見出し画像

「愛の不時着」VS.「エミリー、パリへ行く」気になるあのシーンを分析する

「愛の不時着」と「エミリー、パリへ行く」は、どちらも昨年、Netflixで大ヒットとなり、話題となったドラマであるが、ドラマの中で、同じ小道具を使いながら、全く別の意味を持たせているシーンがある。

その小道具が、女性の下着、あの「ブラジャー」である。

「エミリー、パリへ行く」では、第3話「セクシーか、性差別的か」にそのシーンがでてくる。
エミリーは、広告キャンペーンの依頼主がセクシーだというきわどい表現は、女性から見ると性差別的と受け取られると指摘する。しかし、彼はそれになかな納得できずに持論を展開し、エミリーに高級下着ブランドの「黒いブラジャー」を贈ってくる。『セクシー?or  性差別的?』というカードまで付けて。これには、さすがのエミリーも辟易するという、まさに、絵にかいたようなセクハラ・シーンである。
エミリー曰く、「ありえない」もちろん、視聴者もそう思うわけで、「セクシー」に関する男女の感覚の違いを喜劇として描いている。

「愛の不時着」では、エピソード2で、その小道具が出てくる。
リ・ジョンヒョクと第5中隊を説得し、彼の家に匿ってもらうことになったユン・セリ。しかし、図々しく、日用生活用品はあれがないと困るといろいろと要求が多いのであった。そこらあたりを、北と南の生活レベルの違いを見せつつ面白、おかしく描いている見どころのシーンが満載だ。
なんだかんだ言いつつも、不愛想なジョンヒョクが、何も持ってないセリに日用生活用品を買ってきて、さりげなく渡すシーンがある。
ジョンヒョクが帰った後、セリがそれを、開けてみると、中から、シャンプーや洋服、化粧品に交じって、赤いブラジャーまで出てくるのだ。そこで、そのブラジャーのサイズを確認しながら、セリが、「オモ。こんな過大評価を。まあ、大丈夫だけどね」とにんまりとほほ笑むシーンがある。

この後、セリは、ジョンヒョクが買ってきてくれた薬で傷の手当てをしながら、彼の優しさを感じるわけだし、後のネタバラシで、ブラジャーのサイズは、市場のオバサンが適当に見つくろっただけのことだとわかるコミカルな仕掛けもされている。だから、このシーンは、どこをどう解釈しても、視聴者の誰が見ても、性差別的とはならない。

しかし、ここで、あえてわたしは問題提起?したいと思う。では、作者は、なぜわざわざ「赤いブラジャー」のシーンを入れたのだろうか?

そもそも、メロドラマなのに、ラブシーンもあまり多くはなく、まして、性的なことを思わせるような、2人がいつどこで結ばれたのかも明言を避けているドラマなのに、なぜ小道具とはいえ、ブラジャーを出す必要があったのだろうか。しかも、赤で、あの色で??

当初、わたしは、それは、リ・ジョンヒョクが、セリのために必要だろうと、市場で下着を買おうと思ったものの、ドキマキしてしまう純情な様子を見せて、笑いを誘いながらも、好感度をあげる戦略なのではと考えた。

しかし、どうもそれだけではないらしい。
あのシーンは、「赤いブラジャー」を見たときのユン・セリの反応が可愛いという男性目線からのレビューも多いのだ。あまりにも可愛くて、つい何度もみてしまうと若い男性がYouTubeでも挙げて、友達にもすすめていた。
そうやって、ユン・セリを可愛いと認識した男性視聴者たちは、彼女が、それまで、いろいろやってきた傲慢でわがままな行動もみんな不安の表れだったんだと解釈して許してしまう。
いわゆる「ぬりかえ」なのだが、ここで、セリの好感度を上げてしまうという仕掛けが隠されているのではないかと思うようになった。

そんなわけで、この「赤のブラジャー」を使ってのあのシーンは、女性目線と男性目線での解釈は違って当たり前と予想しながらも、リ・ジョンヒョクの純情さをアピールしつつ、ユン・セリの可愛らしさを強調するという二方面作戦を見事に成功させたのではないかと思うのだ。

そのために、このきわどい小道具を使ったのではないかと思うのだ。
性差別的か、セクシーかは、モノや言葉ではなく概念なのであり、その概念はジェンダーの違いから、なかなか、理解が難しいのだが、お互いに理解しあえるのなら、もっといいものが生まれるのではないかという実験をすべきではないだろうか。少なくとも、ドラマでは。

さて、「エミリー、パリへ行く」の方では、このセクハラで勘違いの依頼主だが、シーズン1ではいろいろあって、彼の持論にも変化の兆しが見えはじめている。たぶん、シーズン2では、彼が変わっていく姿を見せてくれるのではないかと思う。それにしても、あの贈り物は、日本でやったら、即刻レッドカードだけれど、フランスではいいのかと思われては噴飯ものとフランス人が、炎上騒ぎになるのも無理はないと思った。





最期まで読んでくださってありがとうございます。誰かに読んでもらえるなんて、それだけで嬉しいです。もし、気に入っていただけたら、スキしていただければもちろんもっと嬉しいです。よろしくお願いします。