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授業アイディアー「花咲じいさん」で授業をしてみた

 こんにちは。日本語教師のはやしえみです。
 

 今日は学期末や、テスト終了後など、ちょっとした息抜きに使える授業のアイディアをシェアしたいと思います。

 息抜きとは言え、「授業」なので、楽しいだけで終わってはいけないし、かと言って、いつものカリキュラムから離れて普段できないことをやりたいし・・・というときにぴったりな活動だと思います。
 
 私は45分×4コマで授業を行いましたが、それぞれをパーツだけ取り入れられてもいいかと思います。

 私のアイディアを公開しますので、もしここをこうすれば?と言うのがあれば、ぜひ教えてください。

 なお、この中で私は市販教材をアレンジして使っていますが、勤務校で「授業目的公衆送信補償金制度」を利用している(はずです)(?)。ただ、よくわからないので、著作権的に問題があれば、教えていただけるとありがたいです。

授業の概要

 日本の昔話「花咲かじいさん」を題材に読解と動画鑑賞のような受容活動とディスカッションや発表など産出も取り入れて総合的な活動を行いました。

 私はオンライン授業をしましたが、教室でも十分できる活動です。

レベル:初級後半〜中級(活動の内容を工夫することで、もっと上のレベルまでできると思います。)

時間:45分✖️3~4コマ

Can-do
簡単な物語を読んで、理解することができる。
手持ちの表現を使って、理解できていないキーワードや表現の意味の説明を求めることができる。

二つの動画を見て、違うところを指摘することができる。
伝えたいことの要点を伝達する仕方を考えることができる。その際、使える言語能力を総動員して、表現のための手段が思い出せる。

授業の大まかな流れ、活動
1、花咲じいさんの読解
2、花咲じいさんの動画鑑賞
3、発表

教材・教具

花咲じいさんの読解文

花咲じいさんの文章は「青空文庫」にあります。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/files/3391.html

にほんご多読ブックス レベル2にも「花咲じいさん」があります。
https://tadoku.org/japanese/book/2434/

私は「日本語学習者のための読解厳選テーマ25+10 初中級」の第2部4を使いました。
https://www.bonjinsha.com/wp/dokkai10%EF%BC%9A%E8%AA%AD%E8%A7%A3%E5%8E%B3%E9%81%B8%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%9E10

花咲じいさんのアニメ動画

 今回、私が使ったのは下の二つです。どちらも無料で公開されています。他にもいろいろありますが、なぜこれを選んだかは後述します。

ちなみに、NHK for schoolの「おはなしの国」もいいかと思うのですが、1人で「お話」しているので、自分で話者を想像しなければならず、アニメより少し難しいと判断しました。次回はこちらを使ってやってみたいとも思っています。

ワークシート(シートではない?)

Jambord と Googleスライド(教室でやるなら、紙とペンでもできます。)

1コマ目 花咲じいさんを読んでみよう!

 便宜上1コマ目と書きますが、1.5コマくらい使い、次のような流れで行いました。

授業手順
1、導入

2、はなさかじいさんを各自読解
3、大意の確認

4、精読
5、理解の確認
6、やさしいおじいさんと意地悪なおじいさんの対比ワークシート
7、絵を見て再話

1、導入
①「昔話」という漢字を見せて、読めるかどうか?意味がわかるかどうかを質問しました。
→読める学生がいたので、その学生に説明してもらい、私が確認。
②日本の昔話で知っているものがあるか?と質問しました。
→桃太郎と浦島太郎、竹取物語がでました。
③「花咲じいさん」を知っているか? と聞いてみました。

→誰も知りませんでした。
④では、「花咲かじいさん」というタイトルからどんなお話だと想像する?」かと質問してみました。
→ 「花咲か」を「咲かせる」ではなく「咲かない」と解釈し、「花屋なのに、花が咲かなくておじいさんが困った」と答えた学生がいて、クラスの雰囲気が和みました。こういう学生に助けられますね。

⑤「[花咲か]は[花が咲く]の活用だと考えたのは素晴らしい!」と④の学生を褒めました。全体に向かって、ただしこれが本当に「花が咲かない」という意味なのかどうかをお話を読んで考えてくださいと促し、導入としました。

2、各自黙読
黙読の時間をとって、学生それぞれに読んでもらいました。

3、大意の確認
 Jambordで絵を話の順番通りに並べ替えるタスクを課しました。このイラストは「日本語学習者のための読解厳選テーマ25+10[初中級]」にあるものです。

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 1人ずつでも、ペアでもグループでもできる活動ですが、ただ並べ替えるだけでく、なぜその順番にするかを話してもらうには相手がいたほうがいいと思います。下が完成図です。

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 一度読んだ後は、ペアでやっても順番が少し違うグループがありました。

