゼミ生に課し、これを踏まえて議論をしました。
事前課題
AIの基本的な仕組みと社会との関わり方に関する以下の二つの記事を事前に読んでいただきました。
・人工知能の現状と今後の展望 | 丸山 雄平 | 第一生命経済研究所
・AI(人工知能)は人間を超えるか ―AIが変える社会、経済、教育
<任意課題>
・生成系AIで真山ゼミに適した議題を作ってみてください。
AIの方向性、学生とAIの距離感・関わり方
AIをどのように使っていったらいいと思うか。
Aさん:AIの技術を自分で使ったことはほとんどない。研究者の先生で使っている人はいる、ニュースで聞く。いつかは使ってみたいし、使ってみるようになるのではないか。
個人レベルでは、Siriレベルまで落とし込まれたら使うようになるのでは。
導入(真山先生のコメント)
いま日本に生きている人でAIの恩恵を受けていない人はいない。今の私たちはPCを持ち歩いている。
昔の黒電話は停電しても繋がった。今は停電すると全てが使えなくなる。テクノロジーが上がった分だけ、困ることもある。
車や飛行機のメカニズムは高度過ぎて、簡単に修理したりいじったりできなくなっている。昔の車はフロントを開けてエンジンをいじれば直すことができた。(今ではそれぞれの部品にマイコンが入っており修理が難しい。)
AIの問題にするにしてもとっかかりがない。
人工知能、人間に近づいているだろうという。AIは情報を蓄積していっている。機械にとって人間の「好み」は「頻度」にすぎない。時間をかければ人間もできるが、これをビッグデータ、統計によって早く処理できるのがAIの強み。
ITの難しいところは可視化できないところ。技術だから。
スマホ、ロボットなどになってくると技術が可視化されて分かりやすくなってくる。
AIが道具であることは間違いないが、人間の側がそれを使いこなすために要求される知識や技量が増えている。
人間は忘れるが、機械は忘れない。
AIに何かをさせている間に人間が何ができるかが問題。
チェスと碁では既にAIが勝っていて、将棋は勝負していない。人間はミスをするため、誰も使ったことのない定石を使うしか勝つ方法はない。
人間を管理するためにAIを使うなら人間にとって地獄。本来なら機械は人を厄介なものから解放するもの。
女性の社会進出がなぜこれほど進んだか=機械が家庭に浸透したため。食洗器、洗濯・乾燥
技術によって女性の社会進出ができるような環境が整った。
経費や人事の管理をAIにさせる=処理能力の問題。但し、AIを使うのにはお金がかかる。AIを使うことによって空いた時間でどんなクリエイティブな仕事ができるか。
東京ー大阪間の移動時間が1日から1時間に短縮されたことによって何ができるようになったか、ということと同じようなこと。
何を機械に委ねて、何を人間ができるかを考えるべき。AIが出てくることによって人間が無機質化されるようなイメージがあるが、その逆で、無駄を省いてもっとクリエイティブになりましょうということ
チャップリンの映画(『モダン・タイムス』)にあるように人間が歯車だった時代からようやく抜けてきている
先生からゼミ生への問いかけ
Q1. AIに何をしてほしいか
論文を書いてもらう、ではダメ。
便利にしてもらう、というのはよいが
Q2. AIによって空いた時間で何をするか
Aさん:パワポの細かいレイアウトとかをやってほしい。
真山先生:パワポは絶対に使わない。パワポがあると眠くなる&緊張感がなくなる(どうせ後で見れるからいいや、後でもらえるからいいや)
みんなが退屈しないパワポをどうやって作るか。自分の個性が生きるパワポをどうやって作るか
チャットGPTはメディアの記事は使えない、オープンソースのデータしか使えない。全ての情報を拾えるAIがいれば良いが
サポートしてもらうことには役には立つ
AIは人間の本当の才能を明らかにする 熟考すること、臨機応変に対応すること、 そこできちんと考えておかなければ仕事を奪われる
Bさん:AIの台頭によって誰が得をするのか(損をするのか)。
コンサルのスタッフはパワポづくりが仕事とも揶揄される。
真山先生:そもそも才能のある人間は、出してくるパワポが違う。
学生バイトのなかでも、際立っている学生は1冊の要約に参考文献として2冊を加えてまとめてきた。
