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【 第60回 】「最終回」あとがきに代えて

去る2018年2月24日に「愛される学校づくりフォーラム2018 in 名古屋」が開催されました。
8回目となる今回のフォーラムも、多くの参加者の皆さまにお越しいただき、提案発表や模擬授業、授業検討会など、私たちの日ごろの研究成果を見ていただき、盛況のうちに幕を下ろすことができました。
ご存じのことと思いますが、当フォーラムを主催した「愛される学校づくり研究会」は、この日をもって10年にわたる活動を終えました。

私がこのコラムを書かせていただくようになり、丸5年が過ぎようとしています。おかげさまで、今回が第60回の連載となりました。そして、最終回となります。
最終回のコラムは、これまでを振り返って、今、私が感じていることをお伝えしようと思います。

◆視野の広がりと異なる視座を得る

当コラムの連載が始まったころ、私は中学校のPTA副会長をやっていました。
我が子が中学生で、保護者として直接学校と関わっていたので、興味関心は目の前の子どもと学校のことにだけ向いていました。
そのころは、学校には保護者が気軽に立ち寄れるような場所というイメージはなく、先生に対しても気後れして遠慮してしまう印象を持っていました。
けれども、当時校長として赴任された玉置崇先生(現・岐阜聖徳学園大学教授)がPTAや保護者にさまざまな働きかけをしてくださったおかげで、「保護者でも学校の力になれる」「学校に私たちの力が求められている」と実感できる経験をさせていただきました。
そのときには言葉すら知りませんでしたが、「地域連携」や「協働」ということを経験してきたのですね。このおかげで、学校や先生に対するイメージが変わりました。

ポジティブなイメージに変わったおかげで、私の視野はぐんと広がりました。
それまでの「目の前の子どもと学校」のことしか見ていなかった視点が、「市内の他の学校」「県内の他の学校」「全国の他の学校」を見る広い視野へとつながっていきました。
さらには「先生の視点」にも触れることができ、学校の置かれている状況や、国がこれから目指す教育のことも考えるようになりました。
現在は子どもの卒業に伴いPTAを卒業しましたが、それでもこうして教育への関心を持ち続けていられるのは、これまでの経験で視野が広がったこと、また、保護者としてだけでなく、学校の視座も持てるようになったからだと思っています。

◆地域連携、協働で「愛される学校」へ

おかげさまで、私はPTA活動を通じて、楽しく学校と協働する経験をさせていただきました。
しかし、いろいろな人と話すうちに、そんな学校ばかりでないことがだんだんわかってきました。
学校は、管理職しだいで雰囲気がガラリと変わります。また地域性の影響も大きく受けます。どこでも同じようにはいかないのだ、という現実も知りました。
しかしそれであっても、今後、学校は保護者や地域と協働していかなくてはなりません。コミュニティスクール化の動きはどんどん進むでしょう。

新学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」が重要なキーワードになっています。
これからは、子どもも保護者も「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を知らなくてはなりません。
それをお知らせするのは学校の役割ですが、保護者も当事者として、その自覚を持たねばならないなと思います。
保護者も、これまでのように何でもかんでも学校に押しつけるのではなく、自分たちができること、するべきことについて、考える機会を持てるといいなと思っています。

私は学校に対してポジティブなイメージが持てるようになってから、「保護者と学校は、ともに子どもを育てる仲間」という思いを持っています。
しかし、保護者と学校は、それぞれの立場や思いが邪魔をして、意外とかみ合っていないなと感じることがよくあります。
「仲間」として協働できるように、うまくつながることができるように、潤滑油や接着剤の役割ができるといいなと考えています。

昨今の少子高齢化が進む社会では、「地域をどう作るか」ということが大きな課題です。
子どもたちが将来にわたって地域に暮らし、地域を支えてくれるようにするためにはどういう地域づくりをしていったらよいか、ということを、いろいろな立場の大人が一緒に考えることが必要ではないでしょうか。

立場が違えば、ものの見方や考え方が違ってくることもあるでしょう。
そうした価値観の違いを知り、受け入れることも、多様性が広がっていく社会では大切なことです。
価値観をすり合わせ、なんとか妥協できるところを見つけて、それを目標としてみんなで共有する。そういう経験を積み重ねていくことが必要だろうと思います。
大人たちが、すり合わせ、妥協し、共有した目標に向かって、それぞれの立場でできることをやっていけば、きっと子どもたちにもその思いは届くはずです。

困難な状況にあっても、大人たちが楽しみながら取り組む姿を見せることは、子どもたちの育ちにも良い影響を与えると思うのです。
新学習指導要領でも触れられていますが、子どもたちは、これから「予測困難な社会」を生き抜いていかなければなりません。
そんな子どもたちを育てる仲間として、学校も保護者も地域も、ともに考える場がある環境になるといいなと思っています。
そんな環境が当たり前になれば、きっと皆さんの学校は、「みんなから愛される学校」になるでしょう。
全国に「愛される学校」の輪が広がっていくことを願ってやみません。

◆おわりに

最後になりましたが、これまでご愛読いただき、誠にありがとうございました。
「毎回楽しみにしています」と声をかけてくださる皆さまの励ましの声に背中を押してもらい、無事に最終回までたどり着くことができました。
連載開始当初は1年間のつもりでいましたので、このような長きにわたり執筆させていただくことになるとは夢にも思っていませんでした。機会を与えてくださった「愛される学校づくり研究会」の仲間の皆さまに、心から感謝しています。

春は別れと出会いの季節です。
今回でコラムはお別れとなりますが、また新しい出会いが待っているといいな…とワクワクしながら、筆を置きます。
またどこかでお会いできますように。ありがとうございました。

(2018年3月19日)

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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。

保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。



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