「とおいらいめい」8/27(土)初日舞台挨拶回に行って来ました。
人類滅亡を家族単位で表すと?
ちょっと前に「ドント・ルック・アップ」を観たばかりで、同じ人類絶滅系でもスケール感は全然違い、今作は地球でも世界でも、そして日本中でもなく、岡山県の海辺に住む家族と、その周辺の人達にスポットを当てている。
絶滅騒動はもうすでに5年前には起こっていて、大混乱期は過ぎた時期思われる。新聞もなく、TVのニュース映像も流れていません。人類全体に平等に発生した余命宣告。
人が死を受け入れるには段階があるそうで、エリザベス・キューブラー=
ロス博士によると、その死の受容プロセスは五段階あり、
第一段階「否認」
自分が死ぬということは嘘ではないかと疑う段階
第二段階「怒り」
なぜ、自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階
第三段階「取引」
何とか死なずにすむように取引をしようと試みる段階、何かにすがろうという心理状態
第四段階「抑うつ」
なにもできなくなる段階
第五段階「受容」
最終的に自分が死に行くことを受け入れる段階
おそらく世界全体で第五段階「受容」を迎えているのだろうなと。だからこぞ、皆死ぬと分かっている五年前の段階で子を持った家族は「異常」扱いもされるだろし、でも一縷の望みをその子にかけたいという気持ちもわいてしまったのだろうなとも思える。一方で、十年持つであろうシェルターに何としてでも入りたい人による抵抗もリアル。そのためには簡単に殺し・殺されてしまう。
物語の核は、長女・絢音(あやね)と次女・花音(かのん)、そして腹違いの末っ子・音(おと)を中心に展開していく。セリフもそう多くなく、じっくり、ゆっくり展開していく。二人姉妹として育ってきた絢音と花音。その絆になかなか入れない音。決して仲が悪いという訳ではないのですが、どこか打ち解けないギクシャクとした雰囲気。
長女の特有の絢音は、心配のあまり考えすぎたり抱えすぎて勝手にキャパオーバーになっているのにヘルプを出さない感じや、次女の花音は長年一緒にいてそれを知っているからこそ、言って欲しいのに!という感じは思い当たる感じでリアル。
あと、末っ子の音が、中トトロについていくメイのように謎の男性に着いて行った先で、お酒を飲み明かそうとするグループの仲間にすんなりとけこんじゃう展開。末っ子の愛されキャラの感じが出ていて可愛い。雑貨屋のおじさんとも茶飲み友達みたいになっているし。家に居場所がない分、他で作ってしまうのだろうかと想像。
だからこそ、後半、雑貨屋のおじさんは息子の所で最期を迎えることを決めるし、飲み会グループも音を置いていってしまった。自分の居場所だと思っていた所がなくなってしまいます。深い孤独。その場面はもうつらすぎて、私も音と泣きながら見ました。
家族ごっこから家族へ
そして後半。これまではどこか本音を出せずにいた三姉妹の感情が爆発します。やっとです。あの場面で一気に本当の家族になったと感じました。そして静かなラストシーン。「音」が織りなす思い出の数々。徐々に近づいていく三人。ずっと続いて欲しいなと思いながら見ました。
池袋シネマ・ロサにて上映中 8/27(土)~9/23(金)
末っ子の音:髙石あかり
長女の絢音:吹越ともみ
次女の花音:田中美晴
花音の同級生・良平:ミネオショウ
良平の妻:大須みづほ
絢音の子ども時代:森徠夢
花音の子ども時代:武井美優
絢音の同僚:古矢航之介
謎の男性(元パイロット):三原哲郎
謎の男性の友人:川辺純子
石橋征太郎、大田恵里圭、園山敬介、タカ海馬
荒井啓仁、舞木ひと美
雑貨屋店主:藤田健彦
絢音と花音の母:しゅはまはるみ
企画・製作・配給:ルネシネマ
監督・脚本:大橋隆行
原作:とおいらいめい(2004 年上演舞台)
撮影監督:長谷川朋史 音楽:上久保汐李 助監督:原啓仙/渡辺喜子
録音:長沼優可/小牧将人/寒川聖美 ヘアメイク:大貫茉央/早川葵
制作:藤田健彦/大原昌典 フードコーディネーター:荒井啓仁
アクションコーディネーター:タカ海馬 ガンエフェクト:小暮法大
協力:岡山県フィルムコミッション協議会/せとうちフィルムコミッション/瀬戸内市商工観光課/備前市役所産業観光課/厚木土木事務所/相模原水系広域ダム管理事務所
2022 年/日本/シネマスコープ/ステレオ/150 分 ©ルネシネマ