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愛犬との別れを歌った最上のラブソング『LILLY』。HumpBackのメジャー1stアルバム「人間なのさ」私的レビュー

大阪発、3ピースガールズバンド、HumpBackがメジャー1stアルバム「人間なのさ」をリリースした。

これまでも、常に泥臭く等身大の日常を音楽で鳴らしてきたHumpBackのメジャー1stアルバムのタイトルが「人間なのさ」というのは彼女たちらしいとも思ったが、実際にアルバムを手に取り1曲目の『LILLY』を耳にして、そこに確かな変化とHumpBackというバンドとしての覚悟を感じた。

《明日が怖くなる程に 君が 君が 美しかった/
夜を越え 朝迎え 君に会えたらそれでいいや》

Vo.林が”ラブソング”と謳うこの曲は、病気で余命宣告を受けた愛犬リリのことを歌った曲である。リリースを迎える少し前にリリが天国に行ったことが彼女のSNSで明かされている。
以前にも彼女は『ぎんのうた』という曲で愛犬との別れを歌っているが、悲しみに暮れるような曲調のこの曲に対し、この『LILLY』からは全く違う印象を受けた。

かき鳴らされるギターの音と疾走感のあるドラムのビートで始まるこの曲から筆者が感じたのは、力強い明日へのエネルギーである。
底の知れない悲しい別れを、彼女は“悲しみ”というマイナスの感情ではなく、“愛”というプラスの感情に変えて、彼女なりの最上のラブソングに仕上げた。

この曲を悲しいバラードでなく前向きなラブソングに仕上げ、メジャーという新たなステップへと向かう第一歩とも言えるこのアルバムの一曲目で歌ったことに、辛いことも楽しいこともバンドとして全て曲にして表現していくんだという、彼女たちの強い覚悟を感じた。

《僕らの夢や 足は 止まらないのだ/
僕らの幸せは 僕らだけのものだ》

アルバムを締めくくる『僕らは今日も車の中』で彼女たちはこう歌っている。

きっと彼女たちはこれからも泥臭く彼女たちの音楽を鳴らしてくれるように思う。嘘のない彼女たちのどこまでも等身大の音楽は、だからこそストレートに胸に届き我々の心を揺さぶるのだろう。


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