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ミッションの再考:SORAが目指す世界

事業戦略や優先順位を考えるにあたり、また、新しい仲間を惹き付けるにあたり、改めて空のミッションを考えている。

「世界中の価格を最適化し、売り手も買い手もうれしい世界をつくる」というミッションを掲げ、ダイナミックプライシングのSaaSを企業に提供する、というのが空の基本的なビジネスだが、果たしてそれはどのような世界なのか。

ダイナミックプライシングに限らず、データとアルゴリズムを用いた最適化には、善い方向にも悪い方向にも大きく影響力を持つ可能性があるため、自分たちの思想やフィロソフィーを明らかにしておくことが重要だと思う。そしてそれは定期的に再考されるべきものだ。

そもそも、プライシングにはどのような力があるのか。僕が感じているのはこの2つだ。

1. 余剰に目を向け、選択肢を広げる力
2. 強制ではなく、人の行動を変える力

ホテルにしても、最近リリースを出させてもらっている都市交通や駐車場にしても、その需要には波があり、一定の空き時間が存在する。その余剰は売り手にも買い手にも還元されず、社会としての損失となっている。

この余剰に目を向け、価格の差をつけていくことで、空いている時間に購入する人が増えたり、逆に混んでいる時間に売り手が収益を上げられたりすることで、全体のコストを下げ、平均価格も割安にできるかもしれない。これがプライシングの1つ目の力だ。

もう1つは、そうした行動変容を、強制ではなく自由な選択として促せる力だ。「◯◯してはならない」というルールや、「◯◯すべきだ」というモラルにも行動変容の力はあるが、それは人々の意思や感情と必ずしも合致しない。(意思と反するからこそルールで縛って防いでいる、とも言える。)

プライシングが人々に伝えるのは「◯◯したほうがお得ですよ」「◯◯するにはコストがかかりますよ」というメッセージだ。それに基づいてお得なほうを選ぶ人がいてもいいし、高い方を選ぶ人がいてもいい。時間をお金で買う、という価値観もある。そこには自由がある。北風ではなく太陽、という比喩を僕は仕事上よく用いている。

得と徳を合致させる

こうしたプライシングの力が多くの業界やシーンで活用されることで、より合理的・倫理的な選択が、経済的にもお得な選択になる。言い換えると、「得と徳を合致させる」ことができる。わかりやすいところで言えば、電車の混雑時間を避けるとポイントがもらえるオフピーク施策や、環境に負荷のかかるレジ袋の有料化なども、そうした取り組みだと言える。

地球上にある資源や、人生の時間は有限だ。少しでもムリのない、お得でお徳な選択(売り手と買い手のマッチングであり、資源と消費する人のマッチング)が増えていけば、人と地球の寿命を延ばすことにもわずかながら貢献できる。

丁寧でタイムリーなプライシングによって得と徳が合致し、資源や時間が有効活用されて、スマートに回っている世界。これこそが、僕たちがミッションに掲げて目指している“世界”だ。

自由な選択と合理的な社会

始めに書いたように、データやアルゴリズムの力が善い方向に使われるためには、その背景となる思想が重要になる。

僕が好きなSFでもよく扱われるテーマが、アルゴリズムによる最適化 vs 人間の自由意志だ。ストーリーとしてはシンプルで、始めは推奨(レコメンデーション)と呼ばれる便利な機能だが、次第に推奨通りの行動をしているかでユーザーの信用力が測られるようになり、やがて推奨に従わない行動は非難や処罰されるようになっていく。例えば就職先や恋愛相手、毎日の食事メニューなどがその対象となる。

最適化という言葉はポジティブなようで広すぎる意味があり、過度な最適化は個の自由を摘むことに繋がりかねない。社会や地球環境としては最適化(少なくとも効率化)が必要とされる状況で、どのような未来を目指していくか。これはもう主義や信条の話になるだろう。

僕自身が信じているのは、個人は自由で多様な選択をしつつも、社会としてはテクノロジーによって合理化されている未来だ。幼稚な整理だが、表の右上にあたる。

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どれだけアルゴリズムによって幸せになれる最適解が導かれるようになったとしても、何が好きか、何が幸せかという価値観は人によって異なる。周りの人から見て愚かだと思う行動が、ときには世界を変える発見につながることもある。最適化が進みすぎて、偶然の出会い(セレンディピティ)が減ってしまうのは、結局のところ種にとってもベストではない。

こうした自由な選択を大切にしつつ、もったいない余剰やロスは減らし、大勢としてはより合理的な方向に進めていけるはずだ。

だからこそ、そのひとつの方法として、プライシングによる「◯◯したほうがお得ですよ」というメッセージが今は丁度いいのではないかと考えている。

SORAのミッションの再考でした。
目指す未来を一言で表現できるようなキーワード、ほしいなあ。

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