4、精読
 普通の精読授業です。ただし、語彙導入はなしで、出てきたものを確認しました。

 また、「昔々ある所に〜がいました。」のような昔話に特有のものは書き出しました。

 導入時に「花咲かじいさん」の「花咲か」は「花が咲かない」の省略かどうか?と言う問題を出していたので、ここで、「花を咲かせる」と言う使役の確認もしました。

5、理解の確認
①精読の前に並べたJambordの絵が正しいかどうかもう1度確認。全ての学生がここで、自分で正しい順番に直すことができていました。

②教科書の内容正誤問題。◯でも×でも、その理由を話してもらいました。

③花咲じいさんの物語には「やさしいおじいさん」と「欲張りなおじいさん」の2人が出てきますが、文脈でわかるところは単に「おじいさん」と省略されています。

 それが「やさしいおじいさん」を指すのか、「欲張りなおじいさん」を指すのかを読み取る問題をしました。

 こちらもJambordでやりました。
問題は背景設定し、「ア」「イ」などは付箋の機能を使っています。

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 ちなみに、クラス授業でこのような活動をする場合、自分たちのグループはどのボードを使って作業をするのか、しっかり確認して名前を書かせるなどしたほうがいいです。私は別の授業で多くの学生が1枚のボードに集まってしまい、カオスになったことがあります・・・。

④「やさしいおじいさん」と「欲張りなおじいさん」がしたこととその結果を表にまとめるワークシートをしました。これは最終的な確認で、できるだけ本を見ないで書いてみる個人ワークにしました。

 6、再話
 最後に、Jambordの絵を見ながら花咲じいさんの再話をしました。この活動も個人レッスンでもペアでもグループでもできると思います。比較的単純な話なので、うまく話せていました。


2コマ目 花咲じいさん動画鑑賞

 こちらも便宜的に2コマ目としますが、実際には2コマ目の途中からで、1コマ半くらい使いました。

 昔話は口から口へ伝えられると言う性質からか、大筋は同じでも、細部が違ったお話がいくつもあります。まず二つの微妙に違う動画を鑑賞し、その違いを聞き取る練習をしました。

1、動画鑑賞

 まずはこちら。これを選んだ理由は登場人物をはじめ、出てくる表現の多くが1コマ目に読んだ読解文と同じだからです。

 2つ目に選んだのはこちら。絵に味があって、親しみが持てます。そして、昔話のお二人の声が懐かしくて、私的に最高です(笑)!

 ですが、私がこれを選んだ理由は呼び名が「正直」と「意地悪」と言う別の語彙になっていること、少し聞き取りにくい表現が多用されていること。そして、結末が読解文や1つ目の動画とは全然違うのがポイントです。

2、グループ活動→発表

 動画鑑賞が終わった時点で、こちらが何も言わなくても、「1つ目と二つ目は違う!」などと言う学生がいて、「しめしめ」と思いながらのグループ活動開始でした(笑)。

 グループで話して作業をしてもらったのは以下です。


①2つの動画の違いをグループで確認→ Googleスライドに書く→全体で共有

 →このタスクはほとんどが問題なくできていました。違いは見つけられたものの、それをどう日本語で書いたらいいかわからないと言う学生もいて、他グループの書き込みを見ることで、良い気づきがあったと思われます。

②このお話の伝えたいことは何か?テーマは何か?
 1つ目と二つ目のように細部が違うことによって、テーマが変わったかどうか? ディスカッション→Googleスライドに書く→全体で共有

→このタスクには多くの学生が「いい人」と「悪い人」を比べる」とか「二つの種類が違う人が出てくる」などと書いていたので、全体共有の時に「対比」という言葉を教えました。

「いい人にはいいことが起こる、悪い人には悪いことが起こる」という戒め 、このような話は自分の国にもあるという意見が多数出ました。

③同じようなテーマのお話を知っているか?→グループで共有

→「金の斧と銀の斧」の話が全てのグループで出ていました。
その他、多くの国で「悪い人」がカエルや鳥になってしまう話があると言うのがおもしろかったです。

3コマ目 自分の知っている昔話を発表

 最後は2コマ目で出たお話を自分たちで発表する活動をしました。

 発表は紙芝居方式で、Googleスライドにイラストや写真を貼って、それを見ながら話すという活動にしました。

 絵が得意な学生がJambordにマウスでささっと絵を描いてそのスクショをスライドに貼ったり、手書きで書いたものを写真に撮ってスライドに貼るなど、自分たちで準備するグループもありました。

 こういう活動は準備に時間をしっかり取れるように、課題として、翌週発表したほうがうまくいくのかもしれませんが、私は学期末の空いた時間に行ったので、その日のうちに発表させてしまいました。

 結果、楽しいだけで完成度はイマイチ。学生たちの達成感もイマイチで終わってしまいました。これは反省・・・。

まとめ

 以上、「花咲かじいさん」を使った授業のアイディアでした。同じような活動は「かちかち山」や「浦島太郎」でもできそうです。

 七夕のシーズンなら、「織姫と彦星」の話も、日本の話を理解した後に、それぞれの国の「織姫」について話してもらうと楽しいと思います。

 ただし、学習者の好みには気をつけてください。昔話はどうしても「子どもっぽい」お話です。これを「楽しい」と感じるかどうかは学習者によって違います。私がこの授業をした学生たちはアニメや物語が大好きで、この活動をとても喜んでくれましたが、どの学生にも使えるものではないと思います。

 これを読んで、ここをこうすれば?と言うのがあったら、ぜひ教えてください!

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