他の人とは違うクリエイティブさ、(一方で)言われたことはきっちりやることが大切。
スマホできれいに撮れるようになったので、カメラマンが必要なくなると言われている。
AIに追いつくのではなく、従わせるという意識。
必ずしもコンサルはクライアント側に寄り添えば良いというわけではない。
Cさん:卸売市場の青果物を扱っている業界に関わっているが、とても閉鎖的でかつITが入っていない。人がやらねばならない作業は残ると思うが……
真山先生:農業はクリエイティブな作業だが、工業製品の様に均一なものが求められる。今、タネは一回きりしか育たない(タネ屋が儲からないから)。
今は品種改良がすすみ、素人でも良い作物ができるようになっているが、現場の閉鎖性が残っているので、達人の生産物の価値が下がる。
クリエイティブさを出すには、この「1回きり」しか育たないタネをやめさせるべきだがそういう声はない。
Dさん:自分がプレゼンする際にパワポのレイアウトはAIが提案してくれたが、そもそもどうしたら面白いのかは自分で考えないといけないと思った。
機械を使いこなすには、自分が誰なのか、自分が何を求めているかをはっきりさせておく必要がある。
機械に忖度はない。
Eさん:プロフェッショナルがもっている技術を誰もが使えるようにしてほしい。プロは直感(経験値)がすごい。AIはそういう経験値を言語化できるはず。答えに至るまでのプロセスを出してほしい。知識の民主化。今のプロは自分の功績を言語化し、普遍化するのを拒む。
Bさん:上の立場の人にとってはデメリットなのでは?
Eさん:銀行で働いているときに実感した。それでヒエラルキーが逆転することはなく、他の面で新たな知識の活用が進むのではないか。
真山先生:本当のプロは個性。
Eさん:普通の、多くの人が要求する程度の労働なら身につけられるはず。労働から解放されるなら哲学をやろう。過去歴史をみると、ギリシャで労働は奴隷がやっていたから哲学が発展したし、大学の成り立ちもそう。
Fさん:ハウトゥー本があるが?
Eさん:ハウトゥー本は一般化した知識が書いてあるので、そういう事ではなく、もっと個人的な極意、経験値を知りたい。
真山先生:ハウトゥー本を読んでもうまく行かないのは、本が売れれば売れるほど皆同じことをするようになるから。普遍性がすすむと特質がなくなるのでビジネスができなくなる。
Gさん:空いた時間に言語、哲学の勉強をしたいと思う。いろんな国のいろんな文学を読みたい。AIにやってほしいことは特にない。
問題提起:技術が進展しても空いた時間はそんなにできてないのでは?休学しても働くこと。
真山先生:かかる時間をどう短くするか、というのが人間の重要なテーマ。時間を作ろうとすると優先順位をつけるようになる。
新聞記者の勉強会をしているが、わざと18時半からにしている。これは、新聞記者に時間を作らせる訓練のため。
AIで時間ができたことも気付けない。
どこかを機械に託さなければならない。
社会貢献をしようとすると、これは時間がかかる。今楽しい、余裕があるからこそ、これを続けるための時間の作り方を考えた方が良い。
Hさん:真山先生の本が好きでこのゼミに参加した。中学生の時に『当確師』を読んだ。
文法など軽微な間違いを訂正してほしい。
どうでもいいやと修正を素通りできなくなりむしろ時間がかかってしまう可能性がある。
真山先生:AIにたよると、どうせAIがやってくれるし、と思って最初の文章がおろそかになるし、人間の能力は上がってこない。
今人間は機械に依存している。何に依存して、どこを自分に残すかというのが大事。
真山先生:『機械と人間』という大ベストセラー本がある。機械が労働を奪っている、というテーマ。
昔中国の取材によく行っていたが、中国の改札は人の方が安いから人が切符を切っていたし、レンガを積んだそばから外していく仕事があった。
共産国家なので仕事がないと暴動、社会不安が起きる。
資本主義国家はそんなことはないが、失業の問題が生じる。労働を奪ってひとの生活を貧しくする。
物価を下げる。半分の賃金でも回るような社会にする。ただ、これはそこまでのAIを開発する人間が利益をとっていくはずなので極端な資本主義が起きるかもしれない。
成功報酬は動物的な欲求。一番たくさんAIの開発者に支払われるべき。
働く時間が短くなる→賃金が下がる→人間が八時間働かせてくれということになる?
