線のたび(8)
宙の子は、すれ違って行った何かを
見送ったあと、再び下へと進んだ。
あぁ、あの辺りかな?
段々と色が濃くなってきたなぁ。
あそこから降りてみよう。
宙の子は、近づくにつれて色がくっきりと観えてくるのを確かめながらグッとスピードを上げた。
宙の子は、深い、淡い、暖かく萌えている碧色の
雲のような塊の中に入って行った。
「なんだか、とっても優しい。
柔らかい翅の中に包まれているみたいだな…なんだろう、懐かしい香りがする。」
宙の子は、動きを止めて、漂ってくる香り
をゆっくりと吸い込んだ。
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