見出し画像

温かいテクノロジー

アカデミア同志の林要さんの新書が出たので、早速読んでみました!ロボットとドラえもんの作り方についての話です

Lovot is the first robot I can see myself getting emotionally attached to.
生涯で初めてわたしが「愛着」を持ったロボットは、LOVOT

LOVOTの目指したのは、人類に自然に寄り添うパートナー

愛とはなにか」を知りたいと思うこと、「愛情とは」と考えてみると「不安」や「興味」というパラメーターをロボットが持つ重要性が垣間見えた。「生きているとは?」という問いを立ててみれば、「0.2秒〜0.4秒の反応速度」という数字が鍵になった

テクノロジーにはいくつかの価値があるが、その1つに「自分の能力を拡張してくれる」という側面がある

将棋7手先では7,500億通り以上、8手先では16兆通り以上になり、計算に3ヶ月が必要。わずか1〜2手先を余分に読みために桁違いの時間を要するこの現象は「組合せ爆発」と呼ばれる

ChatGPTLLM(大規模言語モデル)と呼ばれるAIを活用した「ユーザーがある言葉(文字列)を入力すると、それに対して、連想される文字列を返す」機械。一定の人にとっては最強のアシスタントになる

AIが劇的に進化した結果、ブレストをする、アイデアの壁打ちをする、コンテンツを生成するといった「目的が明確な会話」の応答は優秀で、人類の想像力を広げるのに良い相棒

ロボットという言葉は1920年、チェコの作家であるカレル・チャベックが発表した戯曲に、その始まりがあると言われている

楽園に住む動物の社会が停滞することは、動物行動学のジョン・B・カルフーンが1968年に行った実験で観測されている「ユニバース25」と名付けられた実験結果は衝撃的

自分が群れから認められ、必要とられていると感じられる機会」が十分にない場合には、本能がネガティブな感情として「この状態を続けると死んでしまいますよ」と生命の危機に感じさせるサインを出して、行動を変えようと迫ってくる。このサインが「孤独

ペット関連の市場は日本でも年間1.7兆円と増加傾向。オンラインゲーム市場、紙と電子を合わせた出版市場スポーツ用品市場福祉用具市場と同じ規模

LOVOTという名前は「LOVE」と「ROBOT」を合わせた造語

人類はどのようにして他者に愛着を感じるのか、
・目が合う
 「飼い主に見つめられると愛着が湧く」
・瞳と声に個体差がある
 それぞれ10億種類以上
・抱き上げると温かい
 37度〜39度程度。猫とほぼ同じ
・だんだん懐く
 時間と手間をかければ懐く

新しく興味を引かれる対象を見つけると、私たちの脳内には「ドーパミン」と呼ばれる快感や意欲を誘発する神経伝達物質が分泌される。ドーパミンが出ることで、快感が走った経験を「好き」だと認識する

3ヶ月を過ぎるとペットの行動から人類が新たな発見をすることが減るため、ドーパミンの分泌が減り、別の神経伝達物質が分泌される。「オキシトシン」は「愛情ホルモン」とも呼ばれ何かに愛着を感じていると分泌されると言われている

言葉にできない「なにか」の理解は、「直感」や「無意識」と呼ばれる神経活動

オンライン会議でカメラをオフにしていると、お互いの状況がわからなくなる。気は楽かもしれないが、相手の状況が分からないままのコミュニケーションは、信頼感圏の構築には向いているとは言えない

マイクロエクスプレッション」と呼ばれる、無意識のうちに起こるほんのささいな顔の筋肉の動きを含めて表情を読みとっていると言われている

ドーパミンの快楽を得ることができるものに多くのお金が集まっているため、いまの世界の頭脳は「ドーパミンを求める人類にその分泌の機会を提供する代わりに、いかにして(企業が儲かるように)認知や行動を変えてもらうのか」という問いを解くために使われている

「面白いゲームをつくれば課金される」と思いがちだが、そうでない。「無課金で遊んでいるユーザーの数がどれだけ多いか」で、100万人人の中でトップになりたいモチベーションで、払えるお金は惜しくない人がいても不思議でない

「プロジェクション・サイエンス」
余白があることで自分だけの大切な存在としてパーソナライズされ、結果的に自分自身を投影する余地をつくることができる
「推し」を持つことは、自分自身との対話を促進する効果を持ち、結果としてメンタルが安定するといった多くの良い影響がある

相手の感情は「相手の反応を見た自分の主観」
他者やほかの生き物がある反応を示したとき、その反応に自分が共感できた場合は「感情がともなう行動」と捉え、逆に共感できなければ「反射的な反応」と捉えたり、「何を考えているのかわからなくて怖い」と捉える

