【議事録】第7回「外国人に日本文化をどう説明するか?」
※Photo by Sorasak on Unsplash
真山先生「あなたの言葉で思うところを言って欲しい」
前回(第6回)の議論の難点は「日本文化」が定義できない点にあった。では、外国人に、あるいは自分が外国に留学した際に、
「日本のここを知ってほしい」
「日本はこういう国」
と説明するとしたら、何をどう説明するか。普遍性は要らない、個人の意見でよい。自分にとって当たり前のイメージ(あなたの言葉)を人に伝えなければいけない。
サクラ一つとっても、
・桃の花とは違うきれいな桃色が好き
・光にかざすと透けて綺麗
・酒に浮かすと風流
・桜の下で死にたい
・散る様が美しい
と色々な表現ができる。具体的に説明しましょう!じゃあ、まずはXさん。いきましょうか笑
「四季の感覚ではないか?」
季節感(季節の移り変わり)を人生と結びつけて考えるところ。嵐や台風等、マイナスのことも、情緒深く捉える文化がある。季節がこれほど揺れ動いている国は少ない。
「いやいや、外国にも四季はあるだろう?」
もしかして、宗教観が影響しているのかもしれない。日本では全てに神が宿ると考える。クリスチャンは、自然や季節よりも「人」に注目している。
「中国人のあなたはどう思いますか?」
中国は季節の移り変わりが激しい。ただ注目するところは「大きい山」「大きい川」で、その点、日本は繊細な季節感を持っている。
「外国から学ぶところ。吸収力」→「そこにオリジナリティはあるのか」
外国に学ぼうという貪欲なところがあるのではなかろうか。日本がこうして発展したのも西洋の文化を取り入れて、かつ、高度にしたからではないか。
「でもそれって、オリジナリティがないということでは?」
けれども、他国の文化を取り入れて1500年以上の歴史を築いてきたのは、オリジナリティと言えるのでは。
むしろ、オリジナリティがないことが日本のオリジナリティでは?
オリジナリティを持つ必要がなかった?日本は大陸国家ではなく、かつ絶海の孤島でもない。加えて、中国という大国がすぐ近くにある。
「オリジナリティがないことがオリジナリティと言ってしまってよいのか?」
他の国でも「オリジナリティはあるか問題」は存在するはず。ヨーロッパ諸国もローマやギリシャから模倣して文化ができている。←「これをイギリス人やドイツ人が聞いたら激怒するぞ笑」
オリジナリティの浮き上がり方は「鏡」を必要とする。あるけれども気づかない、空気のようなものではないか。
確かに一つの国に多民族がいる場合、アイデンティティはいやでも近くしなくてはいけない。ちなみに「県民性」は日本人のアイデンティティではない。
「良いところ」を探そうとしているが、グローバル社会で独自性を見つけることは非常に難しい。
「細やかさ、繊細さ、丁寧さではないだろうか」
丁寧で繊細で優しいというのはいいところではないか。例えば、清潔で、電車が時間通りに来る。これはやはり日本らしい。職人気質があって細かいところまでこだわり抜くのもそう。
もちろん、ドイツのギルド/フランスのワインといったものもあるから、日本人だけのものとは言えないが。
「思いやりの気持ちでは?」
見ず知らずの他者を思いやる気持ちというのもあるのではないか。老人に席を譲る。
「他者から白い目で見られるため、という動機の方が強いのでは。」
内的な規範の強制(抽象的な他者)
↔人が見ていないとしても、財布を拾ったら警察に届ける、
という行動を取る人が多いと思う(具体的な他者)
日本人ほど規範意識がある人はいないと思う。しなければならない。ご縁:情けは人のためならず。
西洋は神に、日本人は他者に行動を規定されているという考え方がある。やはり、思いやりではなく他者の目を気にすることが本質では。そう言う意味では、日本では「世間」や「他者」という抽象的なものが「神」として扱われている。
「なぜ日本人は宗教がないのに規範的な行動を取るのか?」
なぜ日本人は宗教がないのに規範的な行動を取るのか。
これは「恥の文化」「道徳」。一つ言いたいのが、席を譲ったり、人を助けたりするようになったのは、実は最近。昔は「気づいていないフリ」をして席を譲ろうとしなかった。ここ10年ほどで変わった気がする。
原因のひとつは日本が豊かになったため。
「日本のアニメにも注目したい」
日本のアニメにも注目したい。エヴァ、コードギアスなどにはメッセージ性がある。海外の単純なストーリー構造の作品に比べ、メッセージに深みがあり、重層的に作られている。政治的な指摘なども含まれていたりする。
昔の例をみても『方丈記』があり、孤独で自己反省する姿勢が古くから共有されている。
「今までの流れとは離れてしまうが、私なら海産物が豊富なことを言う」
今までの文脈から離れてしまうが、私は外国人に海産物を推したい。日本は海産物が豊富。
- 骨センベイ
- 豊富な調理方法
- 食材(生命)を残さず食すという意識
- 水族館に行って、「美味しそう」と思うことが罪ではない国である
- 複数種類の魚をたくさん食すのは肉食文化がなかったため。
「いただきます」というのも独特ではないか。
「だけれど、食文化が栄えたのは貧しくて調理を工夫しなくてはいけなかったからでは?」
「ぽっと出の思いつきではなく、長い歴史に裏打ちされていることは触れなくてはいけない」
ひとつ触れなくてはいけないのは、長い歴史があるという歴史性だ。花鳥風月を愛でる姿勢は、長い歴史があるからこそ尊重される。これまでに挙げられてきたことは「歴史」を踏まえて言うことで文化として成立していると言える。それ自体の思いつきなら、そこらへんのインスタグラマーでもできる。
「でもさ、もっと長い歴史をもつ国があるため、日本が特に長いと言うことはできないのでは?」
↔4大文明は全て滅亡しているが、日本では文明が断絶したことがない。現存する最古の文化とみなせるのではないか。
「どうまとめようか」
「どうまとめましょうか。」
【結局、日本文化とは?軸を通したい!】
・周囲との距離感
・思いやり=相手がいる
・季節感の中で上手に生きている
ミクロな繋がりが重視されているのでは?
- 天皇は所々危ういときはあったにせよ確かに続いているが、それが繋がっていることはあまり日本人には意識されていない。しかし、現に繋がってはいるため、それが日本の精神性の軸が通っているということになる。
・何でも取り入れる、歴史がある、宗教がない、の3つが軸?
「口にしない、できないというのが日本文化ではないか」
『日本権力構造のなぞ』という本がある。ここで指摘されているのは、「責任を取らないのに、なぜか前に進むこと」。顔が見えない政治でも国が破滅しない。もしかしたら、言葉にしないことが最大の武器なのではないか。
同じような例に固体燃料ロケット開発の話がある。日本は高性能なロケットを保有している。しかし、この設計図をもとに作ってもうまくいかない。担当者に話を聞くと「当たり前ですよ」という。製造中にあれこれ話し合いながら修正を加えていくのであって、その内容は口伝であるという。つまり、設計図に落とし込まれないものがある。これは言葉にしないと言うことだ。
小説でも最も才能があるのは最小の文章にまとめられる人だ。小説は説明が少ないほど臨場感がある。
運営「お疲れ様でした。次回は11/19金です。それでは今回はここで終わりに致します。」
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