原発を廃止する代わりに2,800円/月の負担は受け入れられるか?

なぜこんなことを考えたのか。理由は福島県の原発事故による帰宅困難区域を目の当たりにして原発のことを考えたいと思ったから。

ではいってみましょう!

福島第一原子力発電所の災害に伴う2020年3月時点での避難指示区域は下記の通りです。ピンクのところは原則立入禁止です。(一時的な立入は可能)

画像1

☞福島復興ステーション「避難指示区域の状況」

私が今いる南相馬市小高地区は年間の放射線量が20ミリシーベルトを下回ったことから、2016年9月に避難指示が解除されて、戻ってもOK!になりました。(緑斜線の部分)

ですが、震災から既に5年が経過。別の地で再スタートを切った人も多く、特に子育て世代の帰還率は低くて、人口は震災前の4分の1に留まっているそうです。

さて、国は1年間の放射線量が20ミリシーベルトを超えるかどうかを避難指示の目安にしています。放射能の話をしていると、よく目にする単位が下の二つあります。

年間の被ばく線量を表す、ミリシーベルト(mSv/年)と

それを時間あたりに直した、マイクロシーベルト(μSv/h)。

避難指示の基準となる年間被ばく線量20ミリシーベルト(mSv)は3.8マイクロシーベルト(μSv)に相当するそうです。

☞環境省「放射線による被ばく」

福島に来て何となく気づいたんですけど、公園とか、市役所とか、至る所にこの電光掲示板みたいなのが設置してあって、温度計かのごとく、マイクロシーベルト(μSv/h)が表示されています。

さて、年間20ミリシーベルト(または毎時3.8マイクロシーベルト)が一体どんなもんじゃい?ってことなんですけど、私たちは普通に日常生活を送っているだけで、放射線を浴びてるらしいです。宇宙から、大気から、摂取する食物から。それらをまとめて自然放射線というらしく、平均して2.4ミリシーベルト/年くらいは浴びるそうです。

最近は虫歯の検査とかでもレントゲン気軽に撮っちゃいますけど、そんな感じで現代人の放射線被爆量は増えていて、人間ドック等でCT検査を1回受けると7ミリシーベルト近く浴びるらしいです。

環境省のサイトにこんなデータが出ていました。

画像2

調査の結果、1年間に受ける日本人の平均被ばく線量は5.98ミリシーベルトで、世界水準から見ても極めて多いそうです。なお上記数値は、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の影響は考慮されていません。

一体何ミリシーベルト被爆したらやばいんかいな、ということなのですが、ネットを漁っていると、100ミリシーベルト/年というのがちょいちょい出てきます。

一度に大量の放射能を浴びると、遺伝子は傷ついて修復できず、いろいろな症状が現れるそうです。その症状の一つにガンなどがあるそう。

ただ、人間は普通に生きててもガンになる可能性はあるので、ガンになったことと、放射能を浴びたことに、因果関係があるとは、被爆量が100ミリシーベルトでは言い切れないそうです。

つまり

100ミリシーベルト以下であれば、それが直接的な原因でガンになったとは必ずしも言い切れない、っていう、だけで

100ミリシーベルトなら安全、とは言ってない。

放射線被爆は少ないことに越したことないみたい。

で、じゃあ冒頭の避難基準となった年間の20ミリシーベルトって、誰が決めた基準なの?ってことなんだけど、

国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection、ICRP)という国際学術組織があり、そこが放射線防護に関する基準を作っているそうです。

で、ICRPは、各国政府に対して、年間20~100ミリシーベルト(mSv)の範囲で、避難指示の基準を決定するよう勧告しています。日本政府はこの勧告を踏まえ、避難指示の目安を20ミリシーベルトとしたようです。

翻って、福島第一原子力発電所の災害に伴う放射線被爆量は一体どうだったのか?

ネットを漁っていたらこんな記事が。

原発事故 克明な放射線量データ判明
3月11日19時32分更新
東京電力福島第一原子力発電所の敷地の外にある観測点で、事故直後の詳細な放射線量のデータが記録され、震災発生の翌日、1号機が水素爆発する1時間以上前から、数値が急上昇する様子を克明にとらえていたことが分かりました。
午後2時40分40秒には、1時間当たり4.6ミリシーベルトと、午後3時36分に起きた1号機の水素爆発のおよそ1時間前にこの日の最大の値を記録しました。

☞NHK NEWS WEB「東京電力 福島第一原発事故 関連ニュース」

1時間あたり4.6ミリシーベルトの放射線が放出されているとすれば、例の100ミリシーベルトには21時間で到達することになり、血液中のリンパ球が減少(=ウィルスや細菌などの感染症に感染しやすくなる)する500ミリシーベルトには105時間(4.4日)で到達するレベルだったので、まあまあやばい。

放射線人体への影響

☞中部電力「放射線がもたらす人体への影響」

そう、つまり、原発事故の避難は時間が勝負ということになる。

これらを踏まえた上で震災直後の避難指示がどのように出されていたかを見ると、刻々と避難指示の範囲が拡大されているのが分かる。当時は津波により発電所の全電源が喪失しており、リアルタイムでどれくらいの放射線が放出されていたのか、計測出来なかったみたいだ。

