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「光」をデザインする人

加藤久樹さんのご職業は、ライティングデザイナーです。
インテリア・オフィス・商業施設・ランドスケープ・イルミネーションといった空間の「光」をデザインされています。光に関して加藤さんが思っていらっしゃることをお聞きしました。

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<光と影について>

言葉的には光と影はふたつに分かれていますが、その間は滑らかなグラデーションになっていると感じています。言葉にするのは難しいのですが「光と影」や「明るさと暗さ」など滑らかに連続している「そこのあいだを」人は動き生活しています。

私が設計するときも光と影は連続しているということ、またそのレンジ(振れ幅)をどれくらい作るかというところを意識しています。
例えば、ダウンライトを2台配灯して、ふたつの光の間はどれくらい明るさが落ちるのか、そこにどのようなグラデーションが生まれるのかを考えるようにしています。
屋内と屋外の光の使い分けについても空間を連続的に捉えています。外から室内に入るというシークエンス、その過程がどんな光景だったら気持ちが良いかが大切です。

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<光の感覚と間隔>

光のリズムや明暗の間隔が自分の感覚と合っていると、「心地よい」と感じます。
人工光源が普及する前はすべての人たちが太陽の動きに合わせて生活してきたので、共通の光を体験してきました。個人差はありますが、そこにはDNAに刻まれた共通の“心地よさ”があるのかも知れません。

光の設計において、器具の配置を机上だけでは決めないようにしています。
例えば、2m間隔の光だったらどんな感じかなと気にはなりますが、そうではなくて、ここに光の溜まりがあって、あの辺りにもあったらいいな、というイメージを先に決め、そこをメジャーで測りその感覚的なピッチを基準に配灯していくこともあります。
光の明るさや広がりのイメージを持ったうえで、図面に色鉛筆で光を描いていき、描いた光のイメージに合わせてこの光を実現できる器具はどれかと、メーカーのカタログから探していきます。

光をどのように捉えるのかというのは難しいですよね。
メーカーのカタログに 1/2 照度角やビーム角が表記されていて、その角度から先は光が消えて無くなっているように見えますが、実際はそこからどのようなグラデーションで光が消えるかが非常に重要です。また、光は三角形で平面的に描きがちですが立体的に捉えるべきです。

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そういった意味でも、実際の器具を見ていないと光の減衰していく感じ(グラデーション)はつかめません。白熱灯や蛍光灯などの従来光源と比較すると、LEDは光がすっと消えてしまうようなイメージがあります。器具と器具とのあいだの暗さというか、光の落ち方は器具ごとに個性があるので、そこはすごく気にしています。

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「“ 光と影 ” その間に無限に広がる光景を、人に寄り添いながら創り出していくことを目指していきます。」

加藤さんご自身の会社である加藤久樹デザイン事務所の HP に記されている言葉です。今回に語っていただいたこととリンクして、光と人に対する「温かな包容力」を感じる言葉 です。

実際に加藤さんが光の設計をされた、アパレル、雑貨、食器などを扱うショップ、style department_(スタイルデパートメント)についてもお話をお聞きしました。

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人は形があるものに目が行きがちで、形として捉えられない光は「良さ」を一度体感した人でないとわかってもらえないところがあります。照明/光の大切さをわかっていただけたクライアントや設計者は、プロジェクトの初期の段階から照明のことを含めて設計を始めてくれます。

今回のstyle department_は、何度も一緒にやっているインテリアデザイナー(西脇 佑氏 / 株式会社 LINEs AND ANGLEs)なのでとても進め易かったですね。プロジェクトの早い段階で声を掛けていただき、プランが柔らかい段階から一緒に話をしてインテリアデザインとライティングデザインの方向性を決めていきました。

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 style department_にて。左から、店長の須山さん、照明設計の加藤さん。
商品への光の当たりも重要ですので、入念なチェックが行われています。 ​

ブランドイメージがシンプルで素材にこだわった服作りですので、「インテリアにも過剰な演出はせずに服をメインに見せたい」という想いから、インテリアデザインもシンプルでディテールにこだわったプランとなっていきました。

照明設計はこれらの思想から、ベースとなる光は「美しい光のダウンライト」に、スポットライトは「素材感があるスポットライト」にこだわり、選んでいきました。

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マックスレイの素地のスポットライトは、本体の部材(フード、光源部、放熱部)が三分割で構成されているため、ネガティブに捉えると統一感が無いのかもしれませんが、私は、機能に合わせて分割されたデザインでむしろおもしろいなと感じていました。その辺りが洋服の作り方に通じるものを感じ、このプロジェクトでは「あの器具を使いたい」と早い段階で決めていました。
特長ある器具なので、合う空間と合わない空間はあると思います。器具がノイズに感じてしまう場所もあると思いますが、今回の空間にはそれは感じませんでした。逆に空間がシンプルだからこそ、「照明器具にテクスチャーがついている」のが良かったし、光も綺麗でした。

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ダウンライトに関しては、天井裏に光が漏れないようにと遮光カバーがついているところや、反射板設計がきちんとされている点など、丁寧に設計してあることが伝わり、その辺に好感を持ちました。

小口径にするためにレンズで光を制御して、反射板はあまり機能していないという器具も ありますが、そういう器具は光源が直接見えて眩しくなりがちです。反射板がうまく機能していると、一回反射板に当たって光が出ているため、ワンクッションあることで光が柔らかい印象を受けます。

最近の傾向の「器具の小型化」ですと、85φや 75φで器具の設計がスタートするのだと思うのですが、そこを敢えて100φで作られている。そのぶん光の質にこだわっている設計だと感じました。

照明デザイナーの理想論として、「器具の存在を隠し、必要な光だけがあればいい」という気持ちも当然あるのですが、光の出処がわからないという気持ち悪さもあるのかな、と最近思っています。
「太陽が出ているから明るいね」が普通の光景なのに、「太陽が出ていなくても明るいね」というのは不自然で気持ち悪いのではないかと。ロウソクや焚火や裸電球など、光の出所や在り処がわかることに安心感を抱く、そんな共通の感覚があると思います。
今回の style department_では、改めて光の在り方や照明器具の在り方について考えさせられました。

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カルチャーが集う街として知られる通称“奥渋谷”に 、2020 年 11 月にオープンしたSTILL BY HAND やコントールなどのブランドを展開する『 style department_(スタイルデパート メント)』 。

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「プレーン。シンプル。それでいて繊細」。 見せびらかすための物にはならないかもしれないけれど、日々の生活に少しの変化をもたらす物。そんな洋服をおとどけ出来たら。

そんなコンセプトで服作りをされているブランドです。
新たなカルチャー発信地として注目を集めている奥渋谷で、オープンにあたっては、「はじまりのための MAP」として、近隣エリアのショップをまとめて紹介した冊子を作成し、エリア全体を繋げて発信するという取り組みをされています。

店名: style department_
東京都渋谷区神山町 7-12 グランデュオ神山町 102
TEL:03-6804-9078
営業時間:12:00~21:00(月~土) / 12:00~20:00(日)
●店舗設計:株式会社 LINEs AND ANGLEs
●照明設計:株式会社 加藤久樹デザイン事務所
●照明器具:マックスレイ(ウシオライティング株式会社)



style department_でご使用いただいていますマックスレイの照明器具です。

STILL-BY-HAND_納入商品2

STILL-BY-HAND_納入商品1

■商品に関するお問い合わせ、照明プランに関するご相談はこちらまで。info@maxray.co.jp


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