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従業員のお困りごと㉙

藤原さん(仮名)は、事務全般を請け負うBPOの会社に勤務しています。所属する部署には、知的障害、身体障害、精神障害のある従業員が7名いました。藤原さんは、その従業員たちに笑顔がなく、モチベーションの低下が見られる一方、障害の知識が十分にない中、手探りで支援に取り組み疲弊していると感じる従業員がいることが気になっていました。藤原さんは、以前の経験から社内に障害者雇用の専門部門を立ち上げ、障害のある従業員の意欲向上を図ること、また、「個人」ではなく、「組織」として支援を行っていく必要があると考えていました。

ある年、視覚障害のある蘇我さん(仮名)が入社してきました。藤原さんがまず取り組んだことは、産業看護師発案の視覚障害への理解を深めるためのワークショップでした。一緒に働く従業員に向けて視覚障害に関する基本的事項を看護師から説明し、蘇我さん本人からは障害の状況や視覚障害者ならではの悩みごとや困りごとを話してもらいました。蘇我さんは、「入退出のドアはぶつかりそうで怖い」「話しをするときは、名前を名乗ってから話しかけて欲しい」などを具体的に話し、参加者に共有してもらいました。参加者からは「視覚障害のある人への接し方や配慮することがよく分かった」との声が多く出ました。ワークショップ開催後は、蘇我さんと従業員の距離が一気に近くなり、ランチタイムでは皆で談笑する姿を見かけることも増え、自然と親交が深まっていきました。

次に藤原さんが取り組んだのは、職場環境の整備です。オフィスのドアに「ドアの向こうに人がいます」と貼り紙することで入退室時の注意を喚起をすることや、従業員が行き交う通路の交差部にミラーを設置することで死角をなくし出会い頭の事故を防止する対策などを講じました。これらの措置は、蘇我さんへの配慮から実施したことでしたが、結果的には、従業員同士がお互いを気配りするきっかけとなり、社内全体にとっての安全対策につながりました。

ドア

ミラー

その後、蘇我さんは、障害者事務センター(SSC)という新部署の立ち上げメンバーに加わりました。SSCメンバーとは定例会議やランチ会を重ねることで信頼関係を築いていき、障害のある従業員の指導方法や業務の切り出しなど積極的に取り組みました。また、藤原さんは、定期的に面談している内容を「面談記録シート」に残し蘇我さんと共有することにしました。この内容を音声読み上げソフトを活用し、蘇我さんの備忘録としました。

蘇我さんが入社して数年経ち、全国障害者技能競技大会(アビリンピック)に出場し入賞するなど、スキル向上に意欲的に取り組んでいます。藤原さんは、蘇我さんの活躍や日頃の仕事ぶりを社内報で紹介しました。すると、「社内報を見たよ」「入賞おめでとう」と声を掛けられる機会が増え、蘇我さんは仕事に一層張り合いを感じた様子で働くようになりました。

あられ

YORISOU社会保険労務士法人の長谷川です。わたしたちは、企業が抱える従業員のお困りごとに対して、積極的にサポートしていきます。また、育児・介護・病気と仕事の両立支援についても、企業を支えていけるよう職員全員でがんばっています!
*本文の内容は、行政機関で紹介している障害者雇用の事例集などを参考に  作成しています。


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