「何も無くて」「何でも有る」大神島

物好きな観光客がくる、「何もない島」大神島

お昼前、食堂の芝生でかのこと猫と遊んでいました。
私は芝生の上にのんびりと座り、
かのこは芝生の上におかれたテーブルの足を
鉄棒のようにして遊んでいました。
私たちがあまりにもリラックスしていたのか、
11時の船で来た観光客の男性に
「島の住民の方ですか?」と尋ねられました。
「いえいえ、観光客です。ここに宿泊しました」
と答えました。
どちらから?とお尋ねなので、
「京都からです」
というと、
「京都?!物好きだね〜」
と言われました。
あら、物好きって言われてしまったわぁと思い、
「出産前に泊まりにきて、産後、やっとこれました」
というと、
「ここが好きなんだね。大神島の何も無いところがいいの?」
とおっしゃいます。

大神島は何も無い島。

その言葉、私の中で引っかかってしまいました。

果たして本当に何もないのでしょうか?
取り繕うことが面倒になっていた私は思ったことを言ってしまいました。

「そうですか。私はそんな風に思わなくて。大神島にはたくさんあると思っています。」
朝も散歩をしてきました。ここには畑もあるし、暮らしもありますよ」

すると男性は
「そうだね。畑、うまいことやっているなぁと思って、さっき見たよ」
とおっしゃいます。

「はい、本当に。大根が終わったらと思ったら次はスイカの植え付け。
ほかにもレタスや人参、水菜、本当にたくさんあります。」

会話はそれで終わりになりました。


「何もない島」というステレオタイプ

大神島に限らず、離島に行ってきた人がよく言います。
「あの島にはなんにも無かったよ!」
「私も行ったことがあるけど、本当に何にも無かった!」

果たして本当に何もなかったのでしょうか。

大神島で声をかけてくださった男性は
畑を見て、その充実さを語っていました。
大神島には「何もない」わけではないようです。

何がないか。
それは都会にあるものがないのでしょう。
カフェや飲食店、コンビニ、おみやげ屋、
観光客をもてなす人たち。
こうした経済活動が極めて少なく、
お金を払って何かを得させてもらうような
サービスや機会がほとんどありません。

けれども、経済活動から目を離すと、
綺麗な花々、
美しい海、
ハイレベルな家庭菜園、
その日の食事のための漁の技術、
厳しい環境で生きる知恵、
そして初対面の旅行客に対して食事をふるまう心の余裕。
生き様。
経済活動とは異なる場所で、
筆舌しがたい豊かな一面を見せてくれるのです。


何もなくて、すべてがある大神島

私は「なにもない大神島」というのは、
完全も誤りが思っています。
都会にあるものが何もないわけであって、
大神島にしかないものがたくさんあるのです。

仮に男性の旅行者が言ったように、
大神島には何もなかった、としましょう。
けれども仏教用語に「空(くう)」という言葉があります。
わかりやすく言えば、「何もない無いところにすべて有る」という意味です。
大神島には何も無いのであれば、
その「無」を掘り下げてみる。
すると何か有るものが見つけられるのです。
人によっては、そこに「すべて」が見つけられるのかもしれません。

しかし多くの人は、
「島には何もない」という言葉を先に理解していまい、
島に来ても、先に聞いた「何もない」ということの
確認作業をするにとどまっています。

その中でも自然が美しいとか、景色がきれいとか、
そういったものを見出したりはしています。
しかしそれ以上のことをしておらず、
非常にもったいないことだと思っています。

何もないという深い思い込みによって、
新しいものを探すことを忘れているのです。
また、何かがあるという発想すらも
持たなくなってしまっているのです。

またなにか見つけたとしても、
見たことがないものを説明する、言語化の難しさに引きずられ、
いつのまにか忘れてしまっているのです。

こうして島に来た多くの人たちは、
無意識に色々なものに気がつかずにいるのでしょう。

大神島の旅、人生という旅

私が思う「旅」とは、
ガイドブックに記載された内容や写真を
確認する作業ではありません。
ガイドは案内に過ぎず、すべてや結論ではないのです。
ガイドを手掛かりに、自分だけの何かを見つけ、出会い、
そこで自分自身に向き合う。
そこで何かを学び得て、
可能であれば日常生活にとりいれる。
それが旅だと思っています。

また、今回は4泊5日の旅でしたが、
それは「人生」という大きな旅路にも言えると思います。
壮大な話ですが、私はそう思えてなりません。

たまたま私は3年前に行った大神島で学び得ることが非常に多く、
そして今回もたくさんの学びを得ることができました。

そして今回の学びが、日常に落とし込めた時が、
大神島を再訪するタイミングだろうと思っています。

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