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フリーエージェント社会の到来(読書感想)


書籍の情報


フリーエージェント社会の到来
「雇われない生き方」は何を変えるか

ダニエル・ピンク 著
源田有史 解説
池村千秋 訳

ダイヤモンド社 2002年4月18日第1刷

書籍の目次

第一部 フリーエージェント時代の幕開け
第二部 働き方の新たな常識
第三部 組織に縛られない生き方
第四部 フリーエージェントを妨げるもの
第五部 未来の社会はこう変わる

感想

この本は2001年にアメリカで出版されました。
当時のアメリカの状況に、2024年の日本がようやく近づいてきていると感じます。
noteをはじめとして、個人が自由に情報を発信できる環境が整いました。
組織に属していなければできない仕事は徐々に減るはずです。
組織から個人へ、力が移っているのです。

一方で、日本では会社にしがみつこうとしても、定年で強制的に離職することになります。
歳をとっているというだけで管理職となったおじさんは、退職後どうなるでしょうか?
自立できない人、ネットワークを持たない人にとっては厳しい社会になるでしょう。

私は個人が力を持つ社会の方が公平だと思いますが。

印象に残った箇所の引用

10ページ
この本のテーマは、フリーエージェントである。この言葉が曖昧に感じられたとしても、私はこれ以外に、この本で取り上げようとしている人たちを表現する言葉を思いつかない。大組織に縛られることなく、自分の未来を自らの手で切り開くフリーエージェントたちは、アメリカの労働者の新しいモデルになり始めている。自由気ままな独立した労働者が経済の新しいシンボルになりつつある。テクノロジーに接し、自ら進路を定める独立独歩のミニ企業家たちが登場したのだ。

13ページ
今、力の所在は、組織から個人に移り始めている。

特定の目的のために、特定の場所に人材が集結して、使命が終わると解散し、メンバーはそれぞれ次のプロジェクトに向かっていく。
このハリウッドモデルが、要するに、フリーエージェントモデルなのである。大勢の個人を常に戦力として、抱える固定的な大組織は、戦力が常に入れ替わる小規模で柔軟なネットワークにとって代わられようとしている。

80ページ
フリーエージェントたちは、夏の夕立のように「自分らしさ」が空から降ってくるのを、ただ待っているわけではない。情熱を傾けて、仕事に打ち込むことを通じて、自分らしさを表現しようとしている。

82ページ
「自由」と「自分らしさ」は、確かに気持ちが良い。しかし、それだけを追い求めていては、何も成し遂げられないということになりかねない。そこで、フリーエージェントの労働倫理の第三の要素として「責任」が登場する。
ここでいう責任とは、自分の生活の糧と評判をかけて仕事をするということだ。たいていの人は、成功した場合の報酬と失敗した場合の制裁を両方引き受けるという前提で、自分の仕事に責任を持ちたいと思っている。

87ページ
仕事を好きになるための条件は、自主性が認められること、難しい課題に挑戦できること、仕事を通じて何かを学べることだ。

92ページ
くだらない仕事を見事にやり遂げたとしても、それは本当の業績とは言えない。
「やる価値のないことには、立派にやり遂げるだけの価値は無い」ということだ。
ーーーエイブラハム・マズロー

95ページ
フリーエージェントの労働倫理は、まとめるとこんな感じになるーーー。
遠い将来のご褒美のために、一生懸命働くのは、基本的には立派なことである。けれど、仕事そのものもご褒美であっていいはずだ。今やどの仕事も永遠に続くものではないし、大恐慌が訪れる可能性も大きくない。それなら、仕事を楽しんだほうがいい。自分らしくて、質の高い仕事をする。自分の仕事に責任を持つ。何を持って成功と考えるかは自分で決める。そして、仕事が楽しくないと感じることがあれば、今の仕事が間違っていると考えるのだ。

104ページ
ひとつの企業に就職すること、いわば自分の持っているすべての人的資源をひとつの会社に投資する事は、基本的に懸命な選択と考えられていた。しかし、今や大半の人は、すべての人的資源を1つの企業に投資する事は、全財産をIBM株に投資するのと同じように愚かなことだと感じている。資産運用の世界と同じように、仕事の世界でも「分散投資」が生き残りの条件になりつつあるのだ。

112ページ
単一の雇用主のもとで長い間働き続けていると、技能が鈍り、急速に変化する外の世界に触れる機会が少なくなる。そして忠誠心は単なる依存心に成り下がってしまう。

137ページ
会社員にとって「休暇は仕事という刑務所からの仮釈放」のようなものだが、もともと自由を謳歌しているフリーエージェントの場合、休暇を取りたいという欲求は、それほど強くないのだ。
古いやり方が、年に50週働いて2週間休むというものだったのに対して、可能な限り休暇を取り、必要なだけ仕事をするのがフリーエージェント流だ。

160ページ
フリーエージェント連合を成功させるコツは、個人の自由とチームの力を上手に組み合わせることにある。

164ページ
ミニ企業家にとって、企業家ネットワークは、セールス部隊と戦略アドバイザーチームであり、親味な聞き役でもある。こうしたグループを成功させるために必要なのは、ストアーの掲げる「他人の身になる」という原則を貫くことだ。
「本当に有益なのは、誰かにアドバイスをもらった時ではない」と、ストアーは椅子から身を乗り出していった。「なるほどと膝を打ちたくなる発見を得られるのは、他の参加者の問題を話し合っている時だ。今話題になっている問題は、自分の抱えている問題とは全く違うかもしれない。でも、そういう時に突然、ものすごいアイディアが思い浮かぶ。自分の問題を頭から追い出して、他人の問題について考えているから、自然とアイディアが湧いてくる。
いちばん得るものがあるのは、自分の問題について考えている時ではなく、他人の問題を検討している時だ」。そう、フリーエージェントネーションでは「与えたものが得る」のである。

180ページ
「弱い絆の力」は、フリーエージェントの組織図を理解する上で決定的に重要な要素だ。フリーエージェントは、弱い絆を介して、いろいろな場に出入りする人たちと知り合いになることができる。弱い絆で結ばれている知り合いは、いつも親しくしている相手ではないからこそ、自分とは縁遠い考え方や情報、チャンスに触れる機会を与えてくれるのだ。

372ページ
【質問】
フリーエージェントの時代には、管理職はどうなるのでしょう?前時代の遺物になってしまうのでしょうか?

大半の管理職は、全時代の遺物になる。典型的な管理職が何をやっているか考えてみて欲しい。管理職の主な役割は、部下を監視すること、そして上から下へ情報を伝達すること。このいずれの役割も時代遅れになる。会社のオフィス以外の場所で働く人が増え、チームで仕事をするケースが増えれば、上司による部下の監視は無意味になる。
それでも、生き残るごく一部の管理職は、ハリウッドの映画プロデューサーのようにプロジェクトの立ち上げから完了までを監督するプロジェクトマネージャーだ。そのいちばん重要な役割は適材適所の人材は集めること。つまり、これからの管理職は人材を評価する目をしっかり持たなくてはならないということになる。

フリーエージェント社会の到来


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