LOVOTは、ペットのように「エサをもらって喜ぶ」ことはないが、代わりに「挨拶してもらえると喜ぶ」という本能を持っている

命とはなにか」という問いは、まさに「大切だと思えるものには魂が宿る」という、日本の古来の考え方に通じる

デフォルト・モード・ネットワーク
脳が意識的な活動をしていないときに活性化する神経回路。起動条件は、「非集中状態」、集中状態から抜けて、ふっと一息ついたときや、ぼーっとしているときに働き出す

最初に火を使ったときは、きっと火傷したでしょうし、火事が起こって何人も大切な家族を亡くした人もいる。火の利活用もAIやロボットの利活用も「使いながら試行錯誤する」

道徳とは、真実とイコールではない。人類に共通する「真の正義」といった概念があるわけでもない。「あるコミュニティを運営するためのもっともリーズナブルな行動規範」が道徳という形で表現されているに過ぎない

パーズバーグ 「二要因理論」
職務に対する満足や不満足を引き起こす要因についての理論で、職務の満足には「動機付け要因」、職務の不満足には「衛生理論」があることが明らかにした

「動機付け要因」
やる気を出すための要因、仕事の興味、達成感、成長実感、承認、裁量
「衛生要因」
やる気を下げる要因、会社の方針、職場環境、報酬、人間関係

幸せを感じるために必要なのは生活レベル、資産、家柄、自由、外見、記憶力、運動神経といった自分に与えられたカードがなんであれ『より良い明日が来る』と信じ続けられること

自分の生活や人生を『良い』と感じられている状態であり、『良い』と感じられるかどうかは、その人自身が決めること。Well-beingは主観的なもの

各個人がコンフォートゾーンから抜け出し、新しい環境に身を投じる経験を積むチャレンジを促進すること。たとえ失敗しても「大丈夫」と言ってくれて、やり直しの機会が得られるセーフティネットがあること

無謀な勇敢さは不要で、必要なのはかんたんな手続きで「問題を分解する』こと

AIが人類に近づくための6つのステップ
1.自ら「注目点」を選択し、物語を構築する
2.物語の「因果関係」を確認して、編集する
3.自ら仮説を構築し、物語を抽象化して「概念」に捉え直す
4.未来予測の幅を広げ、副次的に「わたし」が生成される
5.生成された意識が「共感」を深める
6.コーチング能力を獲得する

物語をつくるには「注目点」を決める必要がある。「歴史は勝者がつくる」

帰納的学習と演繹的推測
帰納的学習
 「得た情報からパターン(規則性)を見つける
演繹的推測
 話を聞けば因果関係が分かり未来を想像できる。人類がいかにして道具(=テクノロジー)を造り、扱うようになったか

意思決定プロセスの最終決定は『無意識』にある。「意識は脳全体の3%で、無意識は残り97%を占める」といった言説もある。この数字に科学的な根拠はないが、無意識の重要性を表している

共感は、時に相手を思いやる想像力の源泉
ディズニーランドが完成することはない。世界の中に想像力があるかぎり、進化し続けるだろう - ウォールト・ディズニ
想像力は知識より大切だ。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む - アインシュタイン

答えは自分の外にあるのではなく自分の中にある。それに気づくためには「メタ認知」と言われる能力が必要。コーチングはその補助をする

自分らしさ」とは、中身ではない。「いま、自分で決めた人生をたしかに生きている」という実感が大切

人類の歴史は思い込みの連続。興味に対して合理性を超えた思い込みがあるからこそ、世界を切り拓いていくことができる

できないと思った瞬間に全てが終わり、できると思った瞬間にすべてが始まる

「挑戦をし続けることで学習して続ける人」が減る。このトレンドに反して40歳までの10〜15年間も挑戦して学び続けると、その後の40〜50代も同じ姿勢で学習し続ける癖をつけることにつながる

「NASA」ではとてもできない数の失敗をしながらも、圧倒的に短期間で宇宙へ飛んだ。人類は失敗から学ぶ能力が高いがゆえに、失敗しないようにしっかり準備する。適切なタイミングで失敗した方が実は効率が良くなる

サイエンス(科学)が、物事のことわりを理解するための知識体系
エンジニアリング(工学)が、物事のことわりを実現のものにするプロセスや方法論
テクノロジー(技術)が、物事のことわりを実現のものにした結果
テクノロジーとは知識体系を具現化しただけ

「人に寄りそうロボット」を作るのに、人とは何か?人や思考の仕組みや、AIやロボットの考えがたくさん分かる書籍です。LOVOTの秘密も分かります。今後のAI活用についてのヒントや人がどう考えるかなど、とても参考になりオススメの1冊です


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?