(AIを使わないと日本だけで決定しても)日本は遅れていくだけ、資源も食べ物もない国で鎖国するしかない。
ほとんどAIに依存してしまっていくと、その世代はAIに蹂躙されるかもしれない。外国人労働者を入れるかどうかという議論になる。
知的労働者は選択肢がある。生活の為に我慢して仕事をしている職業では柔軟に職業を変えること。
給料:時間に対してお金を払う。
報酬:時間に対してお金をはらわず、成果物にたいして払われる。これは誰もができる仕事じゃない場合。人口の小さい割合しかできていない。
「なんでこれだけのことができないの」が通用しない。
国がサポートするためには歳入額が上がらなければならない。
教育:平等主義。私立に行く人は良いが、公立は、「機会の平等」ではなく「結果の平等」をもとめる。普通の子を差別するのか、という声がでてくるはず。マジョリティを切って、才能がある人間だけ伸ばすということはできない。
日本はもともと「個」の国で、周りを担ぐ才能が大事だった。
日本の藩で、自然をうまく活用できたのは個人の才能を伸ばしたから。
教育には20年、30年時間がかかる。
金持ちは、どうせ税金としてとられるから寄付して天才を育てる。財閥系の会社で財閥出身の経営者がいない。
東大から留学でアメリカに行っても日本に帰ってきてからの就職先がない。ずーっと海外に行ってしまう。出口がない。
東大の学祭で天才をより活かした社会にしましょうと訴えてみても良いのでは。
AIは人間社会への最後通告。
戦後はだらだら生きてこれた、何年かに一回みんなが欲しいものが出てきて、それが爆発的に売れた。最後にそれでうまくいったのが地デジ。
日本人の若者が欲しいものがなくなったのは満たされているから。
戦後じわじわときた平等主義によってAIに関しても手をあげなくなった。
ノブレスオブリージュ。社会貴族がいた階層社会は、貴族が平民に施しをしようとしたし、貴族は自分の子孫に帝王学を教え込んだが、それがなくなった。
私立はもっと人間を育てて伸ばしましょうという教育をするべきだが、その意識がない。結局が東大京大が日本を席巻してしまっているということに問題があるのかもしれない。
自由に発言する人たちが、そのまま活動していければ良い。お金を稼げる仕事→余裕ができる→社会貢献、寄付。
Hさん:日本の個の文化、制度、まで話を聞いて、人間がどう生きるか考えるべきだと思った。
真山先生:機械に管理されることはあると思うが、日本人はもともと無駄な時間を持っていたはず。散歩をした時に思いつく。
地方に行くと昼に喫茶店に行っても人がたくさんいる。失業しても誰かが食わせてくれるので生きていける。達観というのがこの国からなくなってきている。労働に対する考え方が狭い。他人同士だから貨幣経済が成立していたのであって、田舎のコミュニティは助け合いでまわっていた。いずれ東京の生活環境が悪くなる。高齢化、治安悪化。地方は年寄りが既に多いので介護システムも成熟してきている。
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