起業の天才
リクルートを起業した江副浩正さんの生涯が描かれた本が、気になったので読んでみました。
江副浩正さんは、大学を出てすぐに会社を作った。ゾウが「人間とはなにか」が分からないのと同じで、「経営者とはなにか」がよく分からなかった。ドラッカーの本から懸命に学び、純粋に実行した。
江副さんの経営は、「顕教」と「密教」があった。顕教が来るべき情報化社会の先頭に立つという超理想主義だとすれば、その情報を利用した株の空売りでこすっからく儲ける部分が密教。多面性が特徴。
Amazonのジェフ・ベゾスが無名のベンチャー、ファイテルの時にリクルートのカウンター担当だった。ファイテルで株取引のオンライン決済を学び、次に大銀行のシステム開発に従事、その後にヘッジファンドを移籍した。いずれは、コンピュータを使ったビジネスで起業すると決めていた。
第一次産業革命は、農業社会から工業社会へ歴史を開いたが、情報革命は工業社会の次に来る知識産業社会。知識産業が主導する未来社会を形成する。21世紀への階段
創業時に入居していたビルは夜10時にシャッターが閉まって追い出される。みんなで行きつけの飲み屋に行って会議の続き。みんなが江副の会社でなく、自分の会社だと思っているから、自分が主役。楽しくないはずがない。
シリコンバレーのあるVCが若い起業家に必ず出す宿題。君のアイデアが素晴らしいのは分かった。だが、それを実現するにはチームが必要だ。君より優秀な人間を3人集めたら、カネを出そう。
ユニコーンを立ち上げる人間は、優れたビジョンと、そのビジョンの実現のために優秀な人間を巻き込んでいく力を備えた人間でなくてはならない。
国富論は、個々人が自己の利益のために働けば、資本は富の生産と分配のために有効に働く。政府による規制や統制は、小さい方が望ましい。各々が自らの利益を追求していれば、あたかも「神の見えざる手」に導かれるように、国全体として最高の利益が達成される。
ピーター・ティールの言うとおり、ビジネスに同じ瞬間は二度とない。次の江副浩正が広告だけの雑誌というメディアを作り新たな市場を開拓することは、もう二度とない。
念願の占有スペース、自分たちの白を2フロア139坪手に入れた、銀行は不動産を持ったとたん、あれだけ渋かった融資の審査が、拍子抜けするほど甘くなった。
巨艦ダイヤモンド社が攻めてきた今こそ、総力戦略の時だと江副は腹を括った。総力戦略とは、新しい市場や産業を創造し、最初から最後まで業界トップの地位を得て最大の報酬を得る戦略。2位はすなわち死である。
経営の三原則
1.社会への貢献
2.個人の尊重
3.商業的合理性の追求
松下幸之助いわく、人は誰でも得意なことと不得意なことがある。誰に、どの仕事を、どこまで要望するかが大事。
江副は、社員にこうしろと言わない。社員が常々、不満を持っている事業や、自分がやってみたいとか変えなければいけないと思っている事柄について、君はどうしたいの?と問いかける。
報酬制度は、社員のモチベーションを高めるほか、「みなさんは今回、素晴らしい成果を上げられたわけですが、その秘訣はどんなところにあったのでしょう?」と聞き、営業成績を上げる秘訣を話してしまう。
情報の非対称性をなくす。街の不動産屋や新聞をすっ飛ばし、デベロッパーと買い手をダイレクトに結びつけてしまう。
江副は、若い社員たちにクライアントと飲み食いする「外飯・外酒」を奨励した。世間知らずの若い社員をお客様に育ててもらう。
住宅情報は、8号から200円の有料にした。全額を書店の取り分にした。売れた分だけ書店は丸儲け。リクルートは、不動産会社から広告料で十分潤っている。
ランチェスター戦略、集中の法則。ドイツのホルクスワーゲンが経営に応用して大成功した。弱い企業が大企業に勝つには、まず限定した市場で40%のシェアを取ること。
ネット社会の本質は、通信の常識であった、遠近格差が消えること。利用者が欲しているのは、Aデパートで何を売っているかではなく、靴を買おうとしたらどこが安いかだ。
学生に、君たちは生まれて22年間、先人の知恵、歴史を学んできた。でも23歳からは、歴史を作る。この会社ならできる。一緒に日本を、世界を変えましょう。
Different Heartbeat ディファレント・ハートビート、心臓の鼓動が普通の人と違う人。常人とは全く異なる発想をする宇宙人のような人間を英語でそう言う。
最高の情報サービス会社を目指している我が社は、理系の人材が喉から手が出るほど欲しい。クレイのスーパーコンピュータを2台も持っている会社はそうそうない。これで、コンピュータ好きの学生が採用できる。そう考えれば安い。
高い洋酒など贈り物で届くが、江副の贈り物はトウモロコシ。2週間前には丁寧な手紙を送る。戦時中のひもじい思いをした世代には懐かしい。賄賂とは言われない。
一度もサラリーマンを経験していない江副は、日本的な資本主義の風土を知らない。知っているのは、成果をあげる責任あるマネジメントこそ全体主義に代わるものであり、我々を全体主義から守る唯一の手立て。というドラッカーの教えだけ。
エンジェルは、起業家を鍛える。毎月レポートを提出させ、若い会社を成長に導く。会社が次のステージに進むときには、創業期を支えた「自分より優秀なメンバー」をクビにして、もっと経験を積んだ別の人を雇えと助言する。
自分の仕事は自分で作れの精神は、リクルート用語にすると、「圧倒的な当事者意識」または、「社員皆経営者主義」となる。
半値八掛け2割引
証券会社の格言で、市場が暴落すると株価は、高値 x 0.5 x 0.8 x 0.8 = 3分の1 まで下がる。
恥知らずの集団、上司や世間の目を気にせず、臆面もなく全力でバットを振る。でも全力で振り続けていれば、そのうちホームランが出る。
本当に買いたい物の広告は、おカネを払ってでも手に入れたい「情報」になる。Googleが登場する38年前に、江副は、マッチングの可能性に気づいた。日本的な経営の限界にも気づいた。
自ら機会を創り出し、機会によって自ら変えよ
江副浩正さんの経営者としての経験が、多くのエピソードと共に書かれていて、とても参考になる1冊です。リクルート事件の詳細も分かるので、勉強にもなりオススメです。
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