見出し画像

春は、いつから。

世間一般では、季節の変わり目をどのように感じるだろう。僕は毎年、自分の中の基準に沿って、勝手ながら新たな季節が来たことを認定している。

蝉の声が聞こえたら。夏。
夕方の涼やかな空気と虫の声に触れたら。秋。
外に出た時、吐いた息が白くなったら。冬。

そして、ついこの間、僕は春を感じた。
在宅ワークの合間、昼ごはんを買いに外に出た時のことだ。少し寒いかもしれないから、厚着していた。そして、家のドアを開けたとき。体を包む空気が暖かく、理由もなく心が跳ねた。辺り一帯が日向におおわれ、薄暗く心の沈むような寒さとは無縁だった。


それだけじゃない。コンビニまでの歩いて10分強の道中で、ふわっと心地よい匂いがしたのだ。花の香りだ!と分かるとなんだか無性に嬉しくなった。マスク越しにも伝わる強い春の気配に、感慨すら覚えた。


春が来た。それはもう人間の根源的なところで、喜びを感じてしまうのだと思う。それに、日本人としてやっぱり楽しみになるのが、桜だ。まだ開花もしていない段階から桜が見れる、と思うとすごくウキウキしている自分がいる。あんなに儚くきれいな薄桃色はこの時期にしか見られない、と考えると早くその時が来ないかなと心待ちにしている。


そういう意味では、桜は咲いていない瞬間から桜であることを感じさせてくれる。もっというと、その散り際まで僕たちの心を支配し続ける、魅惑の花だと思う。春が始まった瞬間から、その終わりを告げるまで、心のなかの主役は桜なのだ。今年は何回、花見が出来るだろう。

春の始まり 思ったよりも暖かい日に花の匂いが漂ってきたら。またそこで桜を見たいと思ったら。

春の終わり 桜が散ったら。散ってから「もう散ってしまったか」などと考えたら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?