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ミステリー小説好きはコンサルタントに向いてるんじゃないか説

先日までコンサルタントの端くれとして生きていた。

コンサルタントといえば、東大、京大を始めとする旧帝大、早稲田、慶応、その他海外有名大学出身、MBA取得みたいなイメージだった。実際、以前働いていた職場は、きらめく肩書を持つ人ばかりだった。

そこまでの学歴のない私は、コンプレックスも相まって、「コンサルタントってなんだろうな」ってよく考えていた気がする。

スキルはトレーニング次第で獲得可能なものと、獲得不可能もしくは獲得するには結構な時間がかかるものに分かれる。

コンサルタントとして必要な2大要素

後者を「素質」と呼ぶならば、コンサルタントに必要なその素質は2つくらいあるんじゃないかって、なんやかんや10年間この業界にいた人間からすると思う。

それは、

物事をフラットに見ること

ファーストアタックで感じる違和感 

この2つである。

コンサルタントって何者なの?

コンサルタントって横文字だし、イメージがしづらい。色んな人がいろんなイメージをする。(私も、「高学歴!」ってイメージだった。)

コンサルタントってのはつまり、「改善策を提案する人」のことだと思う。

もうちょい言語化するとこういう感じだ。

「お宅んとこ、調べたんやけど、こういう状況っぽいですわ。ここが課題やから、その改善策として3つ考えてんけどどう?」

「その中でも、コスパを考えるならプランAかなって思うねんけどどうかな?」っていう人のことだ。

この提案を最上級に丁寧な言葉でクライアントにお伝えする。


さらに整理するとこんな感じ。順番は状況により変わる。

現状を調べる→整理する→仮説を立てる→分析する→課題を設定する→改善策を提案する→改善する→結果を考察する→再度改善策を提案する→再度改善する→・・・

仮説をいい感じの精度で立てられるかが、コンサルタントの良し悪しを決めると考えていて、その仮説を立てるためには、経験や論理力もさることながら、先に述べたフラットに見ることと、違和感に気づく力が大切だと考えている。

これって、多分コナン君とか、青島刑事の世界で求められるスキルと同じなんじゃないかなと思うのだけれど、あいにく探偵や刑事さんの知り合いがいないので確かめられないでいる。

人間は「見たいものを見る」生き物

んじゃ、この「フラットに見るってなんや」って思うかもしれないが、人は、「見たいものを見る」生き物なのだ。

例えば、あなたが家から会社に行くまでの道のりを思い出してほしい。

「家を出て、右に曲がって、まっすぐ歩いて、信号を左・・・」と毎日通る道なら簡単に思い出せるわいと考える人もいるかもしれない。

けれど、例えばその過程でどんな人とすれ違って、どれくらいのスピードで歩いてたか。何時何分何十秒地球が何回回った時に着いたん?と問われると答えられないだろう。

会社に着くまでに見聞きした全データを全て脳に取り込んでいたらデータ処理が追いつかない。そのため、古代から備わりしフォーカス機能を使って生きているのだ。それが、「自分が見たいものを見る」という機能だ。

犬が好きな人は、散歩中の犬がいたら注目し、記憶に留めるだろうし、

「昨日ジョブチューンでやってたローソンのスイーツ買って帰ろっかな。けどローソンって近くにあったっけな」って考えている人は、ローソンをリサーチして歩く。その代わり道すがらどんな犬と遭遇したかは上の空だったりするかもしれない。

ちなみに、「人間は見たいものを見て生きている」という法則を教えてくれたのは「メン・イン・ブラック」だ。16歳の夏に観た時、脳天に衝撃波を食らったようだった。興味のある方はぜひご覧いただきたい。

時を戻そう。

フラットに見るということ

コンサルタントとして情報収集する段階では、この見たいものを見る機能をできるだけオフにして、あらゆる情報の断片をパズルのように組み合わせて論理的な仮説をいくつか立てるという作業を行う。

字面で見るとえらく高度なことをしてたんかなって思うけど、正直すごく楽しい作業だった。自分の身の回りのことであれば、こうであってほしいとか、エゴがダダ漏れになりそうだけど、あいにくこれは仕事だ。

なので、言い方が悪いがドライになれる。プライベートでは決して至ることのないドライな境地に到達できるのが楽しかった。

ほら、ゲームの中だとばっさばっさと敵を倒せるのと同じ感覚。サイコパスじゃないよな私。


したがって、クライアント先の社長さんが従業員の能力のなさを力説したとしても、その言葉だけを鵜呑みにしてはならない。

これって、事件後に捜査員が聞き込みやら指紋の情報やら様々な情報を収集し、こいつが犯人じゃないかって絞り込んでいく過程とそっくりじゃないかな。コナン君、どう思う?お便りください。


