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イサム・ノグチさんが教えてくれたこと。

イサム・ノグチさんの展示にいってきた。光の扱いについて悩んでいたら妻が勧めてくれたからだ。

時間がなくて30分程度の滞在だった。ざざっと作品を見終わり、美術館から駅まで歩いていたところ、ふと気付いた。

「あ、石って、静かなんだ。」という当たり前のことに。

森に行けば、木々と葉が風で揺れる音、鳥や虫の鳴き声が聴こえてくる。海に行けば、波の音が聴こえてくる。しかし、石は無言なのだ。音を持たない。圧倒的な静寂がそこには存在している。

驚いた。こんなに有り前のことに今まで気付かなかったんだなと。人生で、何千個、何万個、いやそれ以上の石に出会ってきたはずなのに。芸術体験とは、やはり世界の見え方を変えさせてくれるものなのだなと実感した。作品という媒介を通し、新しい世界の見え方と出会わせてくれる。

最近、自然の中で、芸術を試みることにもの凄く悩んでいた。自然はそれ自体で調和しているにも関わらず、なぜ人間が、自然の劣化版のような作品を創るのか、むしろそれは、自然の良さを損なっていないか、悩み続けていたのだ。

しかし、1つの答えを今回イサム・ノグチさんに教えてもらった気がする。僕が人生を通じて気付いていなかった世界の側面について、作品を通じて語りかけてくれたのだ。

世界はすでにここにある。しかし、僕たち人間の、世界への認識は非常に狭い。芸術作品は、新しい世界との出会いを提供してくれる。これが研ぎ澄まされた芸術なんだ、と実感した。

そして、最後の作品展のところで、こんな言葉を見つけた。

「石と向き合っていると、石が話し始めるんですよ。その声が聞こえたら、ちょっとだけ手助けしてあげるんです。」

そう、石は無言であり、圧倒的な静寂さを有している。しかし同時に、石は雄弁なのかもしれない。

僕も、このように、新しい世界の体験をしてもらえる芸術作品を創りたいと切に願う。人生をかけてたどり着きたい道。その先にいる大先輩にまた出会わせてもらった、そんな時間だった。

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芸術のげの字も知らなかった素人が、芸術家として生きることを決めてから過ごす日々。詩を書いたり、創作プロセスについての気付きを書いたり、生々…

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