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ドラえもんと真夏の夜の夢

いつも文章力がないのでスルーしてしまうnoteのお題ですが、今回は音楽のお題!音楽好きとしてはやるしかないでしょう!ということで #はじめて買ったCD のお話をしたいと思います。

はじめて買ったCD

私が小学生の頃、自分のお金ではじめて買ったCDはROCKでもPOPSでもなく、実はクラシックでした。

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ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が演奏するメンデルスゾーンの劇音楽「真夏の夜の夢」が収録されたこちらのアルバム。とにかく「真夏の夜の夢」が収録されていればよかったので、楽団とか指揮者とか気にせず買いました。クラシック好きからしたらとんでもない!のかな…?

クラシックの中で聴くのも弾くのもダントツに愛してやまないのはドビュッシーなのですが、この時はメンデルスゾーンが好きでこのアルバムを買ったのではなく、「真夏の夜の夢」がどうしても聴きたくて購入しました。

真夏の夜の夢

ではなぜ「真夏の夜の夢」が聴きたかったかというと、それはドラえもんが理由なのです。小学生がクラシックのアルバム?と思いきや、急に小学生らしくなってきました!
私は自他共に認めるドラえもん好きで、小学生の頃はドラえもん好きという理由で「のざえもん」というあだ名で呼ばれていました(笑)
そんなのざえもんの私が見た、大長編「ドラえもん のび太と銀河超特急」。この映画でメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の楽曲が数曲使用されており、そのことがきっかけでこのCDを買ったのでした。

大長編「ドラえもん のび太と銀河超特急」

この作品は藤子・F・不二雄さんが生前、最後まで手がけた遺作でした。次作「ねじ巻き都市冒険記」の執筆途中で亡くなったので、純粋にF先生が最初から最後まで手がけたのはこちらの作品ということですね。

ドラえもんの大長編って、妙にトラウマというか、ぞっとするポイントがあり、それもまた魅力なのですが(「アニマル小惑星」のピンクのもやとか!)、こちらも宇宙のロマンと夢と少しの気味悪さが絶妙に入り混じった作品です。

ミステリートレインという、最終目的地は乗客には内緒というコンセプトの寝台超特急に乗って冒険が始まるのですが、この汽車、もちろん普通の汽車ではありません。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を彷彿とさせる銀河を走る汽車なのです。冒頭からすでにワクワクの中に薄気味悪さが漂っていて、途中どこでもドアが宇宙の果てすぎて使えなかったり、車掌さんがいなくなったり、のび太たちは宇宙の果ての銀河をあてもなく漂うことになってしまうのです。

でも実はこの事象自体がミステリートレインのアトラクションで、「ドキドキワクワクのアトラクションはいかがでしたか?」というアナウンスの後、最終目的地であるディズニーランドも顔負けのとてつもない規模の遊園地「ドリーマーズランド」に華々しくたどり着くというもので、F先生にやられたー!という感じでした。そのあとも、人に乗り移って意識までコントロールする敵が出てきて、あのスネ夫が敵になってしまったり、何回もドキドキさせられる映画なのです。

ドラえもんと真夏の夜の夢

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ドラえもんって私が覚えている限り、今まで劇中にクラシックを起用したことはないと思うのですが、なぜ今回はクラシックを使用したのでしょうか?どう考えてもミスマッチだと思うじゃないですか。
でも実にピンポイントでの使いどころが本当に上手くてドラえもんの映画用の劇版だと錯覚します。この時の音楽を選んだ方に拍手したいです!

こちらは物語冒頭の、真夜中に汽車が空から裏山に降りてくるシーンで使用された楽曲。

冒頭の管楽器がまるで汽笛のようで、裏山から見下ろす全てが眠りについた街の中で、たったひとりで行く冒険への旅立ちの合図のような高揚感と、あの世へのお迎えの知らせのような不安感が入り混じったイントロで始まります。その後の弦楽器の16分音符のメロディが汽車のシュッシュッという音とリンクし、静かにこの世に別れを告げるように、なすすべもなくあの世に連れて行かれる感覚になるのです。そしてその静けさの中から突如祝福のような壮大なアンサンブルが奏でられ、汽車の素晴らしさとワクワク感が表現されています。まさにのび太の心とリンクしているかのような使い方で、もしかしてこの音楽ありきで映像を作ってるんじゃないか?と思ってしまうほどです。(いわゆる音先ですね)

他のシーンでは、楽しい遊園地が一転して見えない敵に乗っ取られたカオスな遊園地になってしまった場面で流れるこちら。見えない敵に乗っ取られたアトラクションのキャラクターたちがまるで行進のように遊園地内を占拠している時に流れる曲です。「妖精の行進」というタイトルとたしかにピッタリです。

こちらも同じシーンの中で流れる曲で、敵に見つからないように隠れながら移動するのび太たちの心を表すかのように、静と動が見事に表現された1:23あたりからの盛り上がりはゾクゾクします!

藤子・F・不二雄先生と銀河鉄道

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」での汽車はあの世へ向かう汽車でしたし、その「銀河鉄道の夜」をオマージュしたと思われる、ドラえもんの単行本に収録されているおそらくこの大長編の元ネタであろう「天の川鉄道の夜」では、廃線になる列車の記念切符をドラえもんに内緒でのび太が勝手に使ってしまい、片道切符でハテノ星雲の宇宙の隅で降ろされ帰れなくなるという内容。

そしてこの大長編「銀河超特急」を書き上げた後亡くなってしまったF先生。なんとなくですが、自分がもうすぐこの汽車に乗らなくてはいけないことも気づいていたんじゃないかなと。F先生のSF、"すこしふしぎ"と合間って真夏のうだるような暑い夜に見る夢のような、この世とあの世の境界線がぼやける感覚になるんですよね。
F先生は今あのドリーマーズランドで大好きな恐竜、西部劇、その他たくさんの夢に囲まれて遊んでいるのかなあ。

はじめて買ったCDがいまの自分に繋がっている

何を隠そう私は「クロノ・クロス」のオープニングムービーの映像にビタッとハマった「CHRONO CROSS〜時の傷痕〜」に衝撃を受けて、今こうしてその曲を作曲した光田さんの会社であるプロキオン・スタジオに在籍しているわけですが、こう振り返ってみると昔から映像と音楽の関係性に魅せられていたんだなということを改めて感じることができました。

小学生ながらあまりにも衝撃的だったので「ドラえもん のび太の銀河超特急」で使われているこの音楽がなんなのかどうしても知りたくて、録画したビデオのエンドロールのクレジットを一時停止して、カチカチ揺れる画面とにらめっこしながら頑張ってメモしたことを今でも覚えています。
CDショップでそのメモを見ながら探し、見つかった時の嬉しさったらなかったです!

学生の頃にオーケストラの楽曲を作る課題が出た時は、初めてのオーケストラ編成の作曲だったので真っ先にこのメンデルスゾーン「真夏の夜の夢」のオーケストラ譜を借りて勉強したものでした。

これが私の #はじめて買ったCD の想い出でした。

こうやって振り返るとあの頃の体験がしっかり今に繋がっているんですね。子供向けだからと手を抜かず、しっかり隅々までこだわって作ってくださったスタッフの方々のおかげで今の自分が形成されてるんだなあと。
物作りに携わる人間として、改めて良いものをしっかり届けるということを考えさせられました。

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