最初に感じた違和感は大切

得られた情報から課題を絞り込む時に有効なのが、ファーストコンタクト時に感じ取る違和感である。青島刑事寄りでいうと「現場の勘」ってやつだ。

だいたい「コンサルタント」なんて横文字のよーわからん外部の人間が会社に来ると、9割の人がビビる。警戒する。そらそーだ。

こっちも警戒されてることなど百も承知で乗り込んでいく。どうやって警戒を解くかが最初のターゲットだったりする。

そんななか、えらい明るく出迎えてくれたりすることがある。従業員もみんな元気でにこやかに冗談を飛ばしてきたり。

その時の違和感がとても大切なのだ。


この流れで書くと、「妙に明るい」ということが違和感の源だなってすぐわかるのだけど、実際は、違和感の源に気づくのに時間がかかる。何度も脳内でリピート再生して、どこに違和感を感じたのかを反芻し、なんとなく言語化していく。

明るいってことが違和感の原因だってことに気づき、あんな明るいのは何か隠しているんじゃないかって思い当たって、従業員一人ひとりと面談させてもらう。なんてことをする。

ちなみにやたらと明るいその会社は、実際に遭遇したケースで、その後の調査でパワハラとセクハラが横行していることが判明した。

コンサルタントってコナン君と同じじゃね?

この「フラットに見る」力と「違和感に気づく」力は、ミステリー小説を読んでいる時と同じ感覚だなって個人的には思っている。

ミステリー小説の醍醐味の一つは、犯人は誰か?を文章から推理しながら読み進めることではないだろうか。

登場人物の言動や、事件の状況を抑えつつ、文面からほとばしる違和感をキャッチして、あれ?これ主人公が犯人じゃね?って気づく過程。アガサ・クリスティや宮部みゆきを始めとするミステリーの巨匠に対峙する時と、コンサルタントとして課題に気づく過程は何ら変わらない。

こんなアウトサイダーもいます

ちなみに、当時の上司は、ものすごく人間臭い人で、事実を捻じ曲げてでも自分の見たいように見る界の達人だった。

ならばコンサルタントとして不適格じゃないかって話だ。

私もよくコンサルタントやれてんなって思っていたのだが、この達人は、捻じ曲げて捏造した事実をクライアントの目を真っ直ぐ見て、いささかの動揺もなしに「フラットで見た」結果をプレゼンできる界の達人でもあった。

この2つのお免状を持っていたためにコンサルタントとしてやっていけていたのだった。

適職とは、息を吐くようにやってしまう自分の特性を見極めた仕事のこと

この上司が道義的にどうかという話は別として、結局、仕事というのは、自分が息を吐くように思わずやってしまう特性を活かしきれる環境にいるのが一番自分も周り(社会)も幸せだと思う。

よく、「人に喜んでもらえる仕事= 適職」だという方もおられるが、私は少し違う意見を持っている。

仕事をしていて人に喜ばれることってそもそも結構少ない。人に喜ばれる段階って最後フェーズだったりする。そこに至るまでにはひたすら泥臭く地味な作業があるのだ。人に喜ばれることを仕事のモチベーションにしていたら、果てしなく長いその地味な期間は我慢でしかなくなる。

「人に喜ばれても、たとえ喜ばれなくても幼い頃から息を吐くようにやってしまう特性を活かした仕事」というのが私が長年考えてきて出した適職の定義だ。

それでいうと、私は息を吐くように「なんでなんやろ?」って考えてしまうし、その延長で、「もっとこうしたらえぇんちゃうかな」って考えてしまう。世界の仕組みとかシステムを考えがちである。

前の上司は、息を吐くように「自分がいかにスポットライトの下に行くか」を考えてたし、それを実現させるためには事実を捻じ曲げられる。そして、それを嘘と感じさせないプレゼンができるのだ。

めっちゃディスってるみたいに書いてしまうが、言いたいのはそこではない。道義的にどうかはおいておいて、自分の特性を見極めること、それを活かせる職に就くことが幸せだよって話だ。

なので、ミステリー好きの方、コンサルタントをぜひご一考ください。

それか、探偵、刑事課あたり。

毛利探偵事務所、求人出してへんかな。

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