ブライダルチェック-前編
2020年の冬、私は結婚することが決まった。お互いの家族への挨拶が終わり、どこに住もうか、結婚式はどうするか、身近に迫っているやらねばいけないことばかり考えていた。仕事でも春に異動があることは予想されていたので、年度末に向けて多忙な日々を駆け抜けていこうとするなか、”子どもが欲しい”という、夫婦としての自然な願望に対する姿勢が甘かった気がする。
一緒に住んで夫婦生活を送っていれば1年ほどで子どもができるだろう、と大変お気楽な考えをもっていたので、私自身や夫の身体が子づくりに向いているか、予めチェックしようなんて思ってもいなかった。
ところが夫はしっかりと夫婦の将来を考えていた様である。ある日、「ブライダルチェックはしたの?」と聞かれた。初耳の言葉にきょとんとする私をみて「子どもが欲しいんだったらやらないと。私は今度やってくるよ。」と、夫ばかり歩みをずんずん進めようとしていた。
単語を検索してようやくわかったのだが、"ブライダルチェック"とは妊娠や分娩に影響を与える病気の有無を検査するものである。女性の場合は婦人科で対応していることが多く、問診や血液検査、超音波検査等をして、感染症や子宮筋腫等の有無を知ることができる。1人で暮らしていたら全く支障のなかった症状でも、子づくりに対しては不調であることが明らかになるという、現実を突きつけられる点で怖さをもった検査である。
それにしても大変面倒な事になった。病気でもないのに病院へ行くということほど面倒な事はない。私は定期的に通うのがよいといわれる歯医者ですらめったに行かず、体調が悪い時にもたいていの場合は自宅で治すことにしている。そんな人間が病院に行かねばならないとは。
しかし、夫婦のため、子どものためなら仕方がない。私は職場近くの婦人科でブライダルチェックを受けることにした。その病院ではブライダルチェックの基本コースが用意されており、オプションで卵巣予備能検査や子宮内膜検査、子宮頸がん検査など単体検査を追加できる仕組みになっていた。
夫婦生活も始まっていないなか、一気に全部の検査を受けるのはやみくもな気もするし、かといって検査をせず子づくりに致命的な病気を見逃すのは時間が無駄になる気がした。そもそも自分の身体を知る機会なんて毎年1回受ける健康診断しかなかったのだから、私が持っている情報だけでこの検査項目が必要だろうと決めれるはずもなかった。
そう割り切ってしまうと検査は基本コースだけでよかったのだが、全部必要になるだろうとしても1回くらいは病院に通う回数を減らしておくか、と不純な気持ちで卵巣予備能検査をオプションで受けることに決めた。私は結婚年齢が30代半ばと高齢の部類に入るだろうと自覚していたため、追加するならコレだろうと思っていた項目でもあった。
そしていざ、検査を受けるのであった。
ーーーブライダルチェックの受診や結果はまた次回。