震災直後の避難指示
         
平成23年3月11日
19時03分 福島第一 原子力緊急事態宣言発令
20時50分 福島第一 県が半径2km圏内に避難指示
21時23分 福島第一 国が半径3km圏内に避難指示
         国が半径10km圏内に屋内退避指示
平成23年3月12日
5時44分 福島第一 国が半径10km圏内に避難指示
7時45分 福島第二 原子力緊急事態宣言発令
        国が半径3km圏内に避難指示
        国が半径10km圏内に屋内退避指示
17時39分 福島第二 国が半径10km圏内に避難指示
18時25分 福島第一 国が半径20km圏内に避難指示

平成23年3月15日
11時00分 福島第一 国が20~30km圏内に屋内退避指示

☞福島復興ステーション「避難区域変遷について」

最初の避難指示が出たのは3月11日の20:50。地震発生から6時間発生。半径2km圏内なので、最悪4.6ミリシーベルト/時に晒されていたとすると、この時点でこのエリアの人々は30ミリシーベルト程度被ばくしていたことになる。

最後の避難指示が出たのは3月15日11時。地震発生から93時間が経過。距離は原発から20-30kmまで。被ばくの影響は距離の2乗に反比例するそうで、放射線物質から2メートル離れれば1/16まで減少するらしい。

☞エステー「放射線の基礎知識」

じゃあ30キロだともう限りなく小さくなり過ぎて無視できるんじゃね?!と思ったけど、放射線は風によって遠くまで運ばれたりすることもあるらしく、、、距離が遠ければ大丈夫とは言え無さそう。とりあえず適当に放射線量を1/10にしたとして、被ばく量は0.46ミリシーベルト/時間×93時間=42.78ミリシーベルト。

どちらも、急性被ばくで人体に影響が出るレベル前に避難は出来たと考えてよさそう。

さて、現在の放射線量はどの程度なのか?

福島第一原発が立つ福島県大熊町(おおくままち)。町内の放射線量測定結果がホームページで公表されています。

大熊町

☞大熊町放射線量測定結果


色の説明

避難指示の基準となる年間被ばく線量20ミリシーベルト(mSv)は3.8マイクロシーベルト(μSv)に相当するので、上の色分けだと赤、ピンク、オレンジが該当します。まだちょいちょいある。

ちなみに、この大熊町含め、帰宅困難区域に指定されている地域の人口は約2万4千人。

国は帰宅困難区域の解除を2022年~23年に目指していますが、既に避難指示が解除された町村の実績を見ても分かる通り、帰還率は震災前の3割程度しか戻らないようで、原発で被害を受けた地域の復興への道のりはかなり厳しい。

これだけの多くの人の人生を巻き込むほどのリスクを背負って、原発を利用する必要はあるのでしょうか?

原発をぜーんぶ止めたらどうなるのか?

☞経産省「原発のコストを考える」

電気料金が上がります。

原発の発電コストは、その他の発電方法に比べると安いらしいです。

原発の発電コストは10.1円/1kWh

(原発コストは、福島第一原発の事故対応費用なども考慮した値段)

【火力発電のコスト】

- 石炭を使った場合が12.3円

- 天然ガスを使った場合が13.7円

- 石油を使った場合が30.6〜43.4円。

【再生可能エネルギーのコスト】

- 風力発電の場合が21.6円

- 太陽光(メガソーラーの場合)は24.2円。

安さでいけば「石炭」もいいレベルですが、環境負荷が大きいので×。「天然ガス」も悪くないコストレベルに見えるけど、今年の寒波で電気代が高騰したことの原因の一つに天然ガスの供給不足があったなど、安定供給に不安要素があり△。

という論理でベストミックス(組合せ)で原発を賢く使いましょう!っていうのが国の方針のようですが・・・

帰宅困難区域を目の当たりにして、もっと身の丈に合った電気の発電と使い方をするべきなんじゃないかと思わずにはいられなかった。原子力は万が一の事故が起きた時のリスクが大きすぎる。

色々サイトを漁ってたら、原発を仮に全部止めたら、試算としては電気代は70%~200%(これは再生エネに置き換えた場合)まで上昇するっぽい。

仮に70%の上昇なら、一人暮らしの平均的な電気代は4,000円/月なので6,800円/月となることに。+2800円/月アップ(年間で33,600円)です。

☞日経新聞「脱原発で2020年の電気利用金が70%アップも」

電気代を多く負担している人たちにとっては、よりインパクトが大きいので一概には言えないですが、少なくとも、私のような一般ピーポーにとっては、原発を全部止める代わりに、月2,800円増の負担を受け入れられますか?って話。

みなさんは、どうです?

私は、原発によるメリットよりも、帰ることのできない故郷を作るリスク、風評被害に苦しむリスク、廃炉に伴う汚染水処理をめぐる問題、将来に残す負の遺産を背負うことを考えれば、月2,800円の負担を選びたい。

どこに原発が立ってもおかしくなかった。帰宅困難は自分の身に降りかかってもおかしくなかったはず。


原発は本当に必要?


他参考サイト

☞NHK